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レイジのホワイトデー

 2月14日に何かを貰えたのならば、対となる3月14日にはお返しをする。3倍返しは難しかったけど、手作りのお菓子はよく喜んで貰えた。と言う事で、シェーンでも手軽に作れるお菓子を、メイド達へのお返しに作ろうと思ったのに……


「クリームチーズ? なんです、ソレ? 普通のチーズじゃ無いんですか?」


「グラニュー糖? 普通の砂糖じゃ駄目なのでしょうか?」


「ああ……そっか……そうだよな……」


 簡単に作れて凄く美味しいレアチーズケーキでも作ろうと思ったのだけれど……厨房の執事達は俺の言う材料を知らないようだった。因みにメイドはこの時期お休みにしてある。多分、理由はバレてるけど……

 俺もネットで調べたレシピを覚えてるだけだから、クリームチーズが普通のチーズと違う理由とか、グラニュー糖を普通の砂糖で代用できるかどうかとか分からないし。というか、そもそも普通の砂糖が何なのか分からないし……


「フェルさんなら、何か知ってるんじゃないですか?」


「まあ、そうだろうけど……今回はフェルにバレない様にしたいからさ」


 と言っても、もう気付かれてはいるんだろうけど。いつもはフェルが起こしに来てくれるのに、お返しを作り始める今日はネルガが起こしに来てくれたし。


「なるほど……フェルさんには秘密にしておきたいんですね。そうなると、頼れる相手は……」


「ネルガさんは…………止めた方が良いですよ」


 うん、知ってる。絶対にとんでもない結果になるのは分かってる。ネルガも肩書は執事だけど、家事だけはやらせちゃいけないからな……お菓子作りで頼る事は出来ない。


「女性陣ならどうですか? レオさんは凄くお菓子作り上手ですよ!」


「うーん……女性陣の力を借りたくないんだよな。メイドの皆にもお返しをを作りたいし……執事達は何を送るんだ?」


「俺達ですか? 俺達は人数が多いですから、お菓子の詰め合わせを何セットか纏めて送る予定です」


 なるほど……既製品で済ませるのもありか。考えた事も無かったな……確かに手作りじゃ作れる数に限度があるし、メイドの人数も多いし。フェルやレオには手作りのお菓子にして、他のメイドには既製品を渡すか。


「そう言えば、レイジ様のお知り合いのヤパンの夫婦。あの方ってどうですか?」


 なるほど……ショウとカグヤか。カグヤは料理が得意そうだったし……フェルに頼んでヤパンまで転移させてもらうか。ショウなら、クリームチーズとかグラニュー糖とかも分かる……かなぁ? まあ、行かないよりはマシだろ、うん。



 フェルにヤパンまでの転移門を出してもらうと、天照の社まで転移した。そこから教えてもらっていたショウの家に直接押しかけてみた。

 ここがショウたちの家……カメラ付きインターホンのせいで、異世界の雰囲気をぶち壊してる。押してみると、普通にショウが応答してくれて、入って良いって……地球に戻った気分だ。


「お邪魔します」


「邪魔するなら帰れー」


「それもう古いですよ」


「え……」


 俺の言葉にショックを受けたショウは放っておき、カグヤを探して家の奥に入っていく。

 前に息子さんが居るって聞いたけど……今日は留守みたいだな。折角だから、会ってみたかったんだけどな。


「レイ君、いらっしゃい。求めてる物は用意できてるよ」


「……こんな下らない事に、千里眼使ってもらって申し訳ないな」


 カグヤが居るキッチンには俺が用意してもらいたかった材料、調理器具がシンクの上に置かれていた。嬉しい事に泡立て器が魔力で動くタイプだし、電子レンジ……電子レンジ!? よく見れば冷蔵庫とかお風呂のアレとか……電気の代わりに魔力で動くってだけで、地球の家と変わらないじゃないか。

 探せばテレビとかエアコンとかも見つかりそうだな……下手にシェーンの人に見つかったら、異世界の文明がぶっ壊れそうだ。


「好きに作ると良い……何か手伝う事はある?」


「いいや、1人で頑張る。キッチン借りるよ」


 腕まくりをし、手洗いを済ませる。あっ、コレ地球の家でも使ってたハンドソープ……ショウってもしかして凄いのか?

 まあ、レアチーズケーキなら、数時間あれば作れるだろ。



 クリームチーズを耐熱皿に入れてラップをかける。そのまま電子レンジにかけて、1分程加熱。その間にボウルに氷水を入れ、ワンサイズ小さいボウルに生クリームを入れる。生クリームを冷やしながら、ハンドミキサーでかき混ぜていく。

 魔力が無い俺でもショウの家では、コンセントモドキで魔道具(きかい)を使えるのはありがたい。ハインリヒの屋敷にも導入してもらおうかな……


「ほー、手慣れてるなぁ」


「ハンドミキサー使って、手慣れてるって言われてもなぁ……」


「良く作ったのか?」


「地球に居た頃にな。コレは姉の好物だったから」


 姉は……家族は……どうしてるんだろうか。転生させてもらった後、そう考えてしまう。未練が無いわけじゃないし、フェルの力なら帰れるんじゃないかなーって、思うけど……転移じゃなくて、転生だからな。死んじゃってるもんな……

 レンジから加熱完了の合図が鳴り、クリームチーズを取り出す。これを暇そうなショウに押し付け、泡立て器で軽く混ぜさせる。


「お前なぁ……まあ、良いけどよ」


「砂糖を大さじ3杯で頼む」


「おう…………結構、多いな」


 チーズのコクに打ち勝つには、しっかり砂糖をくわえないとだからな。結構チーズの味って濃いんだよ、特にクリームチーズは。



 良し、後はこれをタルト台に入れて冷やせば完成だな……ここまで来れば屋敷に持って帰ってから冷やしても良い。


「ほー、これだけの材料で簡単に作れるものなんだなぁ」


「ネットのレシピって凄いよな」


「で、何で2個作ったんだ?」


 コイツ……分かってて聞いてやがる。楽しそうにこっちを見やがって……固まる前のレアチーズケーキを顔面に叩き込んでやろうか。


「キングカカオのお礼だよ。要らないなら、俺が持って帰るぞ」


「馬鹿、ありがたく頂くよ……って、帰るのか? 折角だからもう少しゆっくりしていけよ」


「まー、ありがたいけど……」


 ホワイトデーはバレンタインデーのお返しだからな。フェルとレオにお菓子だけじゃなくて、他にもお返し出来る事はあるはずだし。後、メイドたちにお菓子買わなきゃ。


「まあ、何だ……また、遊びに来いよ」


「おう!」


 この後、レアチーズケーキを食べてもらった……までは良かったんだけど、お返しとして要求された行為で、ホワイトデーは真っ白に燃え尽きたとさ。

 来年はお菓子しか、返さないからな!

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