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「ヒーローが活躍した日」 4

 肩までのプラチナの髪の毛、ワイン色の瞳――

 白い半袖の開襟シャツに黒い半ズボン。白いソックスに黒の革靴。

 背中に朱鞘の太古刀(!?)を背負った一人の美少年が、能天気娘を背にかばい、敵の男らに相対していたのだ。

 おお、勇敢な義憤の少年よ! ほらみろ探せばどこにでもカッコイイ男の子っているもんだ! チャコ、なんだか人生に感動してしまう。

 おそらく模倣刀と思われるが、ともかくも我が国の魂とも言える“刀”を背負っているのだ。それなりの覚悟がある、実力を持った少年なんだろうと見込みをつけた。

 ところが――

 計六人の男たちが、少年をみとめていっせいに吹きだしたのだ。バカにしたようにニヤニヤしたり、むせ込んだり。そんな中、兄貴格の黒髭の男が、一生懸命まじめな顔を作って、やっとの思いで、という感じで声を吐き出した。

「これはこれは……“天子様”」

 ウププッ――という残りの連中の息の音。

「“天子様”におかれては、今日も、ご、ご、ご機嫌麗しゅうようで……御慶 <ぎょけい> もうしあげる……」

 兄貴、顔が真っ赤だ。涙がにじみ、声が震えている。

「このような所でお会いするとは、もしや“辻説法”からのお帰りですか……“天子様”?」

 仲間が合いの手を入れる。

「ありがたやありがたや――」

 全員、歯を食いしばって悶絶した。

「……」

 少年の返答はない――


「なんだかあの子、かなりの有名人のようね……」

 人垣の後ろで、シンディがささやく。

「それに、“天子様”とか“辻説法”というコトバが出てきた……」

「……」

 チャコ、ノーコメント。これは本能が告げるのだが、ちょっとヤバイことになってきたと思うのだ。だが我が友はゆるさない。さらに甘い声でささやいてくる。

「宗教関係者?」

 モロずばりの単語が出てきた! チャコ、なんだか必死に沈黙を守る。

「第一、あの“男の子”。……どこか変だわ」

「……う〜ん」

 最初は、どこにでもある安っぽい暴力トラブルだと思っていた。いつもだったら、そんなの、あっという間に片づけて、お終いにしている。あと腐れなく、さっさと次のエモノを求めて立ち去っているはずだった。

 ところが、思いがけずも危険思想を匂わせる言葉が飛び出てきたのだ。チャコ、しまった、と思う。

 一人だけで旅を始めた当初なら、しらんぷりも、断罪も、自分の裁量でなんとでもできた。今は、相棒がいるのだ。

 そう、この上なくとんでもない、相棒。シンディが──

 今、ねちっこく、怖いくらいの真剣さで“少年”を見つめている。それは――

 まるで――

 異端者――でも見つけた秘密探偵のような、そんな目の色の冷たさで――

 ──


 肌に、ちりちりとした感覚。

 さっきの単語どれもこれも、現世界政府の“禁忌”につながる言葉だった。

 そして──

 まだ正式に明かしてもらっていないが、まず間違いないシンディの身分!

 ──


「!」

 二人のそれぞれの思いのこもった注視のなか──

“少年”が、動いた。












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