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最新機器でゴブリンの畑を探す件

 江波さんの奥さん達と言えば良いのか、フワンソワーズさんとカトリーヌさんとローラさんとジャクリーヌさんと言えば良いのか、とにかくオーク達が宙空をポカーンと見ている。

 右に左にと首を振っていた。カトリーヌさんなどはあまりに熱心に見すぎてよだれが垂れている。

 数時間前はリアもディートもミリィも同じような顔をしてそれを見ていた。

 そりゃそうか。今オーク村は右に左にと小型のヘリの様なものが飛び交っているのだから。

 そうドローンだ。


「リアは上手いわね~」

「にゃ~」

「えへへ」


 ちなみに操縦はリアがしている。ドローンの有用性を知った三人は私が操縦すると取り合ったが、GPSでの自動運転、自動制御がされる地球と比べて、操作が結構難しい。

 少しずつ少しずつ慣れさせたが、ディートとミリィの操縦に対しては僕はサッカーのゴールキーパーのスーパーセーブのように横っ飛びでドローンをキャッチすること再三だった。

 きっとレベルアップして【敏 捷】が上がっていなかったら7万円が無残な姿になっていたに違いない。

 しかし何故かリアはメキメキ操縦の腕を上げていき、ほとんど手動で操縦しないといけない異世界でも完璧な腕を見せた。

 というか僕より上手かった。


「なるほど。それでゴブリンが畑作しているところを撮影するんですな?」

「ええ。これなら浮島を簡単に渡れますしね」


 オークがシマイモを作っているのも、ゴブリンがシマイモを作っているのも、ヨーミのダンジョンの地下七層の浮島だ。

 船や水上魔法で移動しないと行けない。

 遮蔽物もなく素早く移動できないので確実にゴブリンに見つかるだろう。

 だがドローンなら自由自在に移動できる。

 そしてこちらは隠れながらリアルタイムの映像をアイポンで見ながら撮影できるというわけだ。


「トール様~どうですか~」

「上手い上手い!」


 これならゴブリンの麻湯畑を探して撮影するのに十分に役に立つだろう。

 僕達はドローンの充電をするために一端、マンションへ帰った。


◆◆◆


 翌日、リアとディートとオーク村に訪問する。

 江波さんとフランソワーズさんが旅支度をして待っていた。

 どうやらフランソワーズさんがゴブリンの畑のおおよその場所を知る誰かだったようだ。


「行きましょうか」

「イキマショウ」


 僕の出発の掛け声にフランソワーズさんも合いの手を入れてくれた。

 江波さんとフランソワーズの先導で地下六層を先に先にと進む。

 江波さんが教えてくれた。


「六層のこの辺りはオークが使う地域だから基本的にはコボルトもゴブリンも出ません」

「基本的にはというと?」

「ゴブリンがたまに……」


 やはりオーク達はかなりゴブリンにやられているらしい。

 まだ確定ではないけどゴブリンが麻湯を作っているのならゴブリンを攻撃する口実にもなる。好都合だと思っている。

 そういうことなら江波さんも僕らの手助けを快く受け入れてくれるだろう。


「今日は遭遇しないと良いですけどね。まあコーラも持ってきましたし」

「そうですね。まあ、毎日のようにこの道を使ってたまにですし……大丈夫でしょう……」


 遺跡風の石張りのダンジョンを黙々と進むと下に降りる階段が現れた。

 階下を下りると外壁がドーム状になっている地下層のなかに巨大な湖が現れた。

 緑の浮島がいくつも見える。


「すげえ。この湖の水、光ってるんだな」

「この階層の植物はこの光で光合成をしているようですよ」

「へ~でもこの水。飲んだりして大丈夫なのかな?」


 ちょっと喉が渇いた。


「浮島にも綺麗な湧き水の出る泉がありますけど、この光る水も大丈夫だと思いますよ。私もよく飲んでるけどなんともないです」


 うーん。もう少し我慢するか。


「よーし。皆に水上歩行の魔法をかけるわよ~」


 傍らにはオークが作ったと思われるカヌーもあったが、ディートが魔法をかけてくれるらしい。

 彼女が杖をくるりと一周させると僕達は水色の光に包まれた。


「おっけー。これで水の上を歩けるわよ」


 本当だろうか。僕は恐る恐る湖に踏み出した。


「おお! 浮いてる!」


 ははは。凄い。柔らかい土の地面のような感覚だ。


「どれ私も!」

「ワタシモ」


 江波さん夫妻が湖に入る。

 あれ? 江波さんとフランソワーズさんは重さからなのかくるぶし辺りまで湖にめり込んでいた。


「浮きましたぞ! 鈴木殿! 凄いですな~!」

「スゴイワネー」


 だいぶバシャバシャやっている気がするが、本人たちが良ければそれで良いか。

 浮島は無数にあった。

 植物に覆われていて中がわからないことが多い。


「なるほど。このなかでシマイモを栽培しているんですね」

「ええ」


 僕達はシマイモを栽培している浮島に案内してもらった。


「ここです」

「木に囲まれた森の中って感じですね。ところでシマイモは何処に」

「ああ。ストップ」

「え?」


 江波さんが手で止める。


「この一見雑草に見えるのがシマイモのつるなんですよ」

「へ~」

「こっちには泉があります。どうぞ」

「ありがたい。喉が乾いていました」


 泉はちょっと岩が重なって高くなっているところからコンコンと湧き出ていた。

 小川を作って森の中を流れていく。

 きっと湖まで流れているんだろう。


「おお。これは光ってないし美味しそうな水ですね」


 僕が泉に手を入れると七色の魚が寄ってきた。


「うお!? 七色魚」

「ははは。鈴木殿の手にご飯粒でもついていましたかな」


 そういえばオーク村に辿り着く前におにぎりをパクついた。


「七色魚はここで獲っていたんですね?」

「ここは泉も小さいのでもっと大きいところで捕ることが多いですけどね」


 うん。水も美味しい。アルプスの水的なものよりも美味しいんじゃないかと思う。

 のどが渇いていたせいかもしれないけど。

 皆と少し休憩した。


「よしじゃあそろそろやりますか。フランソワーズさん。ゴブリンをよく見かけるのはどちらの方ですか?」

「ココカラダト……アッチノホウネ」


 フランソワーズさんが指差して教えてくれた。


「良し! じゃあリア頼む!」

「はい!」


 リアの操縦でドローンはフワフワと飛び立つのだった。

 ゴブリンを見つけることができると良いんだけど。

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