「復活の日」 2
だからこそ──
「その願い、叶えようか?」
──ジャンヌ、腰を抜かすほど驚いたのだった。確実に寿命が縮んだと断言できる──!
落ち着いた、しかしどこかおもしろがっている、男性の声。
まさかさっきの破廉恥野郎が──
鳥肌が立つ嫌悪感と恐怖で弾けるように振り向いたその先に、一人の見知らぬ年寄りが、のーんびりと突っ立っていたのだった。
見上げると、白い獅子髪の、老人だった。浅黄色の、『水干』という今ではとても珍しい服装をしている。
「あんた誰──!」
いきなり気づいた。この爺さん、人間じゃない。
「思念体……」
「ほう?」
老人は満足そうに一つ頷く。
「わざと隙を見せてやったからできたのだろうが、やはり腐っても鯛、といったところか。さすがはカザンザーキス家の総領。よくぞ見抜いた。感心、感心……」
もろ無礼な物言いだが、今は気がそこまで回らない彼女だ。
「あんた誰? 誰の形代 <かたしろ> なのよ?」
「名乗ろう。儂は蘇我秀麿 <そがのひでまろ> 。陰陽師よ。こんな存在だが、独立した意識体じゃよ。つまりこれでもちゃんとした一個の人格なのじゃ」
「そんなことって……ありなの?」
「ありじゃよ、お嬢ちゃん。 <傍点> 儂だから </傍点> できることじゃ」
「陰陽師、てなに?」
老人は、どっこらしょ、と口に出して畳に座った。
「とりあえず、“超級魔男”とイメージしてくれたらよいであろうよ」
そう歯切れ良く答えると、老人──秀麿は、ニイッと笑顔を見せたのだった。