第29話:クルヴァース
「とんでもない奴だな……。」
イリーナが眉を寄せながら、ポツリと呟いた。
実際ママゴリに聞いてみた所、想像の十倍はえげつない奴だった。
あらゆる魔法を喰らいつくし、近づいてくる者はその木の根を伸ばして払い除けるのだと言う。
魔法も効かねぇ、近づいても払い除けられる。
正に近づいても遠くても駄目って奴だ。中々反則級の化け物だぜ……。
「どうだ? クラジレン。良い手は浮かんだか?」
イリーナは少しニヤリと口角を上げていた。
馬鹿にされてる様な気もするが、実際良い手は浮かんでねぇ……。
浮かぶ手はどれもこれも隊長には効きそうだが、あんな化け物相手に効く気がしねぇ物ばかりだ……。
どうしたもんかと、腕を組みながら思案に暮れていた。その時。
「私は良い手が浮かんでいるぞ。」
「なんだって!?」
俺が驚き、イリーナの方へと顔を向けると、彼女は自分の腰に掛けてある剣を手で叩いた。
「魔法で肉体を強化し、剣で切り捨てれば良い。幾ら魔獣・クルヴァースと言えども、離れた場所の魔法は喰らえまい。」
くそ……何か悔しさはあるがめちゃくちゃかっこいい事を言ってやがる……。
それに確かにそうだ。今の状況で化け物と渡り合えるのは、肉体強化魔法を化したイリーナぐらいしか居ねぇかも……。
『……頼もしい子だけれど、信用して良いの?』
ママゴリが俺の方を向きながら首を傾げていた。俺はとりあえず、それに頷いておいた。
『なら、そうね。私達は貴女を支援する形で戦って行きましょう。そして、貴女は魔獣討伐の最前線で戦ってもらうわ、それでもいい?』
半ば脅しているかの様なママゴリの睨みに、イリーナは笑みを返した。
「構わない。」
『そう……分かったわ。そこまでの自信があるなら、もう何も言わないわ。』
なるほど、瞬く間に作戦が決まっちまったらしい。
しかし、ゴリラ達がイリーナの支援をして、イリーナがあの木の根野郎と戦うってなると……俺は何をしとけば良いんだろうな……。
すると、俺がそう考えている事を見越しているかの様にイリーナの顔は、こちらを向いていた。
「お前は準備をしておけば良い。隊長が来た時の為のな……。」
なるほど……確かにあいつはまだ諦めては居ないはずだ。今すぐボートに乗って来るかも知れねぇし、その準備はしっかりとしておく必要があるな……。
「よし、分かったぜ! 隊長に関しては任せとけ! そっちは魔獣を頼む!」
「あぁ、分かっている。」
イリーナが俺の言葉にコクリと頷いた時、魔獣・クルヴァースがやって来た。




