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決戦の日 4

「──あなたに、国家反逆罪の容疑がかかっています。それに、殺人の嫌疑もです。

 そこに一人、当方らを待ち受けていたのは、右の罪を認めてのことですか?」

 それに対し、天草四郎ことジャンヌは、高らかに主張したのだった。

「ノン! 我は、当方に非は一点もないことを宣言するためにここにいる。それどころか、逆にその方らを糾弾するために待ち受けていたものである。

 宣告する。罪があるのは、お前たちの方であろう!」

 意外な物言いに、シンディ、慎重に口を閉ざす。

 それに勇気を得たのか、勢い込んでジャンヌが言い放った。

「人一人殺せば、罪人となる。だが一万人殺せば、英雄だ。何を言っているか、わかるな?

 この、戦争犯罪者め──!」


 シンディの顔色が変わった。

「なんてこと……」


 チャコ、事態の把握が間に合わない。とりあえずこの子はあのジャンヌだ。そしてこのジャンヌの言い分は、あんまりだった。まるで凝り固まった狂信者のようなセリフである。

 いったいどうすれば、“戦争犯罪者”という言葉が出てくるのだ? ジャンヌ?

 と──

 ジャンヌがこちらに顔を向けたのだ。

「何を寝ぼけているんだ! いい加減に目を覚ませ! 人の話をよく聞けよ! そして知れ! お前は、いやお前たちは、わたしの仇だということを!」

「ちょっと待って──」

 ──ジャンヌ、と言おうとした。あなた、まず落ち着け! たいへんな誤解があると思うのだよ!

 ジャンヌ、ケープを勢いよく投げ捨てて怒りに身体を震わせる。

「忘れたか!? わが名は、ジャンヌ・ダルク・カザンザーキス! シガラ山はウジ町の、ジャクリーヌ・カザンザーキスは、わが血縁だ!」

「な──!? ジャクリーヌ──!?」


 おおジャクリーヌ!


 言われるまでもない!


 知ってるよ──!


 わたしは知ってる!


 わたしの大切な友達! 忘れたことなんて、一度もないんだ──!


 と、叫ぼうとした。

 が、それは彼女の次の言葉で、封じられてしまったのだ。

「彼女をはじめ、お前たちが起こしたあの大噴火で、親兄弟、一族は、わたしを残して全滅した! ばかりか、何の罪咎も無い町人たちも、あわれ巻添えだ! よくもまあ、いったいどうすりゃそんなマネできたんだか! お前らはそれでも人間なのか? この悪魔め! 鬼め! 人間の皮を被った禍 <まが> もの、クサレ外道め! 人間だとほざくなら、償え! 今ここで死んでみせろ! さっさと消滅しろ! これ以上生きるんじゃない!」


 ジャクリーヌ!


 それは誤解だ──!


 マントが足元に脱げ落ちた。いつのまにか、台の上で棒立ちになっていた。

 ジャンヌ、背の朱鞘から──おお見よ! 刀を鮮やかに引っこ抜く。チャコ、総毛立った。その刀身が、禍々しく虹色に輝いている──

「正義はわれにあり。お前たち、いまここで、わたしが断罪す! 逃げるなよ、わが復讐の刃 <やいば> 、いざ尋常に受けませいッ!」

 ジャンヌが八双に構えた。チャコ、ふるえあがった。ジャンヌのその姿、まるで地獄の羅刹のような迫力だ。こっちに走り出す──

 とたん。

「ガッ!」

 いきなり透明な何かにぶち当たったかのように停止する。

 隣のシンディが指を振るっている──ああ!

 正直、ホッとした。魔法障壁だ。それも、シンディの。これはいくらなんでも、四級では破れまい。このわたしだって難しい。

 肩の力が抜ける。呼吸が楽になる。余裕が生まれた。

 冷静になって──と呼びかけようとした。

 そのときだった──嗚呼、見よ! そのとき、刀がより一層に輝くのを!

 ジャンヌ──

「“はごろも”!」

 一声 <いっせい> とともに切り下ろす──

 チャコ、一瞬でパニックに陥った。魔法障壁が、シンディの魔法障壁が──切り破られた!?

 ジャンヌ、刀を右の胸元で構える。その独特の構え。その姿その形。おおお、言い表しようのない魔気が吹き荒れる。

 そして、ああ──!

 シンディの術を破った、賢くも力強き鋭利な物よ──太古刀!

 お詫びして訂正する。あれは──模倣刀なんかじゃ絶対ない!

 いくたびの命がけの勝負をくぐり抜けてきた、本物。本物の歴史の証人──

 倒し倒された、人の思いの結晶だ!


 ジャンヌが空を飛んだ──!


 刀を振りかざし襲いかかってくる彼女を前に、チャコ──

 なすすべもなく──

 ──シビレた!












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