家出少年の日々はそこそこ辛いそうです。
「まともに買い付けも出来ねーのかよ!」
「も、申し訳ありません·····」
俺の名前はルイ・デライル。親から畑を継ぐのが嫌で17歳の時に生まれた農村を飛び出し近くの街、ロッテルで生きる事を決意した。しかし、そう簡単に働き先が見つかる訳でもなく、今はこうして真昼間から土下座+頭を踏まれる日々·····この街に駐屯する騎士団の雑用係として働いてる。
「今度討伐任務があったらお前を連れて行ってやる。そのまま魔獣に食われることになるだろうから用意するのは遺言だけで構わんぞ」
俺の頭を踏んでいたガタイの良い、野盗の様な顔をした男、デニス・モーガンは騎士にあるまじき捨て台詞を吐いてニヤニヤと汚い笑みを浮かべながら去っていく。
「ごめんねルイ君。私のせいで·····」
「心配するなライラ。このくらい慣れてる。」
声を掛けてきたのはライラ・ステファニー。丸い大きな目、形の良い小さめの鼻にショートカットの金髪が良く似合う16歳の美少女だ。その愛らしい顔とは反対に体付きは16歳にして出る所が出ておりますます彼女の魅力を高めている。2週間前に俺と同じ雑用係として働き始めたのだがなぜこの美少女がこんな仕事をしているのだろうか·····不思議で仕方がない。
「それに、あんな奴に君を近ずけるのは俺も嫌だ。」
「ルイ君·····」
自分ながら臭いセリフだと思うが、そんな事を言ってしまうほど俺はライラに惚れていた。農村から1人で飛び出してきて、友達も居らず今の雑用係として働いていると自分の身を案じてくれる人は居ない。見た目が素晴らしいからだけでなく、ライラは今の俺の周りで唯一俺の為に声を掛けてくれる大切な存在なのだ。
「あ、そろそろ夕食の買い付けに行かないと」
「それなら私に任せて!昼みたいなミスはしないから!」
「いや、ライラは先に野菜の皮むきとかしてくれると嬉しいな。」
1日に2度も土下座をするのは流石に遠慮したいのでライラの提案を却下する。ちょっと露骨だったかなとも思ったが。
「分かった!皮むきするね!」
元気よくOKしてくれた。ほんとに素直な子だな。
食材等の日常生活で使うものは騎士団の駐屯地にまとめて納品される。なので雑用係が行う買い付けは主に騎士達の私用の物だ。簡単に言うとパシリである。しかし、言い付けるのが個人な為買い間違えると昼のようにタダでは済まないのが厄介な所である。
「可愛いお嬢ちゃん。いい話があるんだが表じゃ話しにくいんだ、裏路地まで着いてきてくれねーか?」 「いい話なの?いいわよ。」
ガラの悪い長身の男がどんなバカ娘が聞いても騙されないような言葉で裏路地に少女を連れ込もうとしている。そしてどうやらその少女は俺の想像するどんなバカ娘よりもバカらしい。黒色のロングヘヤーにキリッとした顔立ちにライラとまでは行かないが出る所が出て、程よく引き締まった体は裏社会の男共は大喜びするだろう。絶対に悪い事になる·····
「帰るのが遅くなっても土下座しなきゃいけないかな。」無視する事が出来なかったので彼女達の後を付いていく事にした。