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異世界転移の融合者  作者: ミジンコ
奈落からの脱出
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11話 そしてゴーレムと戦闘に その1

 大部屋の中心で光り輝く魔法陣から徐々にアイアンゴーレムが姿を現し始める。頭から始まり肩、胴、腰と徐々にせり上がっていき、あっと言う間に見上げる様な高さになってく。首が痛い……。

 てかデカいデカいデカい! なんつー大きさしてんだよ。規格外って言っても程があるだろ……。あれ軽く見積もっても10mは余裕でありそうだな。

 部屋の魔法陣が消え、完全に姿を現したゴーレムは俺が元々住んで居た日本の一般的な家を軽く凌駕する大きさである。当然拳もそれに応じて大きく、あんなの喰らったら普通の人間なら一溜まりもないだろう。こういう時ばっかりは人間じゃなくなった事に感謝だな。


「さてゴーレム野郎、俺のダンジョンからの脱出とウィオの自由の為に倒させてもらうぞ? 出来れば大人しくやられてくれ」


 そんな俺の軽口にゴーレムが答える筈もなく、無言で拳を振りかぶり俺目掛けて一直線に拳を振り抜いてきた。迫る拳を見て俺の感想はただ一つ、壁、である。迫りくる巨大な拳はもはや壁が迫って来る様にしか見えず、このままではダンジョンの壁とゴーレムの()にサンドイッチされてしまうだろう。

 まぁいくら平気とはいえ無駄に攻撃を喰らう気もないのだが……。

 俺は即座に指先を【オーガスパイダー】の持つ出糸突起へと変化させ、天井へと向けて粘着質な糸を射出する。糸が天井にくっつき次第即座に糸を巻き取り天井目掛けて上昇していく。本来蜘蛛は吐き出した糸を出した部分から直接取り込む事が出来ないと思ったけど【オーガスパイダー】は出来るみたいだ。ほんと異世界って不思議。


「まずは小手調べだ!」


 両腕を【フライングブレイド】の剣身へと変化させ、力一杯大上段から振り下ろす。斬りつけた際、金属同士の接触で起こる不快な音が辺りに響き渡り肝心のゴーレムの体には薄らと擦ったような跡が残っているだけだった。

 硬ぇ! ただの鉄の塊じゃないって事か! てかこっちの刃が少し欠けてるし……あ、元に戻った。

 そんな事を考えていると再びゴーレムが俺目掛けて拳を振り下ろす。

 さて、さっきと同じじゃ芸がないよなっと。

 下半身を【ブレイドモンキー】のそれへと変化させ、その跳躍力で横に跳び拳を回避すると同時に右腕を【変幻自在】によって長く伸ばし、ゴーレムの肩を掴むと一気に元の長さに戻す。勢いよく上昇しそのままの勢いでゴーレムよりも高い位置に跳んだ俺は右腕を戻すと今度は両手の指先を再び出糸突起へと変化させ、今度は粘着力のあるネット状の糸をありったけ撃ち出した。

 流石にゴーレムを覆う程に大きなネットは作れなかったが、それを補う様に大量に撃ち出している。撃ち出したネットの内いくつかは関節部や腕と胴等を跨ぐ様にして貼り付いた。

 これで少しは(やっこ)さんの動きが阻害されてくれるとありがたいんだけどなー。地球に生息している蜘蛛でさえ糸の強度は同じ太さの鋼鉄の5倍、伸縮率はナイロンの2倍もあるという。そしてここは異世界であり、更にはこの糸を作り出しているのは地球の蜘蛛よりも何倍も強い異世界産の蜘蛛だ。その糸の強度は地球産を遥かに上回るだろう。だから大丈夫! そう思ってた時期が俺にもありました。

 強靭なはずの糸はゴーレムの動きを阻害する事も儘ならず、ゴーレムが体を動かすたびに糸が次々と断裂していく。

 うっそん、あの糸かなり丈夫なんだぞ!? サル(ブレイドモンキー)だって糸に絡み取られたら身動き一つ取れなかったってのに……ってあぶね!

 いとも容易く俺が吐き出した蜘蛛糸を無造作に引きちぎるゴーレム。その光景に俺が驚き目を見張りながらゴーレムの肩に着地すると、乗っている方とは逆の腕でゴーレムが肩に乗る俺を叩き潰さんとしてきた。

 間一髪で天井に糸を貼り付けると同時に巻き取り回避すると、下半身を【オーガスパイダー】のものへと変化させ天井に立つ。地面側に頭を向けているのに頭に血が上っていく感覚が無いのが若干違和感を覚えるがまあそこはしょうがないだろう。だってもう人間じゃないし。


「さて、このままじゃ埒があかねぇ。奥の手でさっさとケリつけるとするか」


 下半身は蜘蛛のままに俺は頭を【アシッドトード】へと変化させる。この【アシッドトード】、【オーガスパイダー】よりも更に大きいガマガエルの姿をした魔物である。その能力は全身や長い舌から強力な酸を分泌させ、なおかつその大きな口から強力な酸を吐き出すというものである。しかも口から吐き出される酸は、速度重視の球体型と範囲重視で放射状にバラ撒くという二種類があり、予備動作ではどちらが飛んでくるのか分からないのだ。このスライムの体になってから出会ったからこそ酸の脅威も薄く、もし最初に出会っていたのがサル(ブレイドモンキー)ではなくこのカエル(アシッドトード)だった場合、俺は原形を留めていない見るも無残な屍を晒していただろう。

 まあそれはともかく、こいつは酸を吐ける。それもかなり強力な。そして相手はアイアンゴーレム、つまり鉄だ。もう分かるね? そう片っ端から溶かしてくれるわ!

 俺は天井を足場にして眼下のゴーレム目掛けて目一杯の強酸を吐きかける。相手は動きの遅いゴーレムなのでもちろん放射状にだ。酸が降り注ぎゴーレムの身体に触れた瞬間じゅわ、と音を立てて煙が上がりゴーレムの身体を溶かす。

 自身の身体が酸によって溶かされていくのが不快なのかゴーレムが身体を激しく動かして何とか酸を吐き出している元凶たる俺を殴り飛ばそうとするも天井に張り付いている俺に拳が届くはずも無く、かと言って動きの遅いゴーレムがどれだけ逃げても天井にいる俺の射程から逃げられるはずも無い。

 それでも鬱陶しい事に変わりはないので敵の攻撃の当たらない高い位置(天井)からゴーレムの両肩目掛けて酸を吐き出し続けているとやがて重い音が大部屋に響く。どうやら多少時間は掛かったがゴーレムの両腕が肩口から溶かされて自重に耐えられなくなって地面に落ちたらしい。いきなり両腕をなくしバランスを崩したゴーレムはそのまま地面に倒れこんでしまった。

 よし、後は何重にもネット出して脚の動きを阻害して……と、よしこれでいいだろ。身動きできないゴーレムの胸元溶かして魔石取り出せば俺の勝ち――。


「危ない融お兄さん!!」


 悲鳴にも似たウィオの危険を知らせる言葉が大部屋に響く。その言葉が俺の耳にも届いた瞬間、横からの強い衝撃によって部屋の壁まで吹き飛ばされ、ベチャリという音と共に俺は壁に張り付いた粘液と化した。

 いつつ……、いや痛みは無いんだけどね? なんてゆーかそのー癖? みたいな? そう人間だった頃の癖みたいなのね?


「てかいったいなんなんだ……」


 粘液状態から人間の形に戻りつつ衝撃の原因へと顔を向けると、そこには肩から溶けて地面に落ちた筈の両腕がまるで今何かを殴り飛ばしましたと言わんとばかりに拳を握りしめた状態で浮かんでいた。

油断大敵ですよね。次回ゴーレムとの戦い決着です。

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