「ヒーローが活躍した日」 0
この物語は現実と全く関係ありません。
蘇我秀麿はわたしのことを「リトル・クララ・ヴィーク、黒の最高女王」と呼んだ。
たんにこれだけだったら、耄碌じじいの下らないジョークで切り捨てられたであろう。
が、怪老人は、相棒のことを「Alice Aleksandros Adamant」と呼んだのだ。
アリスは、尋常に、女の子の普遍的な名前ってことでいいだろう。
アレクサンドロスとは、これは、もう使われることのない古代語の意味の方が相応しく思われる。すなわち、『女神』である。
アダマントは、やはり古代死語では、おおよそ『永遠の輝き』という意味を持つ。
……で、この相棒の名前。頭文字を並べると、“AAA”となるんである。
相棒はとっさに「シンディ」と否定したが──心証はかぎりなく肯定だ。彼女の人品、行動、知性、なにより底なしの魔力! そうだと知れば、納得できる。やっぱり彼女は、“そうなのだ”。
ではわたしは?
状況証拠は揃っている。わたしは、歳若くして、特一級という実力を持っている。なにより四天鬼が、わたしのことを平然と「クララ」と呼ぶのだ。この時点でかなり厳しいが、それでもまだ、“身分”についてはジョークだと言い張れる可能性があった。つまり、たしかに相棒は“そうかもしれない”。が、わたしは“違う”。と──
だが運命は意地悪だ。あろうことかその直前に、相棒自身がわたしのことを、“自分と同格”と認定してくれていたのだ。
ということは、つまり……わたしは。
つまり、わたしは……どうしたら、いいんだろう?