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フルブレム商会の本部に行く旅に出る件

 商会についてはリアもディートもミリィもあまり詳しくはなかったが、ノエラさんはある程度知っていた。話を聞いたことがある。

 フルブレム商会はフランシス王国を中心に活動している昔からある大商会らしい。

 フランシス王国の王都オルレアンは海にも面している。フルブレム商会はそこの海運業で大きな利益を上げていた。

 さらに政治家ともコネクションが強く政商としての側面もあるらしい。

 ただダンジョンの発掘品の取引は陸運業に強いターリア商会にほとんど抑えられているので、ヨーミのダンジョンがあるヘラクレイオンの街への影響力は小さかった。

 そんな話をしながらミリィと盗賊ギルド本部に向かう。


「つまりフルブレム商会はヘラクレイオンの街でも商売がしたいってことじゃないかな? 盗賊ギルドと取引すればその足がかりになる」

「俺は難しい話はよくわかんないよ」

「盗賊ギルドの本当の代表はミリィなんだろ。今日も相手の話を聞いてすぐに決めないといけないことがあるかもしれないよ?」

「にゃ。そしたらノエラに聞く」


 うーん。それでいいのかなあ。

 ただでさえノエラさんは今は僕のベッドでぐっすり寝ているけどオーバーワーク気味なのに。


「いつもノエラさんに頼ってちゃダメだろ」

「そんなこと言ったって……」

「僕も協力するからここはバシッと交渉しよう」

「トオル……ありがとうね。なら頑張ってみる!」


 無邪気で自由奔放なミリィも成長したいという気持ちはあるらしい。

 盗賊ギルドの本部に着く。


「キャット様、こちらです」


 ミリィはギルド員に首領ということは隠しているが、幹部であると認識はされている。

 この辺はミリィを成長させるためのノエラさんのさじ加減かもしれない。

 フルブレム商会の使いの人は応接室で待っているらしい。

 入るといかにも身なりの良い男性が立って待っていた。


「どうも遅くなりました。すいません」

「とんでもない。こちらこそ急な訪問をしてしまって失礼しています」


 僕が遅くなったことを軽く謝罪すると、男性も丁寧に急な訪問に対して頭を下げた。

 地下ギルドの本部にアポなしで乗り込んであまりに堂々としていたので、態度が大きいのかと思ったらそのようなこともないらしい。


「ミリィだよ」

「トオルです」

「私はビーンと申しましてフルブレム商会の相談役をしています」


 なるほど。フルブレム商会のノエラさんのような人だろうか。

 ただノエラさんはやり手という感じだが、ビーンさんからは何かカリスマのようなものを感じる。


「俺は盗賊ギルドの幹部だよ」


 ミリィが自己紹介をする。ビーンさんが僕のほうを見る。


「えっと僕は……盗賊ギルドのアドバイザーみたいな感じですかね」


 ビーンさんが一度大きく頷いてから言った。


「なるほど。可愛らしい猫型獣人のお嬢さんが盗賊ギルドの首領さんで、男性の方はここ最近はじめた様々なビジネスの仕掛け人の方ですね」

「にゃっ!?」

「いっ!?」


 驚きながらハッと気がついた。けれど、その時にはもう遅かった。


「どうしてわかるんだにゃっ!?」


 僕がしまったと顔を手で覆う。

 ビーンさんは声を出して笑った。


「あはははは」

「にゃ? にゃ? どういうことだよ!」


 ミリィがわけがわからないという顔をしていた。


「ビーンさんにカマをかけられたんだよ。そうかもしれないって思ってたことをビーンさんは聞いてみたんだけど、ミリィがそんな風に言ったら確定じゃんか」

「あ、そっか……騙したな―!!!」


 騙したもなにもビーンさんはそうかもしれないという予想を口にしただけだ。

 首領を幹部と騙したのはこっちなのだ。

 ミリィはそれを無視して怒っている。


「盗賊ギルドの首領は誰も見たことがないという話ですからね」

「だから隠してるのにー!」

「はははは。あまりに若くて可愛らしいお嬢さんが幹部として出てきたのでひょっとしたらそういうこともあるのかなと」

「え?」


 若くて可愛らしいお嬢さんと言われてミリィはトーンダウンする。


「申し訳ございません。許してください」

「うーん。許す」

「流石、首領。度量が広いですな」

「えへへ。まあね」


 ……。ミリィは無視しよう。


「すいません。ビーンさん。なんでもフルブレム商会が盗賊ギルドに砂糖を売ってくださるとか」

「ええ。必要な分を融通いたしましょう」

「それは助かるのですが、どうして我々が砂糖を必要としていることを?」


 僕がビーンさんに質問をするとミリィが遮ってきた。


「いいじゃん別に。売ってくれるって言ってるんだから買おうよ」

「お前は黙ってろ~」


 僕はミリィのコメカミの両サイドを拳でグリグリと攻撃する。


「ははははは。ビジネスは情報が全てです。屋台のお店の多くが砂糖を使用していることを調べました。市場で苦労して購入しているのもね」


 なるほど。ありそうなことだ。


「フルブレム商会としては地下層に大きな建物を建築してそのなかに店を集めるという話に資金の供出をしたいと思っています」

「ほ、本当ですか? でも、どうして急に協力的になって頂けたのですか?」


 ミリィがまた口を出す。


「出してくれるならいいじゃんか」

「だからお前は黙ってろって」


 ビーンさんが言った。


「あ、ただいくつか条件が」

「条件?」



◆◆◆



 僕とミリィとビーンさんは乗合馬車に乗っていた。

 フルブレム商会が出した条件はノエラさんと相談しても金銭的にはこちらに有利な条件ばかりだった。

 ただし条件の中に構想の企画立案者とギルドの首領の二人が首都フランシスのフルブレム商会本部に来て商会長と契約を結ぶというものがあった。

 協力的になった理由もそこで話してくれるらしい。

 ノエラさんはミリィの正体を明かせないと反対したが、ビーンさんと商会長は秘密は守るという。

 しかもこれは商会長自らが絶対とした条件だった。


「ノエラさん。フルブレム商会の協力は絶対に必要ですよ」

「確かにそうですが……」


 砂糖のこと一つとってもフルブレム商会の協力がないと成り立たなくなるかもしれない。

 既に僕の懐ライフも0なのだ。地上の大商会が協力してくれれば、日本のアイテムに頼らなくても経営は上手くいくようになるだろう。

 それにミリィの成長のためにも悪い条件ではないように思えた。


「あ、凄い! 船がいっぱい見えてきたよ~」


 馬車の外を眺めていたミリィが叫ぶ。


「その船の一つに乗って首都オルレアンまで行くんですよ」


 僕達の乗っている馬車はヨーミのダンジョンがあるヘラクレイオンから港町マディンに向かっていた。

 港町マディンから船に乗って首都オルレアンを目指すのだ。フルブレム商会は海運業で有名なだけはある。

 ミリィに近づいて一緒に景色を眺める。

 港町は低い場所にあるのでこの街道から港がよく見えた。多くの船も行き交っている。


「楽しみだな~船。乗ったことないんだよね」

「ないのか」

「あんまりヨーミのダンジョンを出たこともないんだ」

「そうなんだ」


 ビーンさんが言った。


「それはいけませんね。色んな所を旅して知見を広げたほうがいいですよ」

「やっぱりそうかなあ~」


 ビーンさんなりの人の上に立たないといけない人の心得だろうか。

 確かにそうかもしれない。


「僕も旅はいいと思うな~」

「トオル一緒に来てくれる?」

「え?」


 ミリィの猫目が僕に近づく。


「一人で行かなきゃ意味ないんじゃない?」

「えーだってつまらないじゃん」


 ビーンさんが笑った。


「別にトオルさんと一緒でも全然構いませんよ」


 ミリィが嬉しそうに僕の腕を掴んでくる。


「ほらほら。ビーンさんもそう言ってるよ」

「わかったよ。たまにならね。あんまりシズクにバイトの代わりしてもらうのも悪いからさ」


 今回の旅はだいぶ日程がかかりそうなのでバイトはシズクに行ってもらうことにした。


「ホント? ありがと、トオル」

「いや~トオルさん羨ましいです」


 僕のほっぺたにミリィが軽いキスをした。

 ノエラさんはどうも僕達が度を越して仲良くなることを警戒している。

 多分、保護者の心境なんだろう。

 ミリィもどうやらそれは感じていたようだ。けれど旅ではノエラさんの目もないので解放されるようだ。

 たまにはミリィと旅するのも悪くないかもしれない。

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