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準備が整いつつある件

 ガチャガチャと音をたててプリンターがフル稼働していた。


「おっまた身体から力が湧いてきたぞ! レベルアップだ!」

「レベルアップおめでとうございます! ご主人様」


 シズクが僕のレベルアップを祝ってくれる。

 プリンターがフル稼働している間もパソコンはクリックマクロで経験値を稼いでいた。


「便利な生活道具に、自動レベル上げ。印刷機械に、白スライム……ここは一体どうなっているんですか?」


 ノエラさんに聞かれたけどこっちのほうが聞きたい。


「絶対、絶対、ぜーったい、盗賊ギルドの面々にもここのことは内緒だからね」


 ディートがノエラさんに言っていた。


「ノエラさんは言わないよ。そんなことよりチラシ、ディートの分の千枚できたよ」

「はーい」


 ディートがチラシの束を受け取る。

 ヘラクレイオンの街の冒険者ギルドに行ってもらってカウンターにチラシを置いてもらうのだ。掲示板にこのチラシを一枚貼る。

 また千枚のチラシが出来た。


「リアー。リアの分も出来たよ」

「はい!」


 リアにもチラシの束を渡す。

 リアには孤児院の子供と一緒にヘラクレイオンの街でチラシを配ってもらうことにした。

 子供達には盗賊ギルドからちゃんとバイト代も出る。

 孤児院の子供達には他の仕事も手伝って貰うつもりだ。


「にゃははははは」


 ミリィはチラシを見て笑い転げていた


「この可愛い絵がノエラ! にゃははははは!」


 ノエラさんが恥ずかしそうに縮こまっていた。

 僕はノエラさんには恩がある。

 世間では一宿一飯ですら恩義があるのに、二揉みいや三揉みぐらい乳を揉ませて貰っているのだ。


――カシャカシャッ


 ミリィをアイポンで撮影した。


「な、なにしたの?」

「ミリィも萌え絵にしてやるのだあ」

「えぇっ!?」


―カシャカシャッ


「ヤダヤダヤダよぉッ!」


 逃げ回るミリィ。アイポンで追い立てる僕!


「や、止めてください! トオル様!」


 ノエラさんに止められてしまった。


「そもそもミリィはモデルに使うわけにはいかないから私がやっているわけで」

「そうだ! そうだ!」


 そりゃそうなんだけど、盗賊ギルドの姫と言ってもノエラさんはミリィを甘やかし過ぎじゃなかろうか。

 そうこうしているとパソコンを見ていたシズクが教えてくれた。


「あ、ご主人様。オークさんと人が来ましたよ。この方が江波様では?」


 監視カメラには江波さんと……監視カメラではオークが誰かまではわからなかった。

 実際に見てもわからないかもしれないが。


「あ、そうみたいだ。トラップを止めて」

「はーい」

 

 シズクがマウス操作してトラップを止める。


「どうも江波さんが七色魚を持ってきてくれたみたいです。ちょっと取ってきますね」


 ノエラさんに挨拶するとミリィも一緒に来てくれるようだ。


「俺も行く」

「助かるよ。じゃあ、そこのダンボール箱を運んで」


 なかには肉以外の食材や調味料など色々詰まっている。

 オークがなにを好むのかわからないから適当に詰め込んだのだ。

 僕が運ぶのはコーラだ。

 解毒効果のあるコーラはゴブリンの吹き矢対策になるだろう。

 鉄の扉のボタンを開けると、現れたのは江波さんと……えっとまつ毛が長いから……。


「江波さん、ジャクリーヌさん!」

「鈴木殿、ミリィ殿も」

「コンニチハ」


 良かった。ジャクリーヌさんで正しいようだ。

 二人は約束通り、七色魚をかなりの数持ってきてくれた。

 ミリィがニカッと笑顔を見せた。


「これで金魚掬いができるね」

「あぁ」


 江波さんもこちらの物資を確認している。


「お、醤油ですか。マヨネーズも! ありがたいなあ!」

「マヨネーズは卵使ってるから大丈夫かなあと思ったんだけど」

「卵なら良いんじゃないんですかね~。コショウだよ! これもありがたいな~」


 やはりオークの菜食主義はいい加減だな。

 ちゃんと守ってくれたほうが、地上の人も安心できそうでいいんだけど。

 まあ今はいいか。


「助かりますよ~」

「本当は異世界で盗賊ギルドが用意できるものと交換したいと思ってるんですが、あんまり時間がなくて」

「私としては懐かしい日本の味を楽しめますので。コーラも助かりますよ」


 コーラがありがたいということはやはりゴブリンとの戦いが激しくなっているのだろうか。

 しかし、こちらはこちらで今はやらなければならないことがある。

 当面は夜店を成功させることだ。


「江波さん、他の奥さんにもよろしく」

「ええ! 鈴木殿も頑張ってください!」


 七色魚を持ってマンションの部屋に戻る。

 ちょうど残りのチラシの印刷も終わったところだった。


「じゃあ地下一層の街にチラシを配りに行こうか」

「にゃ」

「はい」


 僕とミリィとノエラさんは地下一層の倉庫に出た。


「じゃあ打ち合わせ取りミリィは盗賊ギルドの皆とチラシを配ってよ」

「了解!」


 ミリィにチラシの大部分を渡す。

 僕とノエラさんは残りのチラシを持って回るところがあった。

 実は地下一層には三大ギルドに属していない店もある。

 守り代(もりだい)と呼ばれる用心棒代を払っているだけの店、あるいはそれぞれのギルドの支配地区で出店していてもショバ代(場所代)だけ払って所属はしてない店もあるらしい。

 それらの店に回ってチラシを貼ってもらうのだ。

 ついでに盗賊ギルドの支配地区の一部を再開発して、安全に商売できる場所を作るという趣旨も説明していく。

 つまりテナント店舗にならないかと営業するのだ。


 ノエラさんが最初に足を踏み入れようとしたのは女の店員が客と一緒に座って接客していたから日本でいうならキャバクラのような店だろうか。

 呼び込みが剣と盾の入れ墨をしている店だった。


「呼び込みが剣と盾の入れ墨してますよ! 用心棒ギルドの店じゃないんですか?」

「この店は大丈夫です」


 本当だろうか? 盗賊ギルドと用心棒ギルドは勢力争いをしている。

 所属はしてなくても用心棒ギルドに守り代(もりだい)を払っている店だと思うんだけど。


「あっ。ノエラさんいらっしゃい」

「店長さん、景気はどうですか?」

「おかげさまで。そこそこですよ」


 ノエラさんが店長と呼ばれた男も用心棒ギルドの入れ墨をしていた。

 二人は親しげに話していた。敵同士じゃないのか?


「もう既に話は聞いてると思うのですが」

「ああ、知ってますよ。カラフルなテントで夜だけ珍しい店を出すとか」

「はい。それでチラシを貼ってほしいのですが」


 結局チラシは貼ってもらえなかったが、再開発が軌道に乗ったら部下に支店を出させる約束まで、ノエラさんは取り付けていた。

 店を出てノエラさんにどうしてかと聞いてみる。


「この店は用心棒ギルドの息がかかっている店じゃないんですか? 盗賊ギルドは用心棒ギルドと勢力争いしてるんじゃ?」

「実はあの店長も用心棒ギルドに商売の邪魔をされたくないから便宜上、用心棒ギルドに入ってるだけなんです」

「ああ、なるほど。そういうことですか」

「ウチ……つまり盗賊ギルドは他のギルドと関係している店に行ってはいけないという決まりはありませんので、客にもなるんですよ。あの店長も裏では協力的です」

「それならっ!」

「それほど話は簡単ではないんです。結局、あの店がお金を上納しているのは用心棒ギルドですからね」

「なるほど」

「盗賊ギルドは今回の再開発計画が失敗したら商人ギルドと用心棒ギルドに吸収されてしまうかもしれません」

「ぼ、僕の思いつきが……責任重大ですね」

「でも、もし何もしなければ、このままジリ貧でした」

「そうだったんですね」

「だからトオル様には凄く感謝してますよ」

「僕もノエラさんやミリィさんの居場所が残って欲しいから」

「えぇ。絶対に成功させましょう!」


 そのためにはまず夜店で人を呼び集めないといけない。

 そしてフルブレム商会に出資を認めさせ、大型開発を行い、テナント店舗を増やすのだ。

 ノエラさんからおっぱい以上の報酬があるかもしれないしね!

 

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― 新着の感想 ―
[気になる点] マヨネーズは開封後も常温保存ですよ。常温が入っているから可食期限を気にする人が大半ですけど、酢の含有量が適正なら常温長期保存ができます。いまや登山の非常食はチョコレートになりかわりつつ…
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