決戦の日 10
今に伝わる有名なフレーズがある。
『抜けば玉散る氷の刃──』
その文句に勝るとも劣らぬ温度感、硬度感、鋭利感の白刃が、彼の手に出現したのだった。
右斜め下に向けて持ち、その刀身にはっきりとわかる信頼の眼差しを送り、聖斗、一言。
「虎徹……!」
伝説に曰く、石灯籠を切り、兜を割る。今、その刀を持ち、源聖斗──
百万の軍勢の将、その気品。その真冬の地吹雪のごとき威圧感――
真夏の草原が一瞬で灰色に覆われ、嵐が吹き荒れたかのような──
チャコ、そんな錯視に身が震え──
同じ感覚を味わったのかジャンヌが、真っ青になり秀麿の背中に走り逃げたのだった。
聖斗、その切っ先を秀麿に向ける。その所作が呼び起こしたのか、いま一陣の風が吹き、敵将の白い獅子髪をなぶるのだ。
その老陰陽師──
「うふふ……」
楽しそうに笑って応じた。そして続くのは強気の発言であった。
「聖斗……やれるもんなら、やってみるがよい」
そして自分の杖を、刀のように構える。だが、それはただのポーズ。彼流に言えば、ただのオチャメだ。実際に彼がチャンバラをするのではない。もはや全員が知っている。カードは別の物であり、そしてそれは、ひっくり返されるのを今や遅しと待ち受けていたのである。
老人の、必勝の決め手を放つ勝負師のような、最大限の自信に満ちた言葉が響いた。
「儂のサムライどもとな!」
いつのまにか秀麿のもとに再度集結した、四人の武士たち。
穏やかに、こちらに振り向くその面々。
──!
──!
──!
──!
彼らの名前を、今一度、思い返してくださいな。
<傍点> その四人の武士 </傍点> たちが、そこに立ち並んでいるのです……。
※
彼らは――
秀麿とジャンヌを警護するためでなく。
ジャンヌに剣を教えるためでなく。
レイピアのシンディを倒すためでなく。
ただただ──
源聖斗の命を断つ! ただそれだけのために──
魔界から生き返されたのだ!
「すべては、おぬしを引きずり出すため。すべては、おぬしを殺すため。ひいては、儂の真の独立のためよ! 見よ、怖いくらいに筋書きどうりじゃ! なんたる完璧! なんたる才能! なんという深謀遠慮であることか! 我ながら自分に酔ってしまうわい! キャハハハハハ……」
秀麿の、得意げな、そして狂ったような、あの大笑い――
「ふん」
鼻でこたえる聖斗。
「寝言は、死んでから言え」
よほどの自信、その胆力。だが――
「来いっ」
そう呼ばわった相手は、秀麿とは別の男。すなわち──
嗚呼!
初めて見る! 今、聖斗の額は、じわりとした“汗”で濡れていて――
彼の目の前に、一人目の武士が、にこやかに立っていたのだった――!!
疲れた。もともと僕の文章は小説からかけ離れた幼稚なものでしたが、このごろのは(またこれ以降のも)、ますます歪な文章になってしまい困っています。推敲してもかえって自分の才能のなさに絶望してみたりして(笑)。何度もやりなおしを繰り返すと、もう何が面白いんだかまるで分からなくなります。休みます。