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第20話:和解

 俺はとりあえず素材を買い終えたので、調合を始める事にした。


 今から俺は前世にあった究極の徹夜用料理、ゼリーを調合する。あれならばその場しのぎであっても栄養は取れる。


「じゃぁ、早速作っていくとするか!」


 とりあえず栄養のある物を詰め込んでいき、それを【調合魔法】で一旦ミキサーの様にシェイクさせ、液状化する。


「後は、こいつを組み合わせるだけだな。」


 あとは、ゼラチンの様に液体を固体化する成分が入ってる草をその中に入れた。

 そして早速【調合魔法】で、ゼリーのプルンとした物をイメージし、魔法を放った。


 そうして出来た物は、プルプルと、皿に出した直後のプッチンプリンの様に震える、紫色の何かだった。


「……これ……食えんのか?」


 明らか見た目が毒物みたいにしか見えねぇ。

 いくら栄養があるとは言っても、食った瞬間に死ぬとかだったらシャレにならねぇぞ……。


「いや、こういうのは味見が大事だよな……よしっ!」


 俺は早速、ほんの少しだけ取り出し、口の中へと入れた。


「ゲフォアァッ!?」


 俺の口は一切の抵抗をする事が出来ず、舌が痺れる様な感覚と共にその劇物を吹き出した。


 一瞬毒が入ってるのかと思った。大量に食わせれば人を殺せるぐらいの殺人的な味がする。

 このゼリーに使った色々な食材のハーモニーが悪魔の大合唱を生み出していて、端的に言うとめちゃくちゃまずい。


「どうすんだよこれ……。」


 こんなもん出したら流石に怒られるどころじゃすまねぇ。何よりも栄養があるからと言って日常的に食べ始めたら、罪悪感どころの話じゃなくなる……。

 ってかさっきもこんな事あったな……。今日だけで俺はどんだけ変な物食うんだよ。


「いや……待てよ?」


 それで思い出した。

 この殺人ゼリーも大概だがさっきの果物の方がやばかった様な気がする。それに『悪魔の大合唱』と『酸味の神様』では神様の方が強いに決まっている。


 どっちも俺が考えた名前ではあるが、強ち間違いがある訳でもないだろう。少なくとも、試してみるのはいいかも知れない。


「よし! 【調合】!」


 果物と殺人ゼリーを調合して混ぜ合わせ、遂に赤紫の色となったゼリーが誕生した。


「……色は……さっきより良くなったよな……。」


 問題は味だ……。

 俺は早速、それを一口食べてみた。


「……!」


ーーー


「……何だこれは?」


 紙で作ったコップに入っているゼリーを見て、イリーナが不可解そうな目でこちらを見てきた。


「簡単に言えば栄養食だな……。それならすぐに食えるし、栄養も補えるから丁度いいと思ってな!」


「なるほど……変な物は入っていないのか?」


「おうよ!」


 とは言ったが……入ってる奴変なものだらけだった気もしてきた。

 しかし、このゼリー自体は変な物にはなっていない。大丈夫なはずだ。


「……そうか。」


 イリーナは少しだけ口に入れた。


「何だこれは……?」


 イリーナが物凄く不可解そうな目で見てくる。目を細めて俺とゼリーを交互に見ている。


 実際に『酸味の神様』は勝ってくれたのだが、それでも味を消し去った訳でもなく、少し酸っぱくて少し変な味がする。

 そんな感じの不味くはないが不思議な味わいがする物になってしまった。


「いやぁ……それでも頑張った方なんだけどな……美味くはねぇと思うが、栄養はあると思うぜ。」


 何となくバツの悪さを感じ、頭をポリポリと掻きながらそう返事をした。

 彼女はそれを聞いて、しばらくゼリーを眺めていた。


「そうか……。」


 途端に、彼女はゼリーを飲み干し、頭を俯かせながら、また書類を眺め始めた。

 これで少しは、元気になってくれると良いんだけどな……。


 そう思いながら、俺が紙コップを回収した時、突然イリーナが口を開いた。


「その、なんだ。変な味はしたが……。悪くはなかったぞ……。」


「ほんとか!?」


「……あぁ、栄養があるというのも、間違いはないらしい……。」


 イリーナは呟くように言いながら、耳を赤くしていた。


「へっへっへ、だろ?」


 髪で隠れたその顔がどんな表情になっているのか、想像するだけで少し楽しくなってきた。

 それに単純に褒められた事も嬉しく、俺はスキップ気分でその場を去ろうとした。


「少し待ってくれ……。」


「え……?」


 そう言われて、振り向いた。

 その時の彼女の表情は、少し赤くなりながら、目を横に泳がせていた。


「その、この前は悪かったな……。良ければ、これをまた作ってくれないか?」


「……おう!」


 俺は大きく頷き、その提案に了承した。

 彼女がホッと息を吐き、また書類に目を通し始めた。

 その後、俺は小さくガッツポーズを取りながら、ちょっと気恥ずかしさを感じながら、その場を去った。


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