女同士、調理室、夜7時半、何も起きないはずがなく......
ホムラとマリコ、夜の学校探検スタート!!
「夜の学校探検ーっ!?」
いやらしい響きの言葉に照れて、顔を赤くしてしまうマリコ。自分を監禁した事に対して、怒ろうとした事も忘れてしまった。
「嫌?嫌なら帰ってもいいよ。まあ帰らせないけど。」
ホムラは少し不気味な笑みを浮かべながら、じわじわとマリコの方へと距離を詰めていく。
「ぜ......全然嫌じゃないよ!寧ろ凄く楽しみと言うか、ドキドキします......」
緊張しているのか、敬語になってしまうマリコ。そしてこれは気を使ってそう答えたのでは無く、彼女の本音だった。今、彼女の興味は新作のゲームではなく、隣の席の不思議な女の子の方へと向いていた。
「それじゃあ探検、スタートだね。」
そう言って理科室の扉を開き、廊下へと出ていくホムラ。その後ろにマリコがついていく。
「まずは調理室に行こうか。」
「え、なんで調理室に?」
「食料調達だよ。」
それって泥棒では?と思いつつも、何も言わずにマリコはついて行く。調理室と言うのは食堂の調理室なのか、それとも家庭科の授業で使う調理実習室の事なのか。マリコはボーッと考えながら歩いていた。
辿り着いた先は調理実習室だった。
「食堂の方は、まだ人がいそうだからね。8時過ぎくらいまでは、食堂の近くの職員室に残ってる先生が何人かいるの。」
そう言ってホムラがスマホを取り出す。ホーム画面には19:30と時間が表示されていた。それを見てマリコも自分のスマホをバッグから取り出そうとするが見当たらない。
「あれ、私のスマホは!?お母さんに帰るの遅れるって伝えなくちゃ!」
「安心して。マリコちゃんのスマホはウチが持ってるから。お母さんにも連絡しといたよ、今日はウチと一緒にお泊まりするって。」
「もうーホムラさん!勝手に私のスマホ取らないでよ!それにお母さんにも勝手に連絡したの!?一緒にお泊まりするって......」
夜の学校探検が終わったら、解散するのかと思っていたマリコは、まさかその後にお泊まり会が企画されていたなどとは予想もしていなかった。
「なんかいきなり過ぎるよ!私たち、先月知りあったばかりだよ!そんないきなりお泊まりだなんて。」
マリコは今年の四月にこの高校に入学し、ホムラと同じクラスになった。入学してすぐに行われた席替えでホムラと隣通しになり、その時始めて会話をした。そして、それはつい先月の事だった。
「何言ってるの?知りあったばかりだからお互いを知るために一緒に寝るんじゃない。違う?」
「違くは......無いかな......」
ホムラの反論に、何も言えないマリコ。そもそも今の言葉も勝手に自分のスマホで色々されて焦って、吐いてしまっただけだった。 彼女も心の底ではホムラと一緒にお泊まりしたいと思っていた。
「でも一緒に寝るって言い方は、恥ずかしいからやめよ?」
モジモジしながらマリコが話す。
「照れるマリコちゃん、かわいい。」
「もう......からかわないでよ!」
ふくれっ面で怒るマリコ。
「あれ?誰かいるのかー?」
「!?」
先程のマリコ達の声が響いたのか、何処からか男の教師がこちらにやってくる。足音がどんどん近づいてくる。
「マズいよホムラさん!見つかっちゃう!」
「大丈夫、ウチに任せて。マリコちゃんはここに黙って隠れててね。」
小声で話す二人。ホムラはマリコを調理実習室のテーブルの下に隠れさせてから、室内の冷蔵庫の方へと向かう。冷蔵庫から生魚を取り出して廊下へと飛び出す。廊下の窓を開き、その近くに魚を置いて調理実習室に戻る。
マリコが隠れているテーブルの下にホムラも入る。ホムラはマリコにグーサインを出してニコっと笑う。
教師が調理実習室の前へとやってくる。その時、先程ホムラが開けておいた窓から、茶色いぶち模様の猫が飛び込んでくる。
「にゃーん。」
「ヒエーっ猫!!」
突然猫が現れて驚いたのか、教師が元来た道を通って帰っていく。猫も魚を加えて、窓の外へと帰っていく。
「さっきの先生、山野先生って言ってね。重度の猫アレルギーなの。だから猫を生魚でおびき寄せた。」
テーブルの下でかがんだまま、ホムラが話す。
「猫をおびき寄せたって......どうしてこの近くに猫がいるって分かったの?」
ホムラの話しを聞いて、不思議そうにマリコが問う。
「え、知らないの?クラスの子たちも何度か話してたじゃん。この校舎のゴミ置き場の近くに、猫が沢山住んでる場所があるって。」
ホムラが答える。この事は学校内ではかなり有名で、知らない人は殆どいない。
「へぇー全く知らなかったよ。」
しかし、マリコには初耳だった。
ホムラがマリコに肩をよせる。
「あはーん、さてはマリコちゃん。あんまりこの学校の事に興味ないなー?色んな面白い噂があるのにー。エッチな奴とかもあるよ。」
「それ......ちょっと気になるかも。」
ホムラの言葉に、マリコが反応する。
「え?それってどれの事?」
どれの事だか分かっていながら、マリコをおちょくるホムラ。
「え......エッチなやつだよ......」
マリコが恥ずかしそうに答えると、ホムラはマリコの手を握り、一緒にテーブルの下から出て話す。
「そんなの無いよ。嘘。」
「おい!!」
学校の家庭科の授業と技術の授業、好きだったなぁ......