第21話:疑問
「……調べれば調べる程、あの男がいったい何なのか分からなくなってくる……。いや、というかただの馬鹿に見えてくる。」
「そ、そうですか……。」
隊長殿は頭をガリガリと掻きながら、歯を食いしばっている。
「珍しく素材を買いあさり始めたと思えば、やったのはただのゼリーとかいう変な物を作っただけ! 更には街に居る商人に唆され、勝負を請け負い、そして負ける……。傍から見れば奴はただの馬鹿じゃないか!」
隊長は机をガンッ、と握り拳で叩きながら語気を強めている。
「は……はぁ……。」
しかし、正直私はそれで間違いないのではと思えてきた為、少々気の抜けた返事になってしまった。
というのも、あの男が大災害を起こす様にはどうしても見えない。こういうのは理屈で考えた方が良いというのは分かっていても、どうしてもそう思ってしまう。
「しかし、やけに詳しく書かれている調合書は持っているし、特殊な魔道具である地図も持っている。更には使用者の少ない調合魔法すら会得していると来た。状況は只者では無いのにやってる事があまりにも馬鹿すぎる!」
ギリィと親指の爪を歯で噛みながら、何かを考えている様子だった……。
正直もうあの男に頓着する必要は無いのではないか……。私がそう思い始めた時、隊長殿が口を開いた。
「もしかすると、監視には既に気づいていて、全て計算尽くの行動なのかも知れないな。」
「な、なるほど……。」
口では頷いていたが、流石にそれはないのでは? と思わざるを得なかった。
こう言うのもなんだが、あの男がそんなに策士であって、察しも良い様な男には思えない。
そして、どうやらそれは隊長も同意見らしい。
頭を俯かせて眉を抑えている。
「と言っても、ゼリー作りで無意味に魔力を減らし続ける必要はない……。信じ込ませるにしたって限度があるだろう……。」
そう言って、隊長はハァ……と溜め息を吐いた。
「……彼を、目撃者の元まで連れて行ってくれ。それで変化を見てみよう。何も無ければ、こちらの監視は無くす事にしよう。」
「分かりました……。早速、連れて行ってみましょう」
ボロを出させる為、という名目で、彼には最低限の情報しか伝えていない。
目撃者からの話を聞けば、奴の反応で何か分かるかもしれない。
もっともそれは、あの男が犯人である場合の話だが……。




