人を助けると人に助けて貰えるそうです。
「うざいんだよ!昨日1日ルイ君とイチャつきやがって!そいつは私以外を見ちゃ行けないんだよ!」
ライラが敵意剥き出しでルミナに言う。
デニスはライラの前に位置取り、臨戦態勢に移っている。
「お前とルイの仲は知らない。だがな、ルイは私を2度助けてくれた。そして今はルイのピンチだ、助けるのが道理とゆう物だろう。」
ルミナがこっちを向いてウィンクしてくる。
「それでは早いが幕引きだ!不愉快なお前達には消えて貰おう!!」
そう言ってルミナが腰のポーチから1つの試験管を取り出す。中には青い液体が入っている。
「デニス!殺せ!!」
ライラがそう呟くと同時にルミナがライラ達の足元に試験管を投げつけ、割れる。
ジュワァァァァァァッッッ!!!!!
床が溶けているのかと思ったが実際は床に散らばった液体が凄まじい勢いで蒸発した音だった。その煙がデニスとライラを撫でると·····
「「がぁぁぁっっ!!」」
スパッスパッスパッスパッスパッスパッスパッ。
煙が触れた所·····ほぼ全身にそれなりの深さの切り傷が溢れる。デニスのごつい体も。ライラの純白の柔肌も。
慈悲も容赦もなく無数の切り傷が生まれ続ける。
「開発名は『揮発する裂傷』だ、本来は伸びすぎた木を剪定するのに使うのだが、人に使う事も考慮済みだ。」 ルミナはこちらを向きエッヘンと胸を張る。自慢の開発品を見せる事が出来て嬉しいようだ。だがその『被検体』となった2人は無残な姿になっていた。
「殺す·····」デニスは痛みに耐えながら恨み言を呟く。そしてライラは
「い、いやぁ·····」その痛みも然ることながら自身の体を切り刻まれた事に絶望していた。
「無力化には成功したな。だがお前達を生かしておくつもりは微塵も無い。己の罪と向き合い死ね。」 ライラがこっちを向く。助けてくれと言う事だろう。それに気づいたルミナもこちらを向く。決めろと促している。
「悪いが今はライラを助けたくない。どうしてもと言うなら1週間後にしてくれ。」
「それじゃぁ、遅いよ·····」 ライラが泣き出す。
それを見たルミナは満面の笑みを浮かべデニスとライラの元へ歩き出す。立ち上がろうとしたデニスは顔面に蹴りを入れられ再び倒れると、頭を『踏み抜かれる』
「あ"あ"ぁぁ·····」 座り込んだライラの股からジョロジョロと言う音と共に温かそうな液体が広がる。
「簡単に済ますぞ。」ルミナはデニスの死体から剣を拾い、そのままライラに振り抜く。薬によるものとは違う。致命傷に相応しい斬撃を避けること無く受けるライラ。既に全身を自分の血で濡らしていたが一際大きな血の華を床に咲かせ動かなくなる。
俺達は2人並んで座っていた。俺が動けずに居るとルミナが隣に座って来たのだ。そのまま話もせずただ隣に居てくれている·····
「これ、あげるね」 今までとは違う女の子らしいふんわりした口調で渡してきたのは剣だった。
普通の剣では無いことはパッと見で分かる。
「私、お金ないから。近くの洞窟で見つけたアダマンタイトの結晶を剣の形に変形させたの。」
「アダマンタイトッ!?」
それは銀の様な質感を持つ鉱物で洞窟などに結晶で見つかるかる事が多い。しかし、見つかる深度は非常に深く、希少性も合わさって高級な金属の代表となっている。
「鍛造した訳じゃないから普通の剣より作りは悪いから。せめて材料だけでもマシなのを使おうと思って。」 笑顔でルミナは言う。
「剣として使えなくても売ればお金になるから。昨日沢山お金使ったでしょ?」 彼女なりに俺の出費への不安を感じて居たようだ。なるほど、今日はこれを渡す為に付きまとって居たのか·····
「でもそれなら何で剣なんだ?装飾品にした方が価値は高くないか?」
「うん·····でもこれならもしかしたら使ってくれるかもしれないと思ったから。」
「?」なぜそう思ったのか?答えは直ぐに返ってきた。
「あの雑魚共に絡まれた時、普通の人間ならあこに飛び込むのは勇気が要るでしょ?それにルイが帰って行ったのは騎士団の駐屯地だったし。」 ·····そう言うことか。
「騎士なんでしょ?あるいは見習い。それなのに剣も携えて要ないのは格好がつかないでしょ?」
実際は騎士でもなんでもないただの雑用係なのだが·····そこでふとポケットに入っている指輪を思い出す。
「ありがとう·····大切に使うよ。あとこれ、安物だけど·····」 オマケで貰った赤い宝石の飾られた指輪をルミナに渡す。ライラに渡したものに比べれば安物に違いないのだが、それでも今渡さなければもう渡す事は出来ないだろう。
「綺麗·····ありがとう!!」
こんなに喜んでくれるとは思っておらず照れてしまう。
「じゃあ、そろそろ行こっか。家までは遠いから早めに出発して損は無いよ。」
ん?、何の話だ?家とはルミナの住処の事だろう。それなら遠いのも納得だ、SSランクだし。問題は·····
「行こっか?もしかして俺も一緒に行くってことか?」 こくこくと小さな顔で首肯するルミナ。
「だってさ、ライラだっけ?殺しちゃったじゃん。仲良かったんでしょ?それならまず疑われるのルイじゃないかな?」
なるほど。確かに俺はこの街では生きていけないだろう。いや、この国で生きるのは難しいかもしれない。
「こいつらを殺した事は間違ってないと思うけど結果としてルイが生きにくくなったわけだしさ。·····」 ルミナが顔を赤くしながら見てくる。
可愛い。ライラよりも可愛く見える。
「責任は取るよ·····だからさ、取り敢えず私の家に来てよ。ねっ?」
この日から俺は人類から除名された『破滅の錬成者』の同居人となった。それは同時にもう人の元で暮らす事は出来ないとゆう事になる。もっとマシな選択肢があったかもしれない。たがそんな事を考える暇もなく答えを出してしまった。
「俺は大したことは出来ない。それでも良いんだな?」
「やったぁっ!!実はずっと1人で退屈だったんだ!これからよろしくね、ルイ。」
ルミナの過去は知らない。少なくとも純真潔白な生き方はしてないだろう。だが俺はそれを知らない。知っているのは目の前に居る、俺と暮らす事を心の底から喜んでくれている彼女だけだ。