魔王様、聖剣を拾ってきました!
「魔王様ー!」
彼の名はゴブリくん。子供くらいの身長に、緑色の肌と額の小さな角が特徴の、可愛らしい魔物だ。
「魔王様、聖剣を拾ってきました!」
「危ないから捨ててきなさい」
ゴブリくんの手にあるのは、聖剣だ。聖なるオーラが剣から迸り、光り輝いている様に見える。
それで斬られれば、いかなる魔物でも一太刀の下に切り伏せられてしまうだろう。それは、魔王である私も例外ではない。
「ですが魔王様。聞いた話によれば、これを枕元に置いて寝れば悪夢を祓い、明日の運気もアップするらしいですよ!」
「……それは本当かしら?」
「はい! インキュさんとサキュバさんがそう言っていました!」
最近、悪夢に悩まされて、一々獏達に頼むのも悪いと思っていた所だ。それに、今週の星座占いでは山羊座が最下位だったし……。
「……じゃあ、やってみようかしら」
後日。
「ゴブリくん、やっぱり聖剣を返してきてくれないかしら……」
「どうしたんですか、魔王様。凄くやつれていますよ?」
聖剣を持った人類全員に追われる夢を見た。獏が来なかったらと思うと……ゾッとする。
ちなみに、今日一日は普段通り過ごしていたのだが、愛用の食器類が全部真っ二つに割れた。不思議だ。