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やっぱり部屋が最高な件

「あの建物じゃない」

「うん。あれっぽいね」


 ミリィが指差した建物、ヘラクレイオンのフルブレム商会支部は、一応商館のようなていではあったが、それほど大きいものではなかった。

 申し訳程度の支店なんだろう。

 ヘラクレイオンは港町ではないから海運はない。陸運の街なのでやはりターレア商会が強いようだ。

 建物に入って受付嬢に話しかける。


「あの……すいません」


 盗賊ギルドです。といっていいのだろうか。驚かれてしまうかも。

 しかし、言う以外にはない。


「盗賊ギルドのトオルと言うものなんですが」

「あ、トオル様ですね。お待ちしておりました。どうぞこちらへ」


 書簡を届けに来ただけのつもりだったが、ニッコリと微笑んだ受付嬢に奥に案内される。


「え? 書簡を届けに……」


 書簡を届けに来ただけと言おうとしたが、受付嬢は建物の奥に向かう。

 まあ僕らの話は伝わっていたようだ。


「こちらです。どうぞ」


 受付嬢に軽くお礼を言って案内された部屋に入る。


「あ、ビーンさん」

「どーも。トオルさん、ミリィさん」

「どうしてここに?」


 ビーンさんは王都か港町か、あるいはひょっとして海上を船で飛び回っているかと思っていた。

 船で飛び回っているとは言わないか。


「ははは。書簡が届くのが待ち遠しくて。ここで待っていたんですよ」

「そうだったんですね」

「もちろん。こちらのほうで色々な調査もしていましたよ」

「麻湯のですか?」

「いえ。それはトオルさんがきっと素晴らしい情報を持ってくるのではないかと思いまして、こちらはビジネスのほうですね。で、麻湯はどうでした?」


 僕は胸を張って答えた。


「やっぱり推測通りゴブリンが作ってましたよ」

「おお! さすがトオルさんです!」

「生産場所の地図も作れました。かなり正確なハズです」


 ノエラさんが描いてくれた地図を広げる。


「ほう。美しい色で見やすくなっていますな。トオルさんが開発されたアーティファクトですか?」

「はは。まあ……色ペンは……そうですね」

「ウチの商会の商品で扱わせていただければ、大きな利益を約束しますよ。先払いで契約金も払いますし」

「え? どれぐらいですか?」


 ほうほう。ビーンさんが提示した額は、毎日地下街のエルフ娘のお店に行ってもいつ無くなるか見当もつかない。


「いいかもれませんね~」


 ミリィが冷たい目で僕を見ていることに気づく。


「ごほん。量産はできないので先に麻湯の話を」

「そうでしたな」


 ミリィの目が笑っている。


「ゴブリンに見つからずによくここまで」


 そりゃドローンで撮影した映像から作っているからね。


「それでも最後は見つかってしまって慌てて逃げ出したんですけどね」

「ほう?」

「変異種のゴブリンもいて大変でした」

「なるほどモンスターの変異種は頭の良い個体もいるらしいですからな」

「パワーも凄くて」


 猛烈なバタフライで追って来た時は驚いた。


「結局、その変異種のゴブリンはどうなったんですか?」

「今頃は凍ったまま湖の下に」

「ほう賢者の氷雪系魔法ですか? さすがですな」


 ミリィがプッと口を膨らます。


「いや……弟子のディートです……」

「あ~ディートさんはトオルさんのお弟子さんだったんですか」


 ついにミリィが笑いだした。


「にゃはははははは」

「私、なにかおかしいことを言いましたかな」


 僕はミリィの両頬を横に引っ張って黙らせる。


「ミリィは獣人だから笑いどころが、ちょっと変なんですよ」


 縦に横にと引っ張ってもミリィはまだ笑っていた。


「いずれにしろ、皆さんのおかげで麻湯の原料をゴブリンが作っていることが明確になり、正確な生産場所の地図もあります」


 ビーンさんが頭を下げる。


「後はフルブレム商会のほうで、どうやって麻湯が広まっているのか調査します」

「そうですか」

「フルブレム商会としては、盗賊ギルドへ既に卸し始めている砂糖を特別な卸値にすることから便宜を図りたいと思っています」

「お~それはありがたいです」


 甘いものが少ない異世界では屋台で提供している日本のスイーツは大人気だった。

 砂糖を安く卸してもらえれば利益が大きくなる。


「麻湯の畑やゴブリンの掃討作戦にはご協力頂くかもしれませんが、麻湯のルート解明には少しかかると思います。それまでお待ち下さい」

 

 しばらくはフルブレム商会にお任せすることになるようだ。

 僕達はフルブレム商会のヘラクレイオン支部を出た。

 ヘラクレイオンの街はまだ少しだけ明るかった。

 そろそろ夕方になるだろう。

 まだショッピングモールはできないし、麻湯とか新しい問題もできたけど。


「とりあえず、ここのところの冒険で盗賊ギルドはお金を稼げるようになったみたいだね」


 屋台にはまだまだ人が集まっている。


「うん。本当にありがとね」


 ミリィが歩きながら僕のほっぺたにチューをした。

 印刷したり、砂糖を買ったり、ドローンを買ったり、日本円を相当使ってしまったが、プライスレスだ。


「じゃあ終わったんだから何処かに遊びに行こうね」


 ミリィが僕の腕を引っ張った。


「ノエラさんに怒られるんじゃないかって言ったじゃん」

「今日ぐらい良いじゃーん。今度はノエラも一緒に呼んであげるし大丈夫だよ」


 一緒に遊ぶのか。イイ……ね。


「ま、まあそうか~。でも何処行くの?」

「そうね~日本の街に行ってから……トオルの部屋かな!」

「ははは。いいよ~」


 ミリィと一緒に日本の街に行って美味しいものを食べてからその後はやっぱり僕の部屋だ。

第五章終わりです。


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