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いつものお約束の件

 僕達は既にオークの村からマンションに戻っていた。

 本来の目的だった七色魚はオークが届けてくれることになっている。


「じゃあ、私達は行ってきますね」

「はーい。行ってらっしゃい」


 リア、ディート、ミリィは地下一層に行って夜店の準備をしてくるそうだ。

 三人を見送ってダイニングのテーブルに戻る。

 僕はまた各店舗のマニュアルを作りをはじめた。

 隣の席では立石さんが、普段はバイト先の連絡帳の端に活躍させているイラストを描いていた。

 イラストのモデルは盗賊ギルドを実質取り仕切っているノエラさんだ。

 そのノエラさんは向かいでチラシの文言と地下一層の夜店を開く場所の地図を作っていた。

 誰も言葉を発せず黙々と作業している。

 しばらくすると僕の携帯がブーブーと振動する。


『ノエラさんのキャラデザできましたよO(≧▽≦)O』


 ノエラさんらしきイラストの正面、横、後ろ姿。

 立石さんはチラシに入れる絵なのにキャラデザから作ってたのか……。

 しかし、クオリティはかなり高い。

 同人誌即売会でも結構良い線イケるんじゃないだろうか。


「こ、これが私ですか?」


 ノエラさんは自分のイラストというか、デフォルメ絵というか、萌え絵に驚愕している。

 一応聞いてみた。


「これ使って大丈夫ですか?」

「いえ、これはこれで可愛いと思いますし気に入りました。チラシとしての効果は未知数ですけど」

「そうですか。良かった」


 本人が納得してくれるならきっと異世界でもウケるに違いない。

 実際日本の萌え絵は西欧でもウケてるんだから。

 僕達はまたマニュアルやチラシの制作に戻った。

 シズクが足元にやってくる。


「ご主人様~ペットフードが切れちゃったんでダンジョンに行ってきます」

「あ、ありがとー。行ってらっしゃーい」

「はーい」


 僕がマニュアルを作っている間もパソコンは自動レベル上げプログラムが稼働している。

 オーク達は江波さんを通してペットフードが動物性の食べ物だと理解してくれただろう。

 もう江波さんやオーク達が罠にかかってしまうことはない。

 罠の餌切れにシズクが気がついて補充しに行ってくれるようだ。

 僕はできるだけ24時間レベル上げをしてリアやディートに追いつこうと思っていた。うしし。


「ただいま~」

「ありがと~シズク」


 僕はまたパソコンをいじって自動クリックのマクロツールを起動する。自動レベル上げシステムはまた稼働しはじめた。

 そしてまたテーブルに戻ってまたマニュアル作りをはじめる。

 よしりんご飴屋はいいだろう。今度はクレープ屋だ。

 数十分後。


「チラシの文言と地図はできました」

『私も絵できました(*^^*)』


 ノエラさんと立石さんが同時に仕事を終わらせたようだ。


「それじゃあ画像編集ソフトでパパッと二人が作ったものを合成して見本を作ってみようか」

「はい」

『楽しみ(^ー^* )フフ♪』


 とりあえず、パソコンの自動レベル上げを止めて、立石さんが書いてくれた絵とノエラさんが作ってくれた文章と地図を複合プリンターでスキャンする。

 そして画像編集ソフトを起動して萌え絵をチラシに当て込むのだ。

 チラシの文字と地図は異世界のフランシス国文字と地下一層の地図なので、僕が萌え絵をスペースに配置しても正確には文言や地図とあっているかはわからない。


「ノエラさん、この二頭身キャラ絵はここに配置しちゃってもおかしくないですか?」

「はい。良いと思います。それにしてもパソコンっていう機械は便利ですね~」

「ええ。他にも色んなことができますよ。ところでこの指差し確認している絵はここに配置しちゃっても大丈夫ですか?」

「なにか胸が大き過ぎはしませんかね? 私そこまでは……」


 萌え絵はちょっと大きく書くもんだしなあ。けど本人からしてみたら重要な申告に嘘があるような気分かもしれない。

 後ろを振り向く。もちろん僕がパソコンを操作しているのを覗き込むノエラさんがいる。

 結構大きいじゃないか。まあいいや。


「萌え絵の胸の範囲を選択してこうすれば」


 画像の一部を選択して、その選択範囲の大きさを変えるツールを使った。

 胸部を選択して小さくする。


「あ、胸が小さくなった」

「このぐらいの大きさですかね?」

「今度はちょっと小さすぎかも」


 もう少し大きくした。


「あ、大きすぎですかね」


 また小さくする。


「こ、今度は小さすぎかも……」


 だんだん変な気分になってきた。

 パソコンではなく本物をいじりたいと思いつつ、この微妙な調整に30分ぐらいかかった。


「バッチリです。でもこの指差し確認の絵。左向きになってるけど右向きのほうが良かったかもしれませんね」

「左右反転もできますから」

「!」

「じゃあ完成ですね。印刷してみましょう」


 プリンターがガチャガチャと音を立てて紙を一枚吐き出した。


「も、もう出来たんですか?」

「ええ。家庭用複合プリンターで作ったものなのでそれなりだと思いますけど……おお! 良いじゃん! 異世界の言葉だから読めないけど」


 ノエラさんがマジマジと見ている。


「驚きました。パソコンにもプリンターにも。チラシ自体もよくできてると思います」

「よし。じゃあ印刷しようか」


 プリンターがガチャンガチャンとフル稼働しはじめた。ついでにレベル上げの罠もまた稼働し始める。

 

「ノエラさん、立石さん、ありがとう。後は自動でできるから」


 立石さんはどういたしましてと絵文字で伝えて、ノエラさんは深々と頭を下げた。


「とんでもございません。トオル様はすべて我がギルドのためにしてくださってることで。印刷も莫大な資金がかかるでしょう?」

「いや、莫大とか資金ってほどでも」


 異世界では紙も貴重品だし、印刷物となれば、なおさらお金がかかるらしい。

 というか基本人間の手で複写しないといけない。

 日本はもちろん印刷にそこまでお金はかからない。

 が、プリンターのインクはそれなりに高いか。

 もちろん詰替を使ってフルカラーではないけれど一枚10円ぐらいはしそうな気がする。紙代は約0.5円だ。

 3千枚刷るから3万5千円か。意外と莫大な資金かも。

 異世界の文字だ! とはならないだろうけどなんとなく業者には頼みにくいし……。


「そ、そうですか? しかしなにかお礼を……ミリィから金貨は日本でも価値があって換金できると聞いています。金貨ではどうでしょう?」

「確かに価値はあるんですが日本では換金があんまりできないんですよ」


 あの大手買い取りチェーンが日本中でしている換金量に比べたら微々たるものだし、本物なんだから溶かしてまた金のアクセサリーになろうがなんの問題もないんだろうけど、あまりやり過ぎてここがバレるのも困る。


「そうだ。トオル様は女性はお好きですか?」

「え? ええ……まあ好きですけど」

「それならちょうど良かった」

「なにが?」

「先代から私が頼まれたミリィに手を出されるのは流石にどうかと思ってたんです。でも盗賊ギルドにも年頃の女性が結構いますよ」

「いいっ!?」

「盗賊ギルドが経営しているその手の店もありますし。ミリィ以外、誰でも使ってください」

「お、お礼ってそれ?」

「はい。トオル様にはこれぐらいしかお返しできなくて申し訳ありませんが」


 義賊でもやはりアウトロー組織だな。

 その時、僕の頭に電光走る!


「ミリィ以外なら誰でもいいんですか?」

「まあ嫌だと言われれば申し訳ありませんが。でも私がうまく事情を話せば興味を持つ子のほうが多いと思いますよ。お店ならお金のほうはこちらで。トオルさんならちょっと幼い感じがするからきっと大人気ですよ」


 いや、僕が閃いたことは遠いおっぱいではなく、近いおっぱいなのだ。

 さきほど何度も何度も大きさを調整させられたおっぱいが……。

 盗賊ギルドを実質仕切っているインテリ風女性のおっぱい。

 ちょっと年上のおっぱい。


「あの……ノエラさんのおっぱい揉むってアリですかね」

「いいいいいっ!? 私の胸ですか?」

「えぇ……」

「ま、まあ誰でもと言ってしまった手前、私はダメだと拒否するのも。胸ぐらいなら別に」


 マ、マジかよ。アウトロー万歳! 盗賊ギルド万歳!


――ブーンブーン


「はっ!」


 携帯のバイブレーションで立石さんがいたことを思い出す。

 冷たい目で見られていた。


「じょ、冗談に決まってるじゃん」

『アッチヘイケ!ヾ(▼皿▼メ)┌θ☆ドカッ(ノ □ )ノ ゜ ゜』


 ちなみにノエラさんは、後でこっそり「他の女性の前で申し訳ありませんでした」と胸を確認させてくれた。

 アウトローは最高だ。盗賊ギルド入っちゃおうかな。

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