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第10話:牢獄

 俺は気付いた時には、暗い場所に居た。

 シャチにぶつかった部位には丁寧に包帯が巻き付かれ、痛みは殆ど無い。


 しかし、そんな事よりも、良く見たらここが牢獄だという事に気付いてしまった。


 いやまて、檻みたいに柵とかあって、床も黒いし、あまり衛生的ではないが、これがこの世界の病院なのかもしれない。

 そして、もしそうならば、牢獄だと思って勝手に幻滅するのはよろしくない。


 そんな現実逃避を言い聞かせている時、柵の向こう側に居た金髪の女性が、俺が起きた事に気付いた様だった。


「ようやく目が覚めたか」


 女性の青みがかった緑の瞳が心配そうにこちらを覗き込んでいた。

 ……めっちゃ美人じゃねぇか、俺こんな女性に心配してもらうなんてなんつーか、役得じゃね?

 そんな事を考え、俺はついつい小さくガッツポーズをしてしまった。


「どうした……。」


 少しドン引きした様な視線をくらってしまった……。あまり悪くない気分になれるが今はそれどころじゃない。


「いや、あの……うん、何でもない。それより、ちょっとここから出してくれねぇか?」


 俺がそう言うと、目の前の彼女は首を横に振った。


「悪いな、お前が魔法の大災害を引き起こしたという容疑が掛かっているんだ。」


「……魔法の大災害?」


 ちょっと現実逃避しかけてたが、やっぱりここは牢獄らしい。

 と言っても……魔法の大災害ってなんの事だ?

 俺が少し首を傾げていると、彼女が新聞の様な紙をバッ、と俺の目の前に開いた。


「1週間前に魔法によって甚大な被害が齎されたんだ。そして、その時に犯人が使ったと思われる魔法の魔力痕が、お前の魔力痕と一致したのだ。」


「……はぁ!?」


 随分とえげつないミステリーだ。

 推理小説で良くある、気付かぬ間に自分の指紋が凶器に付いていた、みたいな衝撃がある。


 そもそも、魔力痕に個人の違いなんかあったのか……。知らなかったぜ。


「……俺はそんな物知らねぇぞ……そもそも1週間前と言えば俺は島に居たしな……。」


 俺が気を失ってから何日経ったのかは知らねぇけど、もし1日そこらだとしたら1週間前は丁度この世界に来たばかりの頃だ。

 そんな事出来る訳がねぇ。


『島か……やはりお前はあの島から船で脱出してきたのだな?』


「そうだな。」


 彼女は少し怪訝そうな表情になっている。

 それがどうも気になって仕方がなかった……。


「どうしたんだよ? 何か気になる事でもあるのか?」


『いや……あの島には一匹だけやたら危険な生物が居てな、良く脱出できたな……と思っただけだ。』


 彼女は、目を細め、疑う様な視線を向けてきた……。

 ……なるほど、前後の話から判断すると、そもそも島に住んでいたのかどうかを怪しまれているみたいだ……。


 確かにやべぇ奴は居たが、それでもゴリラ達のおかげで脱出は出来た。

 まぁ……それを証明する方法ってのは思い付かねぇんだが……。


『何か、無いのか? 島に居た証拠とか、1週間前に災害があった場所に居なかった証拠などだ。』


 そんな事を言われても思い付かない物は思い付かない……。


 いや、でも待てよ。

 そういえば、島に居た証拠なら、あったはずだぜ。

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