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第12話:疑惑

 私は隊長に今捕らえている男について話をした。一応、男が捜査に協力したいと言っている事を伝えると、何とも言えない表情に変わった。


 すぐに否定されるかと思いきや、隊長は何故か腕を組んで考え込んでしまっている。


「……ねぇ、イリーナ君、あの男の年齢は?」


 隊長は突然そんな事を聞き出してきた。

 何かの冗談かとも思ったが、表情は真剣そのものだ。何か意図があるのかも知れない。


「すみません、聞くのを忘れていました……。しかし、外見年齢であれば、20歳ぐらいであるかと思います。」


 自分はそんなあやふやな答えを出す事に一抹の不安を感じていた。しかし、隊長はその答えに満足した様だ。

 小さく頷きながら、喋り始めた。


「……いやねぇ、彼は圧倒的に有り得ない部分があるんだよ。君も知っている通り、魔法なんて使っている内にどんどん上達していく物だ。どんなに下手な人でも10年使い続ければ形にはなる。」


「そう……ですね。」


「それに対して彼はどうだい? 20歳になっても魔法には魔力痕が残っている。その癖魔力が全く無い。そんな事はありえないんだよ。」


 確かにそうだ……。魔力というのはご飯を食べていれば勝手に溜まっていく。

 そんな魔力が20歳になっても全く貯められていない程に魔法を使っている、そう思われる者が魔法の扱いが上手くない。


 明らかにおかしい事態だ。何かのジョークとしか思えない。


「彼には何か秘密があるね……。そして、それは間違いなくこの事件の根幹に関わる物だ。」


「なるほど……確かにそうかも知れません。」


「しかし……そうなると少し難しい話になってくる。何故彼はわざわざ捜査に協力すると言い出したのか……。その意図がどうも掴めないね……。記憶を失ってしまったか、それとも僕には想像も付かない考えを持っているか……。」


「なるほど……それならば、拷問して聞き出してみますか?」


 私の問いに、隊長殿は首を横に振った。


「それは駄目だよ。こちらが彼を疑っているのを、わざわざ知らせる必要はない。その有利性は残しておくんだ。」


「なるほど……しかし、結局、私はどうすれば良いのでしょうか?」


「……彼を釈放し、彼の元で監視するんだ。監視している事をバラさずに、ボロを出させるんだよ。」


 なるほど……と納得しかけてしまったが、1つ納得の行かない事があった。


「災害を起こした犯人だと思われる者を、そう簡単に釈放するのですか?」


「うん……この件を解決するのに、リスクが伴うのは仕方のない事なんだよ。」


「そうですか……。分かりました。」


 少々腑に落ちないが、それでも私は了承した。

 それに対し、隊長は満足そうに深く頷いた。


「頼んだよイリーナ君。勿論、こちらも支援はするから、安心してくれ。」


「……分かりました。失礼します。」


 私は隊長に頭を下げ、その場を去った。

 その時の隊長の顔が、やけにニッコリとしていた。

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