錬金術師はお礼を伝えたいそうです。
楽しい·····楽しすぎる。
「ルイ君!次はあのお店を見に行こ!!」
キャッキャッとはしゃぎながら走り出すライラ。
白色のワンピースに大きなリボンの着いたハットを被っている。とても可愛い。さてと、置いてかれないよいに俺も行かねば。そう思い歩き出した時。
「おお!ルイじゃないか!」
後ろから俺を呼ぶ少女の声。この街で俺の名前を呼ぶ女性は2人しか居ない。今俺を呼んだのは関わりたくない方だ。振り返る事すらせずダッシュでライラを追いかける。ちなみにこれで3度目だ。懲りない奴め、簡単に財布にできるほど俺はチョロい男ではないぞ?(されていた)
「綺麗だなぁ〜」
俺とライラはマジックショップに立ち寄っていた。そしてライラは細い複数枚の金属繋ぎ合わせて帯のようにしたものに1粒の青い宝石が飾られた指輪を手に取っていた。俺でも手持ちの金の殆どを使えば何とか買える額だ。迷う必要も無い。
「これください。」 俺は店主と思われる女性に代金を払う。
「え?ダメだよライ君。昨日も1月分の給料が無くなったって言ってたじゃん!」
「平気だよこのくらい。それにライラに良く似合いそうだからさ。」 しばらくは財布の紐を引き締めなきゃな。そう決意し笑顔でライラに指輪を渡す。
「凄く、嬉しい·····。大切にするね!」
そう言って貰えてホントに嬉しい。代金を支払い終え店を出ようと出口へ向き直した時、
「ちょっといいですか?」
店主と思われる女性が手に指輪をもって声を掛けてくる。
「贈り物ならもう1つ要るのでは?おまけしますのでこちらをどうぞ。」
そう言って赤い宝石が飾られた指輪を渡される。パッと見でも単純な作りが分かり、恐らくおまけとして相応しい価値なのだろう。
「ありがとう。」 とりあえず貰える物は貰っておこう。そして贈り物ならもう1つ要るとは何だろう?間違いなくあいつの事だろうけど(ちなみにこの時既に7回声を掛けられいたが全て無視をした)·····なんで知ってるんだろう?
この時ルイは知らなかった。店の隅っこに散々無視されたのが効いたのか声を掛けれずただ見つめる事しか出来ない少女が居たことを。
「今日は楽しかったなぁ。」
ライラが呟く。いつの間にか夕方になっていた。ライラの白い肌が夕日に照らされオレンジ色に輝く。今は公園のベンチで休憩している所だ。
「ねぇ?次は私のお気に入りの場所に案内させてくれないかな?」
「分かった、行こう。」
この分だと帰りは夜だな。でもせっかくライラがお気に入りの場所に連れて行ってくれると言うんだから断る訳には行かない。
「·····私の時はあんなに嫌そうな顔してたのに。そんなにあの子が良いの?」
物陰から彼らを除く少女が呟く。彼女は人生の春だと顔に書いてある少年に昨日のお礼をするべく今日1日付いて回る·····否、ストーカー行為をしていたのだ。
「お腹空いたなぁ·····」
『これ』を渡したら褒めてくれるかな?ありがとうって言って、また何か買ってくれるかな?何を買って貰おうかな·····
少女は少年の後を追うべく歩き出した。