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悪役令嬢が異世界転移した場合  作者: 空 葵
我儘令嬢
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四話

魔力過多






 魔法をいつでも放てるよう体内で魔力を操作し始めたロヴェルティナ。



「・・何か勘違いをしているみたいだが、話をするつもりは無い様だな。」



 ロヴェルティナの様子が変わったのを男も感じ取ったのか、手に持つ剣の先を向けてきた。


 話をするつもりがないのはどっちだ、と心の中で悪態を吐くロヴェルティナ。

 油断を誘っているのか、先ほどとはいくばかりか落ち着いた声色で話しかけてきている様だが、命が狙われているとわかったのに騙されるはずが無い。

 何より、男が警戒心を全く隠すつもりが無いのは一目瞭然だ。ならば此方も遠慮するつもりは無かった。



「無礼者!下がりな・・」



 そしていよいよ威嚇とテリトリー確保のため、ロヴェルティナが得意の炎魔法を男にお見舞いしようとした時、ゆっくりと男の背後に迫る何かに気がついた。

 

 初めは暗くてよく見えなかったが、だんだん近づいて来るに連れ、はっきりと姿を確認出来る。


 ソレは魔法を思わず中断してしまうほど、とてつもなく大きな狼に似ていた。



「ちょっとお待ちになって・・。アレは・・なんですの?」



 ロヴェルティナが指差す先を男はチラリと背後を確認し、なんでも無いことの様に口を開く。



「チッ、面倒な。」



 狼に似ているが少なくてもロヴェルティナの知っている狼は、馬と並ぶ程大きくは無い。

 そして一歩近づいて来る度に足元に生えている草を萎えさせはしない。

 遠目で見ても腐らせている様に見える。



「なんですのアレは!?ば、バケモノ!化け狼ですわ!?」

「貴様の相手は後回しだ。そこで大人しくしていろ。」

「私を一人にして逃げるつもりですわね!」

「少しは落ち着け・・。」



 あんなものを見て落ち着けと言うのが無理だった。

 暗がりに月明かりで浮かび上がる獣の鋭い牙と、こちらまで聞こえてくる荒い呼吸は身の毛のよだつ不気味さだ。


 嫌に冷静な男はロヴェルティナに背を向けると剣を構える。


 (もしかして盾になってくださるつもりかしら?)


 男がやられては、次にターゲットにされるのが自分になる可能性が高いので、どんなつもりかはわからないが、なんとなく今は攻撃しないであげようと思えた。


 そうこうしているうちに男が化け狼に向かって駆け出していく。

 あんな見た目も体質?も異常な生き物に立ち向かうなんてどうかしている。


 ロヴェルティナは折を見て逃げ出すつもりでいた。



グルオォォ!



 そっと立ち上がりドレスをたくし上げて準備していると、不気味な声が聞こえ思わず振り向く。



「え?」



 化け狼を引きつけてくれると思っていたら、いざ男が剣を振るった瞬間、ひらりと男を飛び越え此方に真っ直ぐ向かってきた。

 まるで端からロヴェルティナを狙っていたかのように、口から涎を垂らしながら走って来る。



「なぜ!?いやあぁぁ!」

「しまった!逃げろ!」



 そんなことを言われても、あっと言う間に距離を詰められ化け狼はもう目の前だった。



「こ、来ないで!」



 ロヴェルティナは慌てて魔法で防御壁を張る。


 ガン!!と、突如現れた半透明の壁に、流石の化け狼も予想外だったのだろう。頭からぶつかって「ギャン!」と呻き声をあげた。


 防御壁とはその名の通り魔力で作られた壁で、大きさや厚みは術者の魔力量と操作力に左右される術。魔力を込めれば込める程、物理も魔法も防いでくれるが、相手の力量を見誤り、耐久度を越える攻撃を受けると貫通される欠点があるので、初見の相手には全力で壁を作るのが定石だった。なので発動している間は、よほどの器用さと魔力の余裕がなければ反撃が出来ない。



「ちょっと!早く何とかしてくださる!?」



 ロヴェルティナも例によって魔力を注いでいるが、あんなバケモノにそう保つわけ無いので、男には早くどうにかして欲しいと思った。


 ところが、男は黙って此方を見ているだけで動こうとしない。


 なぜ!?と思う。

 まさか置いて逃げようとしていたのがバレたのか。

 お願いだからその事は水に流して助けて欲しいと思う。

 だって仕方ないじゃないか。こんな見たこともない化け狼に合えば、普通逃げ出したくもなる。


 先程から化け狼が軽い助走をつけて何度もぶつかって来ている。その度に衝撃と共にロヴェルティナの魔力が、だんだん減って・・


 ガン!ガン!


 減って・・


 ガン・・


 減ってない?


「あら?」と、独りごちるロヴェルティナ。


 魔力が全然減っていかない。むしろ通常より少ない量で防御壁が張れている。それも今までに無いほどの強度で。


 化け狼の方もぶつかったり鋭い爪や牙で攻撃するのをやめ、涙目になっている気がする。


(これ、反撃できそうですわね)


 いつもと違うが、今は細かい事を気にしている時では無いとロヴェルティナは判断し、防御壁を維持しながら反撃が出来そうな気がしたので、化け狼の頭上に炎魔法を仕掛けると壁の向こうに落としてやった。拳ほどの火球は触れると爆発する仕様だ。


 ロヴェルティナは勝利を確信し口角が上がるのを抑えられない。




 次の瞬間





 ざわめく森林で大爆発が起こり、その轟音を辺りに響かせることとなった。








ティナの得意魔法属性は順に

 火→炎(上位)

 風→雷(上位)

 水

 土


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