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禁書のダンボールにスライムを隠した件

 ひとしきりブルマと掃除機を装備した女騎士と遊んだ後、また掃除をはじめた。

 軽く汗を流すとディートがいなくなったことで感傷的になった気分はかなりまぎれた。


「ディートさん凄くいい人でしたね。私、知らなかったです」

「僕は最初からわかってましたよ」


 僕とリアは笑顔で掃除と片付けを続けた。


「大分、綺麗になりましたね」

「よーし。もういいですかね。この辺のダンボールはすぐに使わないものだし押し入れに入れときますか」

「禁書と一緒にですか?」

「あーそうそう。あんまり使わないアーティファクトですし」

「私も運びますね」

「いやいや、いいですよ。リアは休んでいて」


 危ない危ない。僕はリアをダイニングに座らせて使わないダンボールを押入れの中に詰め込んだ。


「これで引っ越しの片付けもほとんど終わったな」


 ダンジョンに繋がったマンションに越して来てまだ二日目。

 嵐のような二日だった。

 しばらくはマッタリと経験値を稼ぎたい。

 いやリアル経験値稼ぎはそれほどマッタリしてないか。


 ダンジョンマスターになるかどうかはともかく、自宅とダンジョンが繋がっているからには少しは強くなっていたほうがいいと思うんだよね。

 もしも僕が強ければ彼女達をもっと助けられるかもしれない。

 彼女達を知らなかったら関わりのないことだったけど、僕はもう知ってしまったのだ。

 これもなにかの縁だ。辛い冒険の休憩所として、この部屋をもっと快適に使えるように、僕はもっと知識を身につけたり、強くなってもいい。


「そういえば、タイミング良く鉄の扉が開放されて玄関前の部屋にモンスターが入り込んでるな」


 大型で凶悪なモンスターはディートが魔法で薙ぎ払ってくれた。

 後で雑魚を退治しに行ってもいいだろう。

 もう夕方だから夕食を食べた後にリアとダンジョンに行くか。

 よく考えたら、江波さんが来たり、トンスキホーテに行ったり、ダンジョンで大暴れしたりで、お昼ごはんを食べる暇がなかった。お腹ペコペコだ。


「リア―御飯にしましょう。なにか作るよ」

「あ、はーい。私も手伝いますね」


 リアはあまり料理が上手くないけど一緒にやれば大丈夫だろう。


「今日はなにを作るんですか?」

「そうだなー鶏肉があるからオムライスでも作りますか」

「オムライス!?」

「ふふふ。やっぱり知らないのですか。美味しいですよ」

「すっごく楽しみです」


 リアには難しいことはやらせてはならない。

 とりあえず牛乳を少し加えたとき卵を作ってもらおうかな。

 一応卵の殻が入ってないか横目で見ながら鶏肉と一口大に切って玉ねぎをみじん切りにする。

 フライパンで鶏肉に火を通し、玉ねぎを透きとおるまで炒めて、ケチャップと炊いといた御飯を投入。


「さらに炒めて~チキンライスは完成! もう一つのフライパンにバターはないからオリーブオイルをひいて。リアー! 卵のボウルをください」

「はーい!」

「ここで卵を半熟にできるかどうかが腕の見せどころなんだ!」


 中火で卵の外側を固めてから手早くチキンライスを投入して弱火に卵が固まり切る前にくるっとチキンライスが包まれるようにお皿にのせる!


「おお~! 綺麗!」

「一人分完成! すぐにもう一人分作りますからね!」


 オムライスはチャーハンと違って卵に包む最後の過程は一人前づつ作るしか無い。


「その愛が美味しさの秘密」

「え? なにか言いました」

「あ、いえ、別に」


 料理を作っているとたまに変なことを言ってしまうのが僕の癖だ。


「おばあちゃんに食べて貰いたくて磨いた料理の腕、得と味わえ! よっと!」

「すごーい! また卵がフライパンの上でくるっと! トール様はよっぽどおばあちゃんが好きなんですね」

「あっまた言ってましたか。ともかく食べましょう」


 恥ずかしいなあ。まあリアは気にしてないようだ。


「じゃあ、食べましょうか!」

「はい!」

「「いただきま~す!」」


 僕達は綺麗にいただきますをハモった。


「ん~美味しい~! 涙が出てくるほど美味しいですよ~トロッフワッで!」

「褒め過ぎですよ~お腹が減ってたからじゃないですか。ふふふ」


 そうは言っても上手くできた気がする。

 チキンライスとフワトロ卵のハーモニーがたまらない。   


「これもライスの料理なんですね。トール様はライスの料理がお好きなんですか?」

「好きですよ~。リアは嫌い?」

「大好きです!」

「じゃあどんどん作ってあげるね」

「嬉しいです」

「よかった。ところでご飯を食べたらちょっとダンジョンに」

「ご飯を食べたらお風呂に入ってもいいですか?」


 ダンジョンの話をしようとしたらお風呂に入りたいと言われてしまった。

 しかし行くならお風呂に入る前のほうが……。


「私、スクール水着を着ますから一緒に入ります? お背中流しますよ」

「い、いやそれは……僕は水着ないし、いや探せばあったかな」

「じょ、冗談ですよ。トール様お一人で入りたいでしょう?」


 なんだ。冗談か。

 でも一応、水着を探そうかな。

 ご飯の後に食器を洗ったら、リアはお風呂に入ってしまった。


「どうしようか。一人でダンジョンに行くか?」


 まあ強い敵はいないはずだ。行ってみるか。

 いつものヘッドライト付きヘルメットとピッケルを持ってダンジョンに出る。


「モンスターはっと……いた」


 スライムだ。色は水色。実はさっきも何匹か倒している。

 鉄の扉を閉める、江波さんを助けるという必要があったために必死だったけど、今はそういうこともないので中々緊張する。

 ディートの話では水色のスライムは装備をしっかり固めればレベル1でも負けることはないという。

 特に日本の装備は基本的に能力が高い。

 そっと近づいてピッケルを叩きつけるとスライムは見事にプルンッと四散した。


「ふう。よし!」


 何匹かのスライムを倒す。

 すぐにモンスターはいなくなった。


「もういないのか? レベルも上がらなかったな。あ、でもそう言えば、さっき上がったよな」


 ステータスをチェックしてみよう。


◆◆◆



 【名 前】鈴木透(スズキトオル)

 【種 族】人間

 【年 齢】21

 【職 業】無職

 【レベル】5/∞


 【体 力】26/26

 【魔 力】39/39

 【攻撃力】119

 【防御力】44


 【筋 力】15

 【知 力】26

 【敏 捷】17

 【スキル】成長限界無し 人物鑑定LV1/10



◆◆◆


 お~いいぞいいぞ。少しづつ強くなっている。

 少しどころじゃないか。引越前までは握力40kgが今じゃ60kgはある。

 ん? 『人物鑑定LV1/10』だと!?


「そ、そういえばディートが言っていたな。通常のレベルがあがるとスキルを新しく覚えたり、スキルレベルがあがることがあるって」


 レベルが5になったことで新たに覚えたスキルっぽいな。

 そしておそらく、これもディートの言っていたことだけど他人のステータスや自分の隠れスキルを確認するためのスキルだと思う。

 リアのステータスはまだ知らない。

 機会があったら使ってみよう。楽しみだ。


「ああ! もっと強くなりたい! もっとスライムはいないのか!」


 ダンジョンの大部屋を徹底的に探すが、なかなか発見できない。


「一匹もいないってことはないだろう……そうだ!」


 どこかに一匹ぐらい幼生のスライムがいないだろうか。

 前に小さなスライムを見逃して大きくなったこともあった。

 なら一匹ぐらいは小さなスライムがいてもおかしくない。

 目を皿のようにして探す。


「いた!」


 石床を消しゴムよりも小さなスライムがゆっくりと這っていた。

 しかし、こんな小さいのを倒しても明らかに経験値は低そうだった。


「こいつを大きく育てて倒そう! いや上手く行けば増やせるかもしれないぞ。養殖計画の第一歩だ!」


 たまたまあったトンスキホーテのビニール袋に入れて持ち帰る。

 台所で透明なタッパーを見つけた。


「うん。こいつは丈夫なパッキンもついているしいいだろう」


 水を入れた小皿と野菜くずを入れた小皿も入れる。


「空気穴も開けて……」


 完成だ。それにしてもこのスライム、白いな。


「紫と黄土色のスライムは気をつけたほうがいいって聞いてるから白なら平気かな」


 これをダンジョンで育てるわけだが、なんだかもう少し眺めていたくなる。

 リアは長風呂だからもう少し大丈夫だろう。

 和室で午前ティーでも飲みながら眺めよう。


◆◆◆


 僕は白スライムが形を変えながらタッパーの中を動くのを飽きずに眺めていた。


「うーん。段々と可愛くなってきたぞ」


 可愛いと言うとスライムが嬉しそうにプルンプルンと反応した気がする。

 増々、可愛い。

 段々と倒す気持ちは失せてくる。


「リアに見せたらどう思うかなあ。……ダメかもな。リアはモンスターを恐れてるような気もする」


 多分マヒ毒でダンジョンに倒れたからだと思う。

 でも僕はさっきまでの自分では思いもよらない事を考えている。


「このスライム。養殖って言うよりも飼えないかな?」


 その時、洗面室から誰かが出てきた音が聞こえた。

 リアに決まっている。僕を探すだろう。


「や、やばい! スライムを何処かに隠さなきゃ! そうだ!」


 押し入れの中、さらにリアに厳重に開けないように注意してある禁書(=エロ同人誌)が詰まったダンボールの中にタッパーを隠した。


「しばらく禁書でも読んで隠れててね」


 スライムがプルンと揺れて返事をしたような気がした。

 和室のドアがあく。僕は慌てて押し入れを閉めた。

 ブルマのリアが不思議そうな顔をしている。


「トール様、どうかしました?」

「べ、別に。なんでもないですよ」

「そ、そうですか? お風呂空きましたのでどうぞ」

「う、うん。ありがとね」


 僕はいそいそと浴室に向かった。白スライム早く大きくなれよー。

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