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レイジのバレンタイン

シェーンのバレンタインは騒がしい

 あの日が来た…………地球に居た頃なら、学校の玄関で絶望し、個人ロッカーで絶望し、教室で絶望し、貰う奴を憎悪し、先生に見つかって暴走する奴らに同情(するフリを)し、家で悲しく家族からの物を食べる……なんて悪い日でもない。

 別に頼めば義理でも貰えたし、意外にも頼まなくても貰えたし……普段、全く話さないの俺にも手作りの義理チョコを作ってくれた女の子は本当にありがとう。地球では死んでるから手間が減ったね……なーんて、現実逃避をしている場合ではない。


「おおおおおおっ!」


 渾身の力で剣ではなく、俺の身体より少し大きい斧を叩き付ける。叩き付ける対象はカカオの樹だ。根で歩いて、枝で殴ってくるけど、コイツらは多分カカオの樹だ。いや、カカオの樹だから斧で伐ろうとしてるんだ。だからコレはカカオだ。

 バレンタインはシェーンにも存在しているみたいだ。主に女性がお世話になった人や好きな人にチョコを渡す日。じゃあ俺達が何をしているのかというと……



「レイジ様、負傷者が増えてきました……!」


「目標まではどれくらいだ?」


「……後、カゴ20個は必要だそうです」


 屋敷のメイド達に、義理チョコを用意してやるから材料のカカオを取ってこいと言われたんだけど……取って来いと言われたのがモンスターカカオ。バレンタインの時期にカカオを収穫されない様に暴れ出すという、迷惑な植物だそうだ。並の魔物より強い、植物。

 カゴ20個か……俺でも取れなくはないし、手伝いに来てくれた執事達は先に屋敷に……いや、ネルガにやらせれば良いんじゃ?


「ネルガはどうした?」


「ネルガさんはカカオの花粉というか……チョコ紛にやられまして、治癒魔法を使える執事による治療中です……」


 ネルガの奴、驚く程に状態異常に弱いな。というか、カカオのチョコ紛って何だよ。俺も10体は狩ってるけど、貰った事ないぞ?

 とにかく、これ以上負傷者を出さない為には俺が1人でモンスターカカオを相手するしか……ん? 何か地鳴りのような音が……というか、地面が揺れてるような気が……?


「レイジ様、キングカカオが現れました!」


「キングカカオ!?」


 もう名前と聞こえてくる音だけで薄々勘付いてはいるけれど……一応、説明を聞いてみようか。もしかしたら、俺が想像しているような、数百年に一度現れる、巨大モンスターカカオで倒せば最高級のカカオが手に入る……なんて事は無い筈だ。


「数百年に一度現れる超巨大モンスターカカオです! 倒す事が出来れば最高級のカカオが手に入りますが、流石に危険です! 逃げましょ……ヒィッ!?」


「予想通り過ぎて腹立つ……! そのキングカカオ、粉々にしてやるっ!」


 ブッ飛ばしてやる。ブッタ伐ってやる。美味しく食ってやる……! 植物に効くか分からないが、義手の電気を上手く使えば超巨大なカカオなんざ関係ない威力を出せるはずだ。

 最高級のカカオを持って帰れば、フェルも喜ぶだろう。レオもきっと喜ぶ……なんだ、最初から見つければこうすれば良かったんだ。


「他の執事は撤退しててくれ。俺はちょっと用事が出来た……!」


「あ、あの……」


「何……?」


「い、いえ! お気を付けください!」


 執事に八つ当たりしてもしょうがない……さっさとキングカカオに挑んでくるとするか。モンスターカカオは俺1人で充分に倒せる強さだった。なら、ただデカくなっただけのキングカカオだって!



「うわぁぁぁぁぁぁっ!?」


 巨大な枝が俺の全身を激しく叩いてくる。扱い慣れない斧では防ぎきる事は出来ず、放り投げられた小石のように俺の身体は宙に舞った。義手の頑丈さに物を言わせ、無理矢理木の枝を掴んで衝撃を抑える。生身の部分が金属の部分に引っ張られ、裂けるような激しい痛みを感じる。

 何がただデカくなっただけだ……数分前の自分をぶん殴ってやりたい。デカいって事は強力で、遅く見えるようで迅速で、つまりサイズがデカくなっただけで強い。それが人間サイズから、高層ビルサイズになったとすれば……その強さは十倍以上にもなるだろう。


「どうにかして頭を斬り落とさねえと……!」


 でも、どうすれば……? 今の俺では近付きようが無い。敷地的に吹き荒れる右脚(ゲイルレッグ)でも借りることが出来れば……いや、ゼピュロスがこんな事に貸してくれる筈が無い。

 何か良い打開策でも見つかれば……!


「おっ、あれがキングカカオか! 無駄にクソデカ……あれ? お前、レイジか……?」


「ショウか……? ちょっと手伝ってくれないか……あのカカオ、相当強いんだ……」


「まあ、あれだけデカければな。って言っても、俺も普通のモンスターカカオを狩りに来ただけで、あんなデカブツを相手にするのは……」


 ショウの力は借りられない……か。斧を投げ捨て、両手の義手の電気を開放する。激しい放電音が鳴り響き……っ!?


「ゴフッ……!?」


 く、口から血が……あの一撃だけで、こんなにダメージが……? 義手の電気の開放に耐え切れないのか?


「あーあー、無茶しちまって。ちょっとそこで休んでろ……!」


「ショウ……?」


「心配せずに寝てろ。目が覚めた時には最高級のカカオが目の前にあるからよ……!」


 ショウの身体を強大な魔力が包み込む。と、同時に瞼が重くなっていく。この眠気……ショウの、魔法…………?


「まあ、偶には師匠らしい所を見せてやるさ。強さ自体は、内緒だけどな」



 と言うことで、目が覚めた時にはショウは居なかった。目の前には本当に色や艶が違う、最高級のカカオらしき物が置いてあるだけだった。屋敷に戻り、手に入れたチョコを渡した次の瞬間には、フェルの手元でチョコになっている。

 その為だけに、時間停止を使ったのか……いや、どんな魔法を使おうが、フェルの自由だけどさ。


「妙な借りを作っちゃったな……」


「申し訳ありません。私がその場に向かう事が出来れば良かったのですが……レオに引き止められまして」


「まあ、良いさ。皆からチョコは貰えたしな」


 ホワイトデーのお返しを考えないと……屋敷のメイド全員に返す事を考えると、大変だけど……やりがいがある。それとは別に、ショウへのお礼……どうするか、だな。

二次元のチョコください(切実)


次回は2月にもう1度……?(※ありませんでした)

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