ワクワクは友人と分かち合おう!
投稿です。改変するかもです。するかも詐欺かもですね
「あの、着替えはどう致しますか?」
「…そうね」
綺麗さっぱりに拭かれ、着心地の悪くなってしまった服はもう洗濯に出されているだろう。完璧な仕上がりかつ、スピーディーで有名な家のメイドなのだ。回っているどころでは無く、既に水洗いし始めているかもしれない。
そんな今、着る服がなかった。いや、正確にはクローゼットに腐る程あるのだが。
正直に言ってしまえば先程まで着ていた服はデザイン性は良いが着心地は普段着ているドレスとかに劣る。まあ、それは使っている材質の問題だろうが…。
外出用ではない、室内着のコーディネートに少し悩み、下着姿でいたのが原因か少し肌寒くなってしまった。
「適当にお願いできるかしら? …まあ、もう少しすれば寝るから寝巻きでも良いけどね」
良くはないのだが。
結局、見られていないとは言え、家には兄がいるのだ。
親しき中にも礼儀あり、兄妹の中であったとしても最低限の身嗜みはしなければならない。兄が寝巻き姿で家の中を徘徊している姿なんて進んで見たいものではない。…そんな光景が想像できないので好奇心という意味では見てみたくもあるが。
そんな事を考えていたが、クレアの言葉を真に受けなかったのか、冗談だと受け取ったのかそこまで派手ではない、だが質素ではないちょうど良いラインのドレスを持ってきたのが見えた。
全体的な色は白を基調としている為、清潔感はビンビンに感じられる。
「今日の夕食が麺とかじゃ無ければ良いのだけど」
「本日の献立は…えっと、リゾットですね。因みに場所は何方にしますか?」
「移動するのも面倒だし、家で食べるわ。因みにお兄様はまだよね」
聞いてきたように食事を取れるスペースが幾つか設備されている。
使用人と交流を持つように、と父の言葉の元に造られたらしいが…肝心の父はこの家には居ないのでちょっと複雑な気持ちになった時もあったが人とは慣れるものである。そもそも食事時は喋らない性格だが。
リゾットと聞き、明日に行うべきボディメイクの方法を考える。
「いえ、本日は王家の方に用事があると。なので帰るのは遅くなりそうだ、と申しておりました」
「…そ」
生返事を返し、散漫し始めた思考を戻す。えっと、ランニングは当たり前で…とそこまで考えたがそれ以上のメニューは出てこなかった。明日の事を考えるより、今目の前の食事に集中した方が良い、とそう判断したからだ。
本音はお腹が空いたから考えが纏まらない、だが。
そんな自分を愛するクレアの食生活は健康そのものと言って良いものだ。
果物水を飲んだとしても肉に塗れながらの食事をとってもそう易々と体型が崩れる事はないが…何事も心配のしすぎ、位が丁度良いのだ。
んな事言ったとしても食生活は肉も野菜も穀物も丁度良い具合に摂っている。
どこまでが丁度良いかは、さっぱりのきっぱりなのだがそれは料理人が考える事だ。食べる側はどれほど咀嚼し、味わうだけを考えれば良い。のだが、後々後悔する事は目に見えているので出来れば野菜多め、とバランス良くのついでに注文しているのだが。
なので朝、頭の回り切っていない時以外は簡単な物だがこれが食べたい、とかこれは入れて欲しい、と注文を付けてご飯を作ってもらうのだが今回はそんなっことが無かった。理由は一つでしかないだろう。
場所を移動し、食堂へと移る。メイドが扉を開けようと一歩前に出るがそれを無視し、雑に引いて開ける。向かい合って二十数人程食事を取れるテーブルに記憶に新しい人物がいるのを見つけ、ため息を一つこぼす。
「はぁ、来るのなら来るって事前に言えば好きな料理をお出ししましたのに」
「え、はっ! ク、クレア嬢、お久しぶりでございますわね! いや、私も来る予定はなかったのですけど…」
口に入った物を大急いで飲み込み、立ち上がった大商会の娘、メアリーは焦った様子で説明を始めた。
どうやら聞くと、家の近くを通る用事があったらしく、通った際に少し気になることができ何周もクルクルと回っているところを庭師に発見され、メイドに話が通ったみたいで、その相手がメアリーだと知り、なんやかんやで夕食を共に取ることになったらしい。なんやかんやで濁されている部分が一番重要だけど…。
まあ、何で読んだのかメイドに聞いてみる必要があるが友達なのだ。来てくれた事は素直に歓迎しよう、そう考えを切り替える事にした。
「で、気になった事って何かしら?」
「げ…。いえ…あの…あ! このエビとても旨味が凝縮されて美味しいですわ! どこの産地か気になるところですわ…」
目に見えて分かるほど挙動がおかしくなったメアリーを見て、面白おかしそうに笑う。ひとしきり笑った後「嘘付かないで興味があった、と言えば良いのに」と、呟くがテンパっているメアリーにはその言葉は通じなかったみたいだ。
一生懸命話題を変えようと精一杯になっているメアリーを可愛く思い、知りたがっている事を伝える。
「確かそれは家で養殖されているエビだった筈だけど…」
チラッと、近くにいたシェフを見る。それに応えるように意気揚々に応える。美味しいと言われたのが嬉しかったのか。りんごの皮むきとぶどうの種を抜く事だけを生きがいとしていそうな男はニッコリと頷く。
「ええ、クレア様の言う通りです。調理法もありますが普段の餌を少し、奇抜なものに変えると独特の旨味が出るのですよ」
「へぇ、そうなんですわね…」
じっくりとフォークに刺したエビの身を眺め、吸い込まれるように口に入っていく。思わず手を止めてしまいそうな気持ちの良い食べいく様子に思わず笑みが溢れる。心持ちは餌付けであるが。
餌を食べる鯉のような既視感を覚え、それは倫理観的に危ない、と瞬時に判断し良く咀嚼し、消化させていく。
一言二言、天気や食器に付いて触れ、話しただけなので特に時間を掛けずに双方食べ終わった。
縋るものがなくなったのか少し、ソワソワし始めたメアリーを眺めながら口を開く。
「そう言えばこの後はどうするのかしら? 私としては折角来て貰ったんだからお泊まりして仲を深めたい、と思っているんだけど」
どうかしら? と、返事を待つが実のところ待っているわけではない。別に公爵家の令嬢として権力を最大限に使えば一う二つ強制的に頷かせる事は出来るが…それでは面白くない。と言うより初対面の雰囲気とは違って、可愛く思える友達にそんな扱いをしたくなかった。
まあ、それを知ってか知らずか。恐らく前者の権力の強制力でうなずいた感はあるがボリュームを間違えた良い返事を聞き、近くに控えていたメイドに湯沸かしの準備を伝える。
「え、湯沸かしって…」
「ああ、説明してなかったわよね。家、大浴場があるのよ。ほら、裸の付き合いっていうじゃない? 友達だけどもっと仲を深めたいじゃない。もしかして…嫌だった?」
「い、いや嫌とかじゃないですわ…む、むしろウェルカムですわっ」
重圧とも取れるこの空気感でおかしくなったのか、それとも自身が前口にした友達宣言に完全にのっかかる、と心を決めたのかどこか吹っ切れた、本心のようなメアリーが出てきたのを感じた。それでも…ここまでオッケーの意思でいられると突っ込まれる気満々でいた自分が馬鹿みたいに思えてしまう。どっちも側から見れば馬鹿だが。
先まではチラチラと、並べられた料理を見る横目でを見ていただけだったが、今では食い入るように目を見開いて脳裏に焼き付けようとしているのかガン見をしていた。…少し誇張しすぎたが。
頬を赤らめ見てくるメアリーに対し、どんな反応が正しいのか悩んでいると食堂の扉が開き、メイドが入ってきた。
「準備が完了しました。着替えは…二人分でよろしいですよね…?」
「そうね。出来ればペアルックが良いんだけど」
「安心してください。準備万端です」
そう言って指で輪っかを作り指を出し入れし始めるメイドに驚きつつ、表情を隠しながら立ち上がる。
「さて、行きましょうか」
「…これも友達なら普通の事ですよわよね?」
呟きながらメアリーは立ち上がる。友達ですわよね? 友達でいいんですわよね? と、繰り返すように言っていたが何処か満足がいく結論が出来たのか清々しい表情に変わっていた。
「ですけど女の子同士は! 少し、おかしいと思いますわよっ!? そ、それも出会って初日で…」
乱心か。そう思ってしまう程凶変したメアリーに驚きつつ、宥めるように声をかける。
「まあ、一理あるわ。でも、昔から仲を深めるためには裸の付き合いが重要、と言われてたらしいんですよ? 真相は謎だけど」
「で、でも…」
先程見えたメイドの動作を真似る。
「こ、これは仲を深める以上だと…深め合いすぎだと思いますわ!!」
素に戻ったのか。それとも説明を聞き、自分を納得させようとしてるのか。その事に対してきっちりと話さなければここから一歩も動きませんわ! と気迫が感じられた。
その事に対して先のメイドを呼んで説明を貰おうとしたのだが…いつの間にか。音すらも立てずに食堂の扉を開け、顔を覗かせた。
「あれはちょっと指が痒かっただけですので。特に意味はございません」
「…え? 痒かっただけ?」
さも当然のように頷く。
「ええ。今思うとお客様に対して我慢が出来ていなかったと、反省しております」
「次から気を付けなさいね。じゃ、そこの貴女、メアリーさんを連れて行ってもらえるかしら?」
空いた扉から見えたメイドに声を掛け、不満げに何か悩んでいたメアリーを連れて行かせる。残ったのは私と指が痒いと言っていたメイドともう一人のメイドだけだった。
…判断しづらいから名札でもつけてもらえると嬉しいんだけど。
切実に言ってみようかと思ったがあったとしても読むとは思わないので黙っておく。
「…見ない顔だけど新人さん?」
「はい、先日から…いえ、本日ですね。から新しくメイドとして働かせていただける事になりました。私だけが出来る事を見付け、役立てるよう精進いたします。よろしくお願いいたします」
「よろしくね。でも…そうね、たとえ痒くてもあの仕草はアウトだったわね」
思い返し言ってみるが特に返事が欲しくて言ったのではない。返事を待たずに、食堂を抜ける。ここから浴場までそこまで距離はない。気にしないようにしていたがこの胸の高鳴りは…意外にも楽しみにしているようだった。
…まあ、食事の内容的にアルコールが結構入っていたので多少のお茶目は許してくれるよね。と、そんな事を言いながらしっかりとした足取りで向かう。恐らく、もう脱ぎ終わり体を洗っている頃だろう。と判断したが…。
「あの髪型と化粧の処理を考えると…まだな可能性の方が高い…?」
その時は友達らしく体の洗っこだったり、髪のキューティクルにていてあーだこーだ言ってみよう。本当に初対面とは全然印象が違く、仲良くなれそうな気がするのだ。私が思う友達を叶えても良いと思う。
夢を見ながら浴場前の脱衣所で服を脱ぐ。まあ、脱がして貰っているのだが。
これを自分でやる、と言った日があったのだが「私の仕事なのでお任せ下さい!」と、少し半泣きで言ってきた事があった。泣くほどのものなのかな? と、今となって疑問に思えてくるが…ま、脱がせるのが下手とかでは無いので気にしない方向で。