最初は誰もが子供だった。
本編には関与しない番外編の様な話です。
でも、読んでくれたらとても嬉しいです。
本編とは一味違うテイストなのでお口直しと思って読んで見てください…I˙꒳˙)
とある田舎。1人の少年が居ました。少年には体の弱い妹が居ました。
しかし、体の弱い妹は好奇心旺盛で家を抜け出しては外で倒れる。これを繰り返していました。
それを見かねた兄は毎朝散歩をし、それで見たもの、見た事を妹に話しました。しかし、毎朝続けると話す事は無くなります。渋々少年は毎朝走る事で更に遠くで見たもの、見た事を話しました。
妹はとても喜びました。しかし、それも毎朝続けていると話す事が無くなりました。
なので少年は起きる時間を早め、より長い距離を走るようになりました。
新しい発見。初めて見る物。兄の冒険はいつしか外に出られない妹の日々の生きがいになっていました。
兄は妹を飽きさせないために話す事が無くなる度、より早く、より長い時間走る事で新しい冒険をしました。これは妹が自分の力のみで外を出歩けるようになった14歳まで続きました。およそ10年間です。
その時兄は18歳の青年になっており、遠くの街で郵便物を届ける仕事をすると決めて居ました。
街で青年はちょっとした有名人になっていました。誰よりも速く、誰よりも長く走る彼を街のみんなが尊敬していました。
「お疲れ様。」花屋の娘が笑顔を青年に向ける。
「大して疲れてないよ。」嘘ではない。彼は半日近く走っても余り疲れない程の体力が付いていたのだ。
「朝ご飯は何を食べたの?」花屋の娘が質問をする。彼女は青年に好意を抱いていたので話すきっかけが欲しかったのだ。
「食べてないよ。」青年は答える。幼い頃から親が生きる前に走り出していたので何も食べずに家を出る事には慣れていた。
「食べてないの?それじゃあお昼は何を食べたの?」直ぐに途絶えた応答にめげずに更に質問。
時刻は3時近い。流石に休憩を取っているはずだろう。
「食べてないよ。」彼は走っている間は空腹を忘れていられる。仕事が終わるまで走り続けるのが彼の毎日だ。
「そんな·····倒れてしまうわ。」花屋の娘が心配をする。
「良かったら中に入って。休憩を取らないと倒れてしまうわ。」花屋の娘は彼の手を取る。かなり大胆だが素っ気ない態度を取る彼にはこれぐらいしないと意味が無い。
「·····分かった。」青年は応じる。手を握られては走れない。 これがきっかけでこの2人は付き合い始める事になります。
ある日、彼は狂王に捕まりました。罪状は反逆罪。正義感に駆られた末ナイフを握り狂王に迫ったのです。
半年前から王は心を病んだのか民を締め付け始め、そして彼が捕まる3日前に国家転覆の疑いがあると19人の罪のない命を見せしめに処刑しました。
正義感の強い彼はその事を黙認出来ず·····結果として今に至ります。彼は喧嘩をした事が無かったので簡単に取り押さえられました。
「極刑だ、広場でその首を跳ねてやろう。」
狂王が告げます。しかし彼は牢屋で拘束される間に届いた手紙で妹が結婚する事を知り·····簡単に言うと処刑されたくありませんでした。
「狂王よ、貴様にまだ道徳があるのなら3日間の自由を約束して欲しい。私は必ず戻ってくる。」
無論、このような事が通る筈が無いですが残忍な狂王は良いことを思い付き、ある条件を告げます。
「貴様には若い妻が居たな!貴様に自由をやろう。但しその間は貴様の妻を拘束し、貴様が戻らなければ拷問の後殺してやる!!」
彼は走りました。故郷に戻り、皆に挨拶をし、宴を楽しみ、義理の弟に妹を任せ。
そして3日目、彼は再び走ります。
自ら処刑されるために走ります。