第22話:真実
「クラジレン……。少し話があるのだが……ん? 何をしている?」
「いや、ちょっと紙を折ってたんだよ。んで、どうした?」
「あぁ……実はな、目撃者の所に話を聞きに行けるそうなんだ。」
「目撃者!? 災害の目撃者が居たってのか!?」
「あぁ、元々は、何かに怯えていて話も聞けないような状態だったのだが……。最近話すことが出来る様になってな、私達も聞きに行こうと思ったのだ。」
「おう! 分かったぜ!」
目撃者か……! ラッキーだ。災害を見た奴が居るってんなら、幾ばくか話が分かってくるかも知れねぇ。
「よし、早速行こうぜ!」
「あぁ、分かった。分かったからそう急かすな。」
俺は早速、イリーナと共にその人の元へと向かった。
ーーー
目撃者だと言っている人は、ガチガチと歯を鳴らしながら、顔を真っ青に染めていた。
被った布団で身を護るかのように、ガッチリと締めている。
「おい、大丈夫か……?」
予想以上に顔色がやべぇ……。それに震えも酷くて、話を聞けるって感じにはとても思えねぇ……。
「心配するな、私達は君の味方だ。君の街を潰した男は、確実に捕らえてみせよう。だから、話を聞かせてくれないか?」
イリーナが精一杯の優しい声で、彼に言い聞かせていた。そいつは、コクコクと頷きながら、口を開いた。
「あの時、僕はキャンプをしようと思って……偶然高い山の上に居たんだ……。」
目から涙が滲み出ていて、その顔には深い絶望の色が刻まれていた。
「そして、そこから見える星と、街の景色を眺めていたら……。上空から急に津波が降ってきて……!」
「津波が……降ってきた……?」
「嘘じゃないんだ……。本当に凄い勢いで降ってきた津波は全ての家を叩き潰して、街を全部流しちゃった……。」
とんでもない状況だ……。そりゃ確かに津波が降ってきたと言いたくなるのも分かる……。
ん? 津波……?
「なぁ……津波って事は……上空から水が降ってきたってのか?」
そいつは、コクリと頷いた。
上空から津波のような勢いで水が降ってきた。
そして、その現象が起こったのは……俺が来たばかりの頃だ。正確には、魔法で失敗した……あの瞬間じゃないのか……。
「いや……そんなはずは……ねぇ……。」
今まで不思議だった事が……全て辻褄が合う。信じられない様な話が俺の中で出来上がっちまった……。しかし、しかしこんな事が……あるはずがねぇ……。
「おい……どうしたクラジレン?」
「……ッ!」
俺は彼女の手を振り解き、外へと走った。
「待て! どうしたんだ!?」
待つ訳にはいかなかった……。どうしても、どうしても試したい事があった。
俺が来た日に起こった出来事……。水の魔法による災害で、俺の魔力の跡が残っている。
この事に聞いて、俺の頭の中に浮かんだのは、あの濡れていない地図だった。
「はぁ……はぁ……ッ! 俺はいったい何考えてやがるッ! 絶対、そんなはずはねぇってのにッ!」
しかし、俺は既に水辺に来ていた。ここまで来たら……もうやるしかねぇ……。
俺は、地図の茶色い部分。今俺が居る所の、すぐ近くに、一滴だけ水を落とした。
その水滴は、地図に入り込む様になりながら、消滅した。
「なんてこった……。」
そして、俺の目の前の海に、丸く、東京ドームが一つ入りそうな程に巨大な水が、落ちていった。
「……そういう事かよ……。」
とんでもねぇ地図だ……。俺の放った一滴の魔法が、これだけでかくなっちまっている。
もし……これが完全な水魔法なら、もしこれが、暴発したあの魔法だったなら……。どんな事になるか……。その答えはもう出ている。
「クラジレン……。これは、いったい……。」
後ろから追いかけていたイリーナが、呆然とした目で、こちらを見ていた。
「……あぁ……そうだ、どうやらこの事件。俺が犯人のようだぜ……。」




