少年は失恋を知るそうです。
「ここって。」
連れてこられたのは街の中でもあまり賑やかでは無い地区にある孤児院と思われる建物だった。なるほど、お気に入りの場所とゆうのは彼女がよく行っている孤児院とゆうわけだ。
「早く、早く!」
嬉しそうにライラが言う。こんなにワクワクしてるなんて、本当に彼女のお気に入りの場所なのだろう。
ライラが扉を開ける。大きな両開きの扉で、年季も入ってるのかギィィっと大きな音が鳴る。
ライラが中に入り手でおいでおいでと俺を招く。
可愛らしい仕草を目に焼き付けながら中に足を踏み入れると·····
「よう、役立たず」
俺が特に嫌いな騎士。デニス・モーガンが本気の蹴りで俺を蹴り飛ばすとそのまま扉を締め、施錠する。
「ルイ君ってギエルボ・ブライアンを知ってますか?」 デニスに蹴られた腹が痛む。だがそれでもライラの言葉に耳を傾けてしまう。
ギエルボ・ブライアンと言えばこの街に駐屯する騎士団の団長だ。その階級から男爵の爵位も貰っている権力者でる。
「私の本名はライラ・ブライアンなの」
急に実名を告白するライラ。彼女の言う事が本当ならば彼女は騎士団長の娘とゆう事になる。どんな事があっても雑用係として働く事は無い。
「な、何でこんな·····事を·····」
俺の中のライラが崩れる。それと同時に涙が溢れる。
「これが私の趣味なの!お父様に頼んで年が近い男性が面接に来た時は必ず入れてもらうようにしてあってね♪︎」 幸せそうに語り出すライラ。
「特に街へ飛び出してきた様な帰る場所の無い人が最高なの!騎士達で絞り上げた後に優しくしてあげれば直ぐに惚れてくれる!ホントに簡単!」
ライラはそう言って今日買ってあげた指輪を外すと床に落とし、力一杯踏みつける。
「ルイ君でも頑張れば買える額の指輪をわざわざ選んであげたの。嬉しいでしょ?そんなプレゼントを目の前で踏み潰されて·····悲しいでしょ?」
恐らく、昨日自室でガッツポーズをしていた俺も今の彼女の様な溢れ出す幸せを噛み締めたような表情をしていたのだろう。だが今となってはその瞬間からの全てが憎い。騎士たちは腐っていた。恐らくそれを束ねる団長もそうだろう。ならばその娘は?腐っていてもおかしくない。
「それでも·····こんなのはあんまりだよ·····」
「知るかよそんなの」
デニスに腹を蹴られる。
「それなのにさ、チョロいはずのルイ君が他に女を作ろうとしてるんだから妬いちゃうよね。」
ライラが告げる。間違いなくルミナの事だろう。騎士に付けさせていたのか?間違いなくそうだろう。
「ルイ君ってそこそこ見た目いいしさ、露骨に好きだってアピールしてくるしさ、本当はもっと楽しみたかったんだけど、振られたみたいになるのは嫌だから。」 あ、次が最後の言葉だな。
「私を好きになって、そんな私に裏切られて、絶望の中で終わってね?」
デニスが腰にある剣を引き抜く。彼が俺の処刑人となる様だ。ドカドカと足音を立てながら近ずいてくる。情けないことにライラに騙された事がショックで逃げる事も出来ない。このまま死んでも致し方ない。·····
「じゃあ、そろそろ死ねや。中々踏みがいのある頭だったぜ。」 後5歩で死が訪れる。
彼は1人の少女の事をこの時完全に忘れていた。彼に死など訪れるはずは無いのだ。何故なら彼を今日1日付け回していたのは·····
「これは芝居では無いのだろうな?」
扉がジュワジュワと鳴り出すとそこから白く美しい指がニョキっと出てくる。触れた物を溶かす。これは高位の死霊術、または『錬金術』でしか出来ないものだ。
「やぁルイ。今度は無視をするなよ?」
「ルミナ·····」
「なんて顔をしているのだ、しっかりしろ。」
黒いロングヘア、キリッとした顔は男装をすれば美男子としてモテるかもしれない。
しかし、それは紛うことなき美少女で、今日1日俺を付きまとっていた『SSランク』·····
ルミナ・ライフィエルだった。