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第14話:現場

「……ここには街があった。」


 現場に着き、そう呟くイリーナを一瞬、信じる事が出来なかった。


 現場というと、俺はもう少し、崩れた家とかが並んでいるもんだと思ってたんだ。

 しかし、イリーナに連れられて来た場所はただの更地だった。


「ここが、現場だってのか?」


 俺の問いにイリーナは頷いた。

 嘘みてぇな話だぜ……。何がどうなったらこんな事になるんだよ。

 元々ここには何も無かったとしか思えねぇ。


「……一晩だ。一晩の僅かな時間で、この街の全てが無くなったらしい。」


「冗談きついぜ……。いったいここで、何が起こったんだよ……。」


 街の中を戦車が一日中走り回ったって、こんな事にはならねぇと断言出来る……。

 それ程に、この場所には何も無かった。


「唯一残った手掛かりは……。この現場に残された、魔力痕だけだ。」


 彼女は懐から緑に光る石を取り出した。

 その光が照らす地面に、何やら白い砂の様な物が映された。


「何だこりゃ……。」


「魔力の痕跡さ。一般には知られてないが、大地の力と言うのは基本的に白くてな。魔力痕もこういう風に白くなっている。」


「なるほどな……。」


 魔力の痕跡か……。今までゴリラ達には聞いた事があるけど、実際に目にするのは初めてだ……。


「そして、これは青い石を照らす事で、模様が浮かび上がる。その模様が人によって変わるんだ。」


 そう言って、青い石で照らしてみると、確かに不思議な模様が浮かび上がった。円だったり、渦のようになっていた。

 ……話を聞いた時から思ってたけど、やっぱり、魔力痕って指紋みたいだな。性質どころか、見た目すら似てやがる。


「しかし、魔力痕はこうやって映して見るものなんだよな……。触っただけじゃ分からないんじゃねぇの?」


 何か、イリーナは魔力痕を触って確認してみたが、話を聞いてみると、そういう事が出来そうには思えねぇ……。


「あぁ、魔力痕が残ってる魔法は、少しザラザラしているからな。」


「そうなのか……。」


 よくよく考えれば、俺はしっかりと自分の魔法を触った事がねぇからな……。 

 そういう事については知らなかったぜ……。


「しかしなぁ……本当に魔法でこんな事になるもんなのか?」


「……こんな事が出来る魔法は聞いた事がないが、隊長は魔法だと断言している。犯人に何かそういう事が出来る手段があると考えているそうだ。」


「なるほどな……。」


 何を根拠に……とも思うけど、この世界は発明品とかありそうな感じではないし、そりゃこんな事出来るのは魔法ぐらいか……。


「……と言っても、ここに来ても犯人がどんな物を使ったのか、というのは欠片もわからないな。クラジレン、お前は何か手掛かりを見つけたか?」


「いや、正直俺も何も見つからねぇや。そもそも、ここまで酷いことになってんなら、出来る事は、土を掘り返すぐらいしかないんじゃねぇの?」


「……少し前にやった事があるらしいが、手掛かりは何も見つからなかったと聞いている。」


 やった事あんのか……。

 うーん、現場に来ても、思ったより手掛かりは見つからねぇもんだな。


「しかしまぁ、こんな馬鹿げた魔法を使っておいて、殆ど手がかりを残さないなんて、化け物みてぇな奴だよな……。こいつに対策出来る手立てとかあるのか?」


 災害クラスの魔法を撃つ手段を持っていて、更に未だ誰にも尻尾を掴ませていない。

 兵隊にも相当な武器が無いと対抗出来なさそうなんだけどな……。


「あぁ……そういう事なら大丈夫だ。一応、こちらに対策はある。」


「へぇ……どういう物なんだ?」


「……悪いな、軍事機密という奴だ。」


 あ、そりゃそうか……。

 しかしまぁ、対策があるってんなら安心だな。


「ん? どうしたんだ?」


 おっと、知らぬ間にホッと息を吐いちまってたらしい。


「いや、ちょっと安心しただけだぜ。とんでもない相手の様だけど、軍隊に準備があるってんなら良かったよ。」


「あぁ……大船に乗ったつもりでいろ。」


 ニヤリと笑みを浮かべて、そう口にしたイリーナは、本当に頼もしかった。

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