表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつか恋になって  作者: soldum
独占
15/32

5.

「……上谷は」


「ん?」


「上谷はだいぶ変わったよな。いや、変わったというか、成長した、かな」


「そうか? 自分じゃそんな気がしないが」


 上谷はコートのポケットに突っ込んでいた両手を出してしげしげと眺めて「育ったかな」と首をひねっていたが、すぐに寒い寒いと呟いてポケットに戻した。


「変わったよ。なんつーか……かっこよくなった」


「ははは、なんだそりゃ」


 あっさりと笑い飛ばされる。冗談だと思われただろうか。今までならそれでよかったが、今日はそれで終わりにするのは我慢できなかった。


「勉強もできるし、生徒会の仕事もやってるし、私服も、なんか大人っぽくなってるし。そういうのひっくるめてかっこいいと思う、ぞ。うん。ほんとに」


「ん、そうか。そんな風に正面切って褒められるのは新鮮だな。悪い気はしないけど……ま、そんな風に言うのはお前くらいのもんだよ」


「他のヤツも思ってるよ、言わないだけで」


「それこそ冗談だろ。だったら会長になっただけであんな苦労をするもんかよ」


「それは……」


 苦労、と一言で片付けられるものでは、無かったはずだが。いや、別に具体的に何があったわけでもないのだ。少しばかり周囲からの風当たりが強くて、少しばかり上谷が参っていただけのこと。だがそれでも上谷にとってはそれなりに重い荷物だったはずなのに、こいつはもう、それを過ぎ去ったものとして扱っている。


 恨み言を言うでもなく、過剰に過去を飾るでもなく、そういうこともあったな、と笑っている。それが本当に、かっこいい。


 俺はきっと、そんな風に受け止められないから。

 今こうして、上谷の隣で特別を求めているように、過去の残滓を取りこぼすまいとしがみついてしまうから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ