第23話:真犯人
「お前……! お前は犯人ではないと言っていたではないか! なぜ今更……こんな事が!」
その表情が信じたくないと言っているようにも見え、少しだけ嬉しくなった。
「この地図に秘密があったんだよ……。俺も今まで、知らなかった。」
「この地図に……?」
イリーナは細めた目で地図を見ている。
何故ここでそんな話が出るのかが分からないといった様子だった。
「この地図に魔法を放つと地図に書かれてある地点に魔法が落ちるんだ。」
「そんな地図が存在するというのか……。いや、寧ろそれは地図とは呼べる代物ではない……。」
そう、まるで兵器の様な代物だ。それでも、その地点に落ちるというだけなら、まだ問題は無かった。
「そして、問題はその放たれた魔法が巨大化するという事にあるんだ……。」
「なに……?」
それを聞いて更に険しい表情となった……。それがどれだけやばい事なのか、察しが着いてきたのだろう。
「それも一滴の水が山になるぐらい巨大化するんだぜ……。」
恐らくこの地図は星の分身体とも言えるのだろう。だからこそ魔法が落ちる、だからこそ魔法がでかくなる。
地図を通して魔法が星に落ちる時、地図相応のサイズであった魔法が星相応のサイズに変換される。
ややこしい事だが、星が地図の60倍程でかいのであれば、魔法も恐らく60倍でかくなる。
この地図はそういう風に出来ていると考えて間違いはない……。
「……信じられん……。お前は、その事を元から知っていたというのか?」
「いや、知らなかったよ……。もし知ってたら……あんな災害は起こさなかった……!」
これは紛れもない事実だ。だからこそ転生特典について詳細を教えずにこの世界に送りつけてきたあの球体に腹が立ってくる!
おまけにそんな事にも気付かずに災害を起こしてしまった自分にも腹が立つ……。
「そうか……正直言うと、そんな物があるとなってはお前を犯人として捕らえる事も出来んな……。そんな存在が世に認知されたらどうなるか……。」
彼女も危険性について認知してくれたみたいだ。それならば、ようやくこの地図をどうやって処理するかという話に持って行ける。
「……違うッ! まずいぞクラジレンッ! 今すぐに逃げなければ駄目だ!」
「な、なんだって!? いったいどうしたんだよ?」
「お前には私以外に監視している者が居る。そいつが、もし隊長にこの事を知らせたらどうなるか……。あの人のことだ。すぐにお前を捕えに来るぞッ!」
「ま……待てよ! 話が全く分からねぇぜ……。捕らえに来るってなんだ!? 監視ってのはいったいどういう事なんだよ?」
イリーナは歯を食いしばり、首を横に振った。
「今、それを話している時間はない。とにかく、やばい相手が来ると思えばいい。私達が今考えるべきなのは、その男からどう逃げるか、という事だけだ。」
「分かったぜ……。後で、聞かせてもらえるんだよな?」
俺の言葉に、イリーナはコクリと頷いた。
「よし、逃げよう!」
そして、俺達が逃げようとしたその時、こちらに向かってくる、1人の男が居た。
「ふふふっ、聞かせてもらったよイリーナくぅん! 素晴らしい地図じゃないか!」
悪魔の様な笑みを顔に貼り付けた男が、どんどんこちらに距離を詰めてきた。
「た……隊長!?」
「隊長!? あいつが!?」
あまりにも顔が人間的でない……。それ程に醜く歪んだ悪意に満ちた顔をしていた。
「そんな物があるというなら、是非貰い受けたいねぇ。扱いを間違えると危険な代物であることは間違いないが……きちんと扱えれば世界の覇者になれる素晴らしい代物じゃないか!」
口から大量の唾液を垂らしながら、満面な笑みを浮かべたその男は、ゆっくりと首をこちらに向け、ただ一言呟いた。
「君にはそんな代物持つ資格はないよ。私にくれたまえ。」
「っ……!」
嫌だと言えば殺す、鞘を手に当てた男からはそんな気迫を感じた。




