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第11話:解決

「おい! ちょっとこいつを見てくれ!」


 俺は彼女へと地図を差し出した。

 彼女はそれを受け取って、すぐに怪訝そうな表情に変わった。


『何だこれは……地図の様ではあるが、所々妙な場所が多いな……。』


 当たり前だ。今やその地図には青だったり白だったりする場所が追加されている。

 傍から見ただけで地図だと分かっただけでも凄いと思う。


「へっへっへ! それはなぁ、自分が行った事のある場所が分かる地図なんだよ!」


『なんだと……?』


 彼女は目を見開き、バッとこちらを見てきた。

 俺はその事に少し得意気になってきた。


「その地図は行った事がある場所にだけ色が付くんだよ。って事は、俺が島に居たっていう証拠になる!」


 俺はドーンと胸を張りながらそう宣言した。

 彼女は「ほぅ」……と言って興味深そうに地図を見ている。


「これは凄い魔道具だな……。中々面白い仕掛けになっているらしい。」


 そう言って、彼女はこちらに地図を見せてきた。何か、随分と色鮮やかな地図になっていた。

 全体的に茶色くはあるのだが、黒い部分に殆ど色が着いている。


「あ……あれ?」


 俺が前見たのと大分違う様な気がする……。


「どうした……?」


「わ、悪い! その地図ちょっと返して貰ってもいいか!?」


「構わないが……。」


 俺がその地図を受け取った時、地図は元の状態に戻った。

 ……なるほど、そういう事か。

 どうやら、この地図を持ちながら行った所ではなく、この地図を持つ者が行った所に色が着くらしい。

 どっちも似たような物だとは思うが、この件に関しては大きく変わってくる。


 俺は、勝利を確信した。


「なぁ、これを見てくれ! そもそも俺はその場所に行ってねぇんだよ!」


 俺は大喜びで彼女に伝えた瞬間……そもそも、その災害が起こった場所がどこなのか知らない事を思い出した。

 ……この牢獄のすぐ近くで起こった、とかなってたらどうしよう……。


 と、そんな事を考えていると、彼女はふむ、と言って、コクリと頷いた。


「確かに……お前は災害があった場所には行ってないようだ。ある程度この地図の性能の検証が済めば、その事も認められるだろう。」


 彼女は再び地図を受け取り、認めてくれた。

 思わずガッツポーズを取りそうになった瞬間、彼女からの問いかけが来た。


「……因みに、この地図の色を消したり出来る魔法はあるのか?」


 ……痛いとこを突かれちまった。

 確かにそんな物があればこの地図は何の証明にもならねぇ……。


「いや、ちょっと知らねぇな……。」


「そうか……。いや、安心しろ、知らなくても無実を証明する方法があるかも知れんぞ。」


「本当か!?」


 俺は食いつくように反応してしまった。

 どうしようもねぇのかなと思って絶望していた所に救済が来た様な気分だった。


「あぁ、触ってみたら、この地図には魔力痕が無い。となれば、お前が今魔法を放って魔力痕が残れば、少なくとも当面の容疑は晴れる。」


 なるほど、魔法の使い方が上手い奴は魔力痕が残らねぇって法則を利用した良い方法だ……。

 それなら確かに証明出来るかも知れねぇ!


「よぉし! 【アイス】!」


 俺は体に残っている魔力を絞り出し、小指の爪ぐらいのサイズの氷を発生させた。


 彼女はそれを回収しながら、『ちっちゃいな……』と呟いていた。

 魔力がねぇから、しょうがないと思うんだけどな……。


「なるほど、この魔法には魔力痕が残っている……。となると、確かにこの地図は証拠としては充分なようだ。」


 そう言って、彼女はニッコリとこちらに笑みを向けてくれた。

 先程までの冷たい表情とは違い、柔らかな優しい笑みだった。


「と、いう事は?」


「あぁ、釈放する様に言っておこう。」


「よっしゃぁッ!」


 俺は気付いた時にはガッツポーズを取っていた。

 目が覚めた時にいきなり牢屋に入ってた時はどうなる事かと思ったが、どうやら大丈夫になったみたいだ。


「何というか、悪かったな……。疑ったりしてしまって。」


「別に良いってそれぐらい! 跳んだ時に受け止めてくれたり、最後に協力してくれたりした分でチャラって事で!」


 彼女に関しては気にする必要は無い。

 そもそも魔力痕が合ってしまったのだから疑うのも無理はない。だから俺もそんなに怒ってはいない。


 そう、彼女に関しては。


「つっても、人騒がせな事してくれた真犯人には、ちょっと痛い目見てもらわなきゃ気がすまねぇな。」


 魔力痕が偶然似ていただけだったとしても、こっちはそのせいで突然牢獄に入れられたんだ。顔面2発殴るぐらいはさせてもらわなきゃ割に合わねぇ。


「まぁ、そうだろうな……。真犯人を捕まえた時には、お前にも報告する事にしよう。」


 そう言ってその場を去って行こうとする彼女を俺は急いで引き止めた。


「ちょっと待った! その……俺も捜査に協力したいんだよ。」


「……え?」


 彼女の口からはさっきまでの厳しそうな声とは違い、素が出た様な声が出て、呆然と目を見開いている。


「いや……そもそも何で俺の魔力痕とおなじなのか気になるんだよ。何か目的でもあんのかなって……。」


 そこはどうしてもハッキリしておきたい。

 わざわざ、俺の魔力痕と同じ物を残してるってのは、どういう事なのか。そもそも、わざと偽装したのだとしたら、なんでその痕跡を知ってるのか……。


「……魔力痕は本来残せる物ではない。そして、痕跡を偽装出来る魔法も理論上は、存在しない。魔力の痕跡が同じなのは、偶然だと思うが……。」


「そうか……。」


「……まぁ、気持ちは分からんでもない……。少し隊長に掛け合いはするが……。あまり期待はするなよ。」


「本当か!?」


 望み薄みたいな口振りではあるが、掛け合ってくれるだけ儲けもんだ。ありがたい。


 そして、彼女はコクリと頷き、その場から帰っていった。

 俺は心待ちにしながら、牢獄の中で眠った。

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