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復活の日2 8

 天では、お目見えの段が終わったのか、画像が消え、もとの夏の大空に戻り──


 地では、がぜん、盛り上がる秀麿とジャンヌだ。


「直ちに『下層神 <アプリ> 』の創造にかかる。なにしろ例の“最終戦争”で、 <傍点> 『帝釈天』以下、前のは全員奪われてしまった </傍点> からな──」

<傍点> それがいないと満足に魔法も使えん </傍点> 、と──

“一人の老人”に戻った秀麿の、溌剌とした声だった。

「それに──神、いや仏とはいえ、一人っきりちゅうのは、孤独なもんじゃ」

 当たり前なことを、いきいきとした声で叫び、今や“サムライ女王 <クイーン> ”となったジャンヌに、きびきびと指図を下している。その新生女王といえば、二十も三十も若返ったような老人を、あきれ気味に眺めていたりするのだ。

「まったく、チョーシいんだから──」

「なにをぐちゃぐちゃ言うとるか。とりあえず四体創るぞ。お前に任せてやるから、ほれ、さっさとやらんか」

「どーやんだよ? セツメーくらいしろよ」

「ばか、何でもいいんだ。お前のイメージで。なんか好きなものはないんか?」

「いきなり言われたって──」

「めんどくさいやつめ。んじゃ、『四神獣』でいいだろう。これだったらお前でもイメージしやすかろう?」

「なんだよそれ?」

「まったく近頃の若い者ったら。知らんはずあるまい? 青龍 <せいりゅう> 、朱雀 <すざく> 、白虎 <びゃっこ> 、玄武 <げんぶ> のことじゃ。いくらなんでも、名前くらいは聞いたことあるじゃろが?」

「そう言われれば……」

「よしよし、さっそく『大日如来』と“アクセス”だ。でないと、せっかくの“力”が、ただの持ち腐れじゃわい」

「へーい……」

「返事はハイ、じゃ」

「はーいはーいはーい」

「ケツ蹴飛ばすぞコラ!」

「いゃあん! エッチ、もっとぉ──ゴメンゴメンゴメンッ、アハハハハ!」

 いまや独擅場の二人である。

 ジャンヌは両目をつむり、意識の集中にかかった。集中──それは、“かつての四級位”が、いままで苦手としていた技術であり──だが。

「──わあっ!?」

 という叫び声をあげて、彼女は目を見開いていたのだった。秀麿が一瞬で悟り、にやりとする。

「どうした“極女王”! それがお前の今の力なんだぞ?」

「──すごい!  <傍点> なんでもできる気がする </傍点> ……」

「よきかな! では、やって見せてくれ」

 ジャンヌ、気を取り直し、ふたたびイメージを紡ぎ始めたのだった。

「──!」

 とたん──


          ※


 おお──!


 東の空に現れたのは──


 体長数百メートル、体重何百トンもありそうな──モノであった。正直、サイズと重量は、“さっき”と同様でまるで把握できないのだが、形だけは明瞭だった。

 ドラゴン──!

 全身が青銀色に輝く鱗で覆われ、太い両足、太い腹回り、太い両の腕、カギ爪──

 背中には悪魔のような、大きな翼を広げ──

 おお! 見よ!

 肩(?)から上には、三本の首が伸び、それぞれ頭 <かしら> を頂いている。

 三つ首竜──!

 そいつらが、牙をむきだし「アンギャーッ」と大気を焦がさんばかりに叫んだのである。


 続いて南の空に現れたるは──


 これまた数百メートル(?)ある巨大なモノで、それは真っ赤な炎なのであった。

 ごうごうと燃えさかり、溶鉱炉よりも熱い光を放射し、よくよく見ると──おお!

 それは鳥の形をしていたのだ!

 その巨大な炎の鳥が、ごおっと翼を広げる──

 くちばし(?)を開いて、「キキャアアアアーッ」という、空気を切り裂くような叫びをあげたのである。


 次は西の空──


 これまた同様に巨大なモノで、それは白色黒縞のトラ──であった。

 ただし、東に対抗するように、これもまた三ッ首なのである。

 エメラルド色した燐光をらんらんと放つ計六つの目がこちらを睨み、その牙だらけの口がそろって開き、「ゴオオオオオオーッ」と、砲撃のごとくに吠えたのであった。


 最後に北の空──


 超巨大な黒亀であった。

 見た目で言うと、この四体の中で、一番重量がありそうであった。

 それが大空に、非現実的にプカリと浮かび──

 これまた「シャアアアアアッ」と危険に呻ったのである。


          ※


 秀麿が絶望的に頭を抱えている。

「お前のキャラクター創造能力には、ほとほと感じ入ったわい」

 最大限の皮肉である。

「だってぇー……」

 ジャンヌ、くちびるをとんがらかす。

 そんな彼女から再び空に目をやり、秀麿はため息とともに感想を述べる。

「東の空の三つ首ドラゴンと、北の空のカメ……。こいつら、かつてどこかで、見たことのあるような気がする“大怪獣”だなぁ……。どっからか、文句が来そうだぞ」

 西の空を見て。

「確かに白地に黒縞模様の白虎だが、頭が三つかよ……。猫版のケルベロスか? まさか竜虎になぞらえて、揃えたってわけでもあるまいに」

 南の空を見て。

「まんま、フェニックスのイメージだな」

 もう一度ため息をついて、結論をつけた。

「お前らしくていいや……」

「へへ……」

 ジャンヌが、笑みを見せた。












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