船荷を調査する件
明日も更新予定!
夕食を食べて部屋に戻った。
商会の人に頼んでタライに入れた海水と少量のお湯を持ってきてもらった。
ミリィが聞いてきた。
「なにこれ?」
「海水とお湯だよ。濡れタオルで身体を拭こうよ。ミリィも汗かいただろ?」
「トオルは意外とキレイ好きなんだね~」
そりゃ、日本人だからな。
「そういえばリアやディートは僕の部屋でお風呂に入るのが好きだけど、ミリィは僕の部屋でお風呂入ることあんまりないよね」
「俺はあんまりお風呂入るの好きじゃない~」
なんだって……。
「ち、ちなみに最後入ったの何時?」
「二日ぐらい前かなあ?」
げっ。さっき結構ペロペロしちゃったぞ。
「とりあえずさ。大量の海水と少量のお湯があるんだから身体を拭こうよ」
「うーん。仕方ないなあ」
よかった。納得してくれたらしい。
僕はタオルを海水に浸して適度に絞る。
振り返ってミリィにタオルを渡す。
「ほら……いっ!?」
タオルを渡そうとミリィを見ると上半身マッパだった。
「早くタオル頂戴よ」
「脱ぐなら脱ぐって言ってくれよ」
「別にいいじゃん」
よくはない。こっちにも画像として記憶する準備がいる。頭に。
「確かに気持ちいいね」
「あ、あぁ……」
こっちはこっちでシャツを着たまま上半身を拭いていたらミリィが話しかけてきた。
「トオル。背中の拭けないところ拭いて~」
「は、はぁ? こうやってやれば拭けるよ」
タオルの端と端を持って背中に回す。
「いいからやって~」
ミリィが背中を向ける。
形の良い乳は消えてしまったが、引き締まった背中のラインが妙に艶めかしい。
「はいはい。拭きますよ」
「よしよし」
とりあえず軽く背中の真ん中を拭いてあげる。
「にゃひひひっ。くすぐったいな。なにやってんの?」
「なにやってんのって拭いているんだよ」
「ふわふわした力でやるからくすぐったいって。もっと強くやって!」
「はいはい。これでどう?」
「うん。気持ちいいよ」
背中を拭いているだけとはいえ変な気分になってくる。
「これでいいんじゃないか」
「にゃっありがとう」
ミリィが上着を着ながら言った。
「じゃあ今度は俺が拭いてあげるよ」
「え? いいよ。僕は自分で拭けるし」
「いいからいいから。脱げ~~~!」
や、やばい。さっきミリィの背中を拭いた時に変な気分になってやばい状況になっているのだ。
「ほらほら、早く脱げ~」
「い、いや、いいって言ってるだろ」
力はレベルが上がりまくってこちらのほうが強いと思うのだが、ミリィの動きは獣の動きだ。
すぐに上着を脱がされてしまった。
「さあ、俺が拭いてあげるからね」
「もう拭いたよ」
「背中は拭けてないよ。後下半身も」
ミリィが逃げる僕のズボンのベルトを掴んだ。
「後でペロペロするかもしれないし!」
「ちょ、ちょっと待て」
僕のズボンが下がり、ちょうど半ケツになった時にビーンさんがやってきた。
「ははは。楽しそうなところを邪魔してすいません」
「あ、ビーンさん……」
「にゃ、どうしたの?」
ビーンさんが少し真面目な顔をして言った。
「実は手伝って欲しいことが……」
突然の話だった。
フルブレム商会の船のなかで僕達が手伝えることなんてあるんだろうか。
水夫の真似事なんてできないだろうし。
◆◆◆
僕とミリィは船倉に連れて行かれた。
箱や樽、麻袋が整然と並べられている。
何故こんなところに呼ばれたのか少し不可解に思ってビーンさんに聞いた。
「倉庫ですね。こんなところでなにを?」
「ここにあるのはヘラクレイオンからの交易品なんです。もっと端的に言えばヨーミのダンジョンの発掘品です」
「へ~そうなんですか? でもなんでそれを僕らに見せるんですか?」
「見せるわけではないんですよ。さきほど言ったように手伝って欲しいんです」
話がよくわからない。
「なにをですか?」
「船荷を調べて欲しいんです。麻湯のことはお二人もご存知でしょう?」
「麻湯だって!?」
ビーンさんの口から麻湯の話が出てくるのに驚く。
「ヨーミのダンジョンから王都に運ばれる交易品の中に麻湯が入っている可能性があります」
「どういうことですか? 詳しく教えてくれますか」
ビーンさんは船荷の箱を開けながら話しはじめた。
「実は我々フルブレム商会はここ数年ずっと麻湯と戦っているのですよ。当初、我々は麻湯を素晴らしい薬だと思っていました。未だにそう思っている人も多い」
そうなのだ。
この世界の人は麻薬のことがよくわかっていないようだ。
まあ日本も戦後すぐはヒロポンという麻薬が薬局で普通に買えたらしいけど。
今まで無かったのかもしれない。
「疲労や倦怠感や眠気を取り除き、精神的を高揚させる夢の薬というのが麻湯の売り文句でした。実際そのような効果があった……しかし……」
僕はどうなるかを知っている。
「麻湯には恐るべき依存症状があったのです。効果が消える度にまた使いたくなってしまうのです。その欲求は強くどれだけお金払っても欲してしまうというものでした」
やはり麻湯は日本で言うところの麻薬の一種だと確信する。
「幸いというかなんとかフランシス王国では麻湯が法律で禁止されました」
「おお、そうなんですか。よかったですね」
危険性すら認識されずに大っぴらに使うようになったら国は終わりだろう。
「残念ながらとても徹底されているとは言えません」
「そうでしょうね」
地球でも麻薬は危険という認識が広まったのは歴史があるからだろう。
「実は我々はヨーミの地下街に商会の情報屋を放っています。お二人が麻湯の中毒患者を救ったことは知っていました」
金魚掬いでの一件だな。話が見えてきた。
「なるほど。それで僕らですか」
「はい。一緒に麻湯探し手伝ってくれませんか。中毒の人間がどこにいるかわかりません。中毒にされて麻湯で釣られてしまうとフルブレム商会の水夫でも……」
僕はミリィに言った。
「手伝いますよ。なあミリィ」
「にゃっ。当たり前だよ」
ビーンさんが頭を下げた。
「ありがとうございます。三人で調べれば王都の港につくまでに調べることができるでしょう」
「ところで麻湯ってどんな形なんです?」
「乾燥させた植物片です。それらしい物があったら教えてください」
フルブレム商会は儲かれば人が不幸になってもいいって商会ではないらしい。
やはり商談は何としてもまとめたい。
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