第16話:素材
「しかし……この調合書って便利だなぁ……。」
俺は調合書を確認しながら、深々とその事を感じていた。
素材が書かれてあるのは勿論のこと、軽いし、全力で引っ張っても破れないくらいに丈夫でもある。
軽くて丈夫なのは魔法で出来た紙の特徴の様だが、それにしたって凄い。
「ってかもしかしたら、紙で魔法の絨毯的なの作れるんじゃねぇか!?」
この丈夫さと軽さがあればそれぐらいの事は出来そうだ。と思ったが、調合書にはそれっぽい事が出来そうな素材は書かれていない。
「……まぁ、それは後で良いか。」
中々にロマンがある魔法の絨毯、それの上に乗ってお姫様とかを迎えに行きたい願望が無いとは言えない。
しかしまぁ、犯人の対策に使えそうな物ではないよな……。
「とにかく、相手を一瞬で倒せるアイテムとか作ってみたいな。」
と言っても、そんな物を作れる程の素材はそう簡単には手に入らないみたいだ……。
今はまだもう少しお手軽な物を作るのが良いかもしれねぇな。
「……一先ずポーションだな……。傷を回復させれるし、簡単に作れもする。」
ポーションと、あともう1、2種類ぐらい作りたいんだけどなぁ……。
「何があるかな……。」
パッと見た所、衝撃を与えると爆発する植物とか、なんか伸び縮みするらしい、ゴムみてぇな特徴があるモンスターの皮。
後はただただまずい木の実とかか……。
他の素材は取る際に相当危なかったり、少し遠い場所にあったりするみたいだ。
「うーん……意外に身近に取れる素材って、少ないもんだな。」
まぁ、俺自身に戦闘能力が殆ど無いってのも問題ではあるけどな……。
ちょっとは飯を食ったけど、それでも相当魔力が少ない。危険な場所まで素材を取りに行って、途中で魔力が無くなった、なんて事になったら笑い物にもならねぇ。
「とにかく、この中ですぐに使えそうなのは、爆発する植物だな……。」
調合書の説明を見る限り、葉っぱの部分が爆発する仕組みになっており、茎から取れば安全に確保出来る様だ。
そして、取った後に何か柔らかい素材で包んでおけば大丈夫らしい。
「しかし、爆発する植物か……。そんな物あるなんて、動物とか大丈夫なのかな……?」
俺はそんな事を呟きながら、遂にその植物の群生地に辿り着いた。
大根みたいに太い緑の茎から、風船の様に膨らんだ茶色い葉っぱが伸びている。そして、そんな物が100以上は生えている。
……正直、予想以上に今にも爆発しそうな見た目をしてやがる。
そもそも、こんな物1つ爆発したら他も全部爆発するだろ……。殺意マシマシにも程があるんじゃねぇの?
「やべぇ……何か変な汗出てきた……。まじで大丈夫だよなこれ……?」
少し震えそうになっている手を抑えながら、俺は茎に氷のナイフを近付けた。
その硬そうな見た目に反して、予想以上に茎はスパッと切れた。俺は急いでその植物を紙で囲い、手に乗せた。
「ふぅ……意外に取るのは簡単なもんだな。ちょっと心労は嵩みそうだけど、集中してやればミスはしねぇかも知れねぇな。」
そう考え、10個ぐらいを目標にしてその植物を刈り続けた。
「いや、意外と楽なもんだな! どんどん刈ってやるぜッ!」
そして、その時、間違えて茎ではなく、葉っぱの方にナイフを当てちまった。
「や……やべぇッ!」
少し間を置いて、その場にパァンと、破裂音が響いた。
それと同時に、手を思いっきり叩かれたような痛みと、熱々のやかんを触っちまった様な熱さが奔った。
……正直、予想以上にしょぼかった。
「あぁ……いってぇなぁ……。」
うん……爆発ではあるけど、これだけしょぼいとは思わなかった。
こんな物、精々クラッカーぐらいにしか使えないんじゃねぇの……?
「いや、もしかしたら火薬と一緒に使えば、それなりに良い発火剤になるんじゃねぇか……?」
こいつには、衝撃を与えてから爆発するまでのタイムラグがある。それなら、衝撃を与えてから、相手に投げつける事ぐらいは出来るはずだ……。
「よし、そうと決まれば火薬を探すしかねぇな。何か良さそうな物がありゃいいんだけどな……。」
俺は早速、調合書の中を漁った。




