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いままでの日 4

「それで、話を戻しますが……」

 甚助が発言した。

「例の二人組のことです」

「おう、そうじゃった」

「何者です?」

「世界征服という遠大な目標に到達するために、その途中でどうしても必要となる、人材よ。さけて通れぬイベントというものだ。ときに、甚助」

「ははッ」

「 <傍点> 気づかなかったか </傍点> ?」

「ハテ──?」

「今日、お主は、ジャンヌのあとを歩き、陰ながら警護をした……」

 甚助、そして残りの侍どもも、ハッと目を見開いた。

「まさか……いや……そのような……」

「何のこと?」

 ジャンヌ、口を挟む。意味がわからない。

 秀麿、返答した。

「 <傍点> 二人組にも、男が一人、付いていた </傍点> はずなんじゃ……」

「うそ。そんなのいなかったよ──」

「……拙者、そのような気配は、なにも……」

 甚助、そうとうショックを受けている。

「無理もない。そう気に病むな。その相手は、儂と同じ魔法使いじゃからな。文字通り、肉体を消すことが出来る。その上、剣士だからな……。向こうは、お主に気づいただろうが……」

「ううむ……不覚……!」

「いつまでも拘るでないぞ」

 甚助、ぐっとこらえて、黙って頭を下げたのだった。

「剣士、と言ったな……?」

 これは十兵衛だ。

「腕は?」

 訊くのはやはりというか、それである。秀麿、答える。

「ほとんど自己流だが、天才の剣でな。童 <わらわ> のころ、事情あって儂の弟子とし保護したが、その時点で既に、お前たちの源流にあたる、京八流の素養があった。このたび、陰陽の魔術で、学び学ばれの順がひっくり返ってしまったが、本来ならばお前たちの先達となるはずだった男じゃ」

「それは恐れ入る」

 十兵衛が、そして武蔵が、藤兵衛が、唇に笑みを浮かばせる。

「斬るの?」

 昼間の斬劇を思い出して、震え上がる。目の前で魔法よりも速く走った、剣の風。そして服の、肌の、人の肉の、血管の、脂の、骨の、一瞬ではぜ割れる凄まじさ──!!

「どうか一番手は、拙者に……」

 と甚助。

「甚助で終わっちまうだろう……」

 十兵衛が苦笑気味に異議を挟む。

「……だがわしとて、やるとなれば容赦せんからなァ」

 肩を落とす。

「むむ……おいは、新規構案の、トンボか試したく……」

 と藤兵衛が重低音で呻りながら身を乗り出せば、

「二刀、二刀……刀! 二、刀! ……二、二二刀、二二二……」

 と、武蔵も甲高く興奮して膝を進める。甚助がため息をついた。

「お手前がたのご所望を、奪ってしまうことになりますなあ……」

「……」

「……」

「……」

 ……だーーーれも。お互いに。この四人が負けるとは露とも思っていないところが面白いところだが、ところがここで、秀麿が、弟子をかばうような口を挟んだのだった。

「いんや、そうともかぎらん」

 甚助、目を丸くする。

「拙者が、劣るとでも……?」

 秀麿、仕方ない奴らだ、とばかりに顔をしかめる。

「これだから武士はかなわん! おい、相手は魔法剣士と言うたろうが。それも、今日おのれが斬った年増魔女なんぞとは、天地ほども差がある男よ。仮にも儂の弟子じゃぞ。……まあ、その時にならねばわからんことだが、剣に差があると悟れば、まず間違いなく、あいつは魔法を併用してくるぞ。刀と呪の、言わば変則二刀流じゃ! 剣速に雷を宿らせ、剣圧に山を乗せてくるぞ!」

「うう……うん! うん! うん!」

「ううむ!」

「むむむ……!」

 秀麿、振り向いた。

「十兵衛、空気と化した敵を、斬り殺せるか? 目の前にいた敵が、瞬時に真後ろから刀を振りかざしてきたら、どう受ける? あいつは、お前の理外の兵法者であるのだぞ」

 十兵衛、納得する。

 秀麿、ジャンヌに顔を向けた。

「覚悟を決めるべし。相手は敵方じゃ。喰うか、喰われるかじゃ。ああ、そうか。もっとはっきり言おう。斬る。殺す。命を奪う。さもなくば、世界は獲れん。こちらが死ぬだけじゃ」

「──」

 体が震えていた。

「さて、と──」

 秀麿、言葉を続ける。

「とはいうものの、実際にあいつが姿を現わしてくれんと、しょうがないのじゃがな。不都合じゃな。何か策を立てるとして……」

 ジャンヌ、突然に首を振った。

「──できない! わたしには、できない!」

「なにがじゃ」

「わたしには、人を殺すなんて、できないよう!」

「今まで、なんのために剣の修行をしとったのじゃ。あの天草四郎の刀は、飾り物じゃないぞ」

「できないって言ってるでしょ!」

 秀麿、冷酷な目の色を見せた。

「あの二人組、お前の仇 <かたき> と知ってもか?」

「え──」

 蘇我秀麿、衝撃的な言葉を口にしたのだった。

「あの二人が、お前の家族親族を死に至らしめたのじゃ。そう、 <傍点> あのシガラ山の大噴火は、チャコ・唐草と、シンディ・ブライアントが起因である </傍点> 。──仏にかけて、 <傍点> 儂は嘘は言っとらん </傍点> !」

「──」

「あの二人組、一体何者なのです?」

 今や完全に自分を取り戻した甚助が、静かに、尋ねた。












5に続く。しんどい……(笑)

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