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隣の席のホムラさん  作者: えのしぃ
1/5

放課後監禁タイム

マリコとホムラの何処か不思議な監禁ガールズラブコメディー、開幕です!

 東京都のとある高校の教室、帰りのショートホームルームが始まる前。クラスの中で一番身長の小さい女子、赤坂麻里子あかさかまりこは皆と一緒に帰りの準備をしていた。

 

 そこに、いつもニヤニヤと笑っている事で周囲から少し気味悪がられている女子、緑川焔みどりかわほむらが話かける。

「マリコちゃん。放課後、第一理科室の掃除手伝ってくれない?今日、他の当番の子がおやすみなの。このままだとウチ一人でやる事になっちゃう。」

 

 マリコは少し考える。今日は早く帰って今日発売のゲーム「エッグアドベンチャー」をやりたい。ただ、掃除なんて数分で終わるしそんぐらいはいいか。とホムラの頼みを受け入れる。

「いいよー!手伝う手伝う!」

 

 第一理科室

 ホムラと一緒に部屋の中を掃除するマリコ。部屋の隅から隅まで丁寧に掃除していく。

「マリコちゃーん、ウチ黒板キレイにするから準備室の物の整理しといて貰えるー?」

「はーい!準備室ねー。」


 マリコが理科室の黒板の横にある扉から、実験道具などが沢山置かれている理科準備室に入る。この部屋に入るにはこの扉を開けるしか無い。


 三角フラスコ、ビーカー、アルコールランプ、謎の液体、謎の粉。様々な実験道具を眺めて、少し気分が踊るマリコ。

「一つくらいとってもバレなさそう!」

 とは呟いたが流石に盗もうとは思わなかった。

 

 マリコが室内の物品を整理していると、先程まで開きっぱなしになっていた、理科室と準備室を繋ぐ扉が突然閉まりカチャカチャっと言う音が鳴る。

「ヒエッ!ビックリしたー!」

 突然の出来事に驚くマリコだったが、風で扉が閉まっただけだろうと、すぐに安心する。


「ここ閉めとくとムシムシするし、開けとこ。」

 マリコがドアノブを捻り、扉を開こうとする。

 

が......


「え、開かない!?ごめんホムラさーん!扉閉まっちゃったー!ちょっと開けて貰っていい?」

 準備室の鍵は、理科室側からのみ開け閉めする事が出来る。準備室側からは開ける事ができないので、ホムラに鍵を開けて貰うように頼む。


「あれ?ホムラさん?聞こえてるー?」

 鍵が開くこともなければ、返事が来る事も無い。声のボリュームを上げて、改めてホムラに語りかける。

「ホムラさーん!あーけて!」


「やーだよ!!」


「やだよ!!!!????」

 予想もしなかった言葉に、マリコは衝撃を受け、声を上げてしまう。

 ホムラはマリコの反応が面白かったのか、いつも以上にニヤニヤしている。普段のニヤニヤより、口角が上がっている!


「それじゃあウチ、帰るねー。」

「待ってよホムラさん!開けてー!」

 マリコを理科準備室に監禁したまま帰ろうとするホムラ。理科室と廊下を繋ぐ扉が閉まる音が聞こえた。


「嘘......で......しょ......」

 一人、狭い部屋に閉じ込められてしまったマリコ。腰の力が抜けたかのように、床に座り込んでしまう。

 外に出られる扉は一つだけ、窓は無い。小さな通気口があるが、中を通れる程の広さでは無い。一体どうしよう。


 放心状態になるマリコだったが、壁越しに廊下の方から男子二人の話し声が聞こえ、希望を取り戻す。

「すいませーん!そこの方ー!」

 マリコは廊下の二人に助けを求める。


「でさー、鍋助がタワシの毛を一本抜いてさー。」

 男子たちはマリコの声に気づかず会話をしている。そのまま歩いて、何処かに行ってしまった。


「行っちゃったー!このー!」

 悔しさからか、マリコは床を思いっきりパンチする。

「痛い!」

 全力で床を殴ったら痛いに決まっている。そんな事をしてしまう程、マリコは動揺しているのだ。


 第一理科室は校舎の端っこの目立たない所にあり、人通りが少ない。放課後にわざわざここの近くを通る人は殆どいない。

 さっきの男子二人が通ってから1時間が経ったが、誰一人理科室前の廊下を通る事は無かった。


「五時になりました、良い子はお家に帰りましょう。」

 夕焼け小焼けのBGMと共にアナウンスが流れる。

「あ、もう五時か......お腹空いたよぉー。」

 マリコのお腹から音がなる。準備室内にもしかしたら何か食べ物があるかもしれないと、棚や積んであるダンボールをあさる。


 何も無かった。

「あー!もうこの塩酸でも飲もうかなー。」

 塩酸が入ったビンを見ながら、独り言を呟く。

「青酸カリウムって美味しいんかなー?前になんかのアニメで舐めてたけど。」

 様々な液体の入ったビンや、気体の入ったスプレーを見ながら、色々な事を考えるマリコ。


「あ!そうだ!」

 マリコは室内にあったゴム手袋を装着し、酸性の強そうな液体が入ったビンと小さいスポンジをかき集める。

 そして小さいスポンジを、同じく部屋の中にあった細い串のような物に刺し、液体を染み込ませる。

「これで、オッケーっと!」


 マリコはニコニコしながら、先端に酸性の液体を染み込ませたスポンジを手に、扉の前に近づく。

 串でスポンジを扉の僅かな隙間にねじ込む。一つだけでは無く、いくつものスポンジをねじ込みまくる!

「どうだ!」


 これで扉の一部が溶けて、思いっきり力を込めれば開けるくらいの強度にはなるだろうと、マリコは考えた。

 1時間ほど待って、扉を開けてみようと試みる。ガガッと音がし少し開くが、何かがつっかかっておりそれ以上は開かない。隙間から辛うじて理科室の一部を覗けるようになったが、あちら側に行けるほどの幅は無い。


「あーもう少しで開きそうなのに!」

 ドアをグーで殴るマリコ。

「痛いっ!」

 それの流れはさっきやったぞ、マリコよ。


 隙間から見える理科室の明るさからして、もう夜7時くらいだろうか。少し寒けもする。

 「あー、もう暗ーい。」

 今日の放課後を完全に無駄にしたと、落ち込むマリコ。だが、心の何処かでは面白い体験をしたなーっとも感じていた。


「もういいや......この力は誰かを守る為にしか振るわないって決めてたけど、仕方ないよね。扉も酸で緩くなってるし、これで行けるでしょ。」

 マリコは深呼吸をした後、ステップを踏み始める。


「スーパーマリコ前回し蹴り(アットリョチャギ)!!」

 掛け声と共にドアを蹴り飛ばすマリコ!!

 マリコは小学2年生から中学2年生の間、テコンドーを習っていた。東日本地区大会、準優勝と言う功績も残している。

「うん、まだまだ行けるね!」


「おめでとうマリコちゃん。」

「ホムラさん、いたのー!?」

 昼頃帰ってしまったと思っていたホムラが、理科室の教卓の上に座っていた。


 夜の学校を月明かりが照らす。

 ホムラがマリコに向かって、いつものニヤニヤとは違う満面の笑みで言い放つ。

「ずっと待ってたよ。それじゃあお祝いに、ウチと夜の学校探検......しよっか!」

夜の学校探検!!?

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