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お金の問題を解決したい件

 僕がリアの掃除姿を眺めているとディートが後ろに来ていた。


「ねね。リアが掃除している間に日本の外に連れてってよ」

「今はダメだよ」

「なんで?」

「リアを独りにできないだろ?」


 納得しないと思ったが、一応は聞き入れてくれたようだ。ふんっとそっぽ向かれたが。

 しかし、確かに同居人が増えたことで、外に行ってもう少し買い物をする必要がある。

 お金に余裕がないからヤバそうな物件でも安いところを選んだのにお金がどんどんかかる。

 これについても考えはあるが、それにはディートの機嫌を取る必要があった。


「ディート。さっき一緒に歯を磨いた洗面所の隣の部屋見たか?」

「ふんっ見てないけど……」

「そこにお風呂があるんだ」

「ホントに?」

「いつでも入っていいよ」

「……ふんっ」


 少し機嫌が直ったようだ。

 もう一押しとくか。


「あの……そのディートのレベルの成長限界を1上げるの後で協力するよ」

「な、ななななななによ。急に。まだ2レベル余裕あるから別にいいわよ!」


 前はしろと言っていたのにこっちからすると言うと拒否られるらしい。

 しかし機嫌は直ったようだ。ニッコニコしている。


「ディート。ちょっと頼みがあるんだけどさ」

「なあに? トオル」 

「ブルマとスクール水着を買ってくれないかなあ?」

「え? そんなこと私の方から頼みたいぐらいよ! でも私の世界のお金なんかいるの? 使えないでしょ?」

「ところが使えるんだな。こっちに来てよ」


 ディートをパソコンの前に連れて行く。


「持ってるお金見せて」

「いいけど」


 ディートは黒革のポシェットから袋を取り出した。五枚しかなかったリアと違ってかなりの量の銀色や金色のコインが出てくる。


「これガディウス金貨って言うんだろう?」

「そうだけど」

「つまり金が使われているってことだ」

「金貨だからね。純金じゃないけど。そりゃそうよ」


 町中で金買取り中という看板をよく見る。

 中古のブランド品やチケットの売買をしている上場しているような企業でもあったはずだ。

 クークルで検索してみる。


「おお! あったあった。グラム単位で引き取ってくれるらしい! きっと金貨も買い取ってくれるはずだ」

「ホント? じゃあいくらでも持って行っていいわよ。正直、スクール水着やブルマ並の防具屋やアーティファクトを買おうと思ったらこれ全部でも足りないぐらいだから。というか非売品で闇オークションでもないと買えないわね」

「ブルマが闇オークション……。いや、どっちもその辺に……は売ってないけどトンスキホーテになら安く売ってるものだから。三種類の金貨を一枚ずつぐらいもらうね」


 ディートに金貨の価値を聞くとこんな感じだった。

 まず、もっとも大きくて価値があるのが白金貨とも言われるバーンズ記念金貨。珍しい金属が混じっているらしい。

 次に大きい金貨が帝国金貨。イグロス帝国という帝国で使われる金貨らしい。権威付けのためか大きい。

 ガディウス金貨が一番小さい金貨だ。普通、金貨と言ったらコレらしい。商業国ガディウスが発行している非常に小さな金貨で模様等はないが、常に一定の純度であることを保証しているとか。

 つまり白金貨→帝国金貨→金貨となってさらにその下に銀貨→銅貨と続き、大体十倍ずつ差があるようだ。


「本当に買い取ってくれるかわからないけど買い取ってくれたらバイトしないで日本の物資を向こうの世界に売るだけで生活できるかもな」

「私達の世界に住んだら?」

「そしたらマンションの家賃が払えない」

「ああ、そうね。ダンジョンを攻略するための休憩所にするにしろ、変わったアイテムを手に入れるにしろ、パソコンで罠を張るにしろ、ここがあるからいいのか」

「それに日本の生活もなかなかだろ? 僕は捨てがたい」

「確かにフルーツグラノーラは美味しいし、畳も良かったわ。パソコンも楽しそうね」

「そんなのまだまだだよ。とりあえず、日本のお風呂に入ったら? リアと一緒に入るといいよ」

「リアに?」

「教えて貰わないと使い方がわからないだろ。僕はその間に買い物に行ってくるから」


 僕は笑ってリアに声をかける。


「リアー」

「はーい。なんですか?」

「ディートと一緒にお風呂に入ってあげてくれないかな」


 ディートが反論する。


「ちょっちょっと! 一人でも大丈夫よ!」

「わかりましたー。はいはい、ディートさん教えてあげますからね。脱いで脱いで」

「ちょっやめて。一人でできるから」

「間違えると大変なことになりますから。私なんかキャーってなってトール様に助けてもらったんですから」


 もう少し様子を見てみようかなと思ったが金貨の換金も気になる。

 後ろ髪を引かれながらも窓から日本の街に出ることにした。


◆◆◆


「金高額買取中! 重さで査定します」


 なんか緊張するなあ。店内に入るとより詳しく買取額が書いてあった。

 なるほど。含有量でも買取額が変わるのか。

 ネットでもそんなことが書いてあった。

 お姉さんに声をかける。


「すいません。金の買取査定をお願いしたいんですけど」

「そうですか。それではこの書類にご住所とお名前を書いてください。身分証は持っていますか?」

「免許証ならありますよ」


 無理してとった自動車免許がある。もちろん車はない。


「はい。それで結構ですよ。お品物は」

「これなんですけど」

「え? 随分大きな金貨もありますね。みたこともない……」

「いやー多分、金貨じゃないんじゃないかなあ。おばあちゃんの蔵から出てきたものを貰ったもので」


 ダンジョン側の世界は金貨に意匠を凝らすだけで文字も数字も打たない文化のようなので、彫刻されたメダルだと主張した。どこかの通貨や史料的価値があると思われると買いとってくれないかもしれない。

 お姉さんはその場で分厚い金貨のカタログを取り出して照合する。

 実はネットで調べたところ、金は値段の内外価格差があるため、外国人の人がよく売りに来るらしい。

 まあ関税を払わないで空港で捕まったりする人もいるらしいが、金を買い取ってもらうこと自体はもちろん合法だ。


「確かにどの国の金貨や通貨にも該当しませんね。ではそういった価値ではなく、含有量と重さで買い取らさせていただきます。少々お待ちください」


 やった! やった! どんな出自のきんでも儲かればいいのかもしれない。

 店側が責任を負うこともないだろうしね。

 待つこと三十分後。


「この小さなメダルが九千四百円です」


 なんの彫刻もないガディウス金貨は約一万円か。ドキドキしたのに割に合わないかもしれない。


「この人間の意匠が入ったメダルは」


 帝国金貨か。初代皇帝の顔が入っている。


「九万七千円で買い取らさせていただきます」


 や、約、十万円?


「マジっすか?」

「ええ。さらにこの一番大きいメダルはプラチナの金メッキのようで」


 プラチナは金より高いんじゃないか。

 しかも他のものよりも断然大きい。


「ウチでは調べないとすぐには買い取れないですね」


 マ、マジかよ。向こう側の世界では10倍づつ値段が上がっていくって言ってたし、金貨と帝国金貨は10万円差だったから100万円ぐらいなんじゃないか。


「では小さいのと中くらいのを買い取らさせていただいて、この大きいのは預り証を出しますので後日ということでもいいでしょうか?」

「い、いえ。すいません。この一番小さいのだけお願いしてもいいですか? 今度また持ってくるかもしれないので」


 僕は慌てて店を出た。手の中には九千四百円があった。


「とりあえず九千四百円になったぞ」


 なぜガディウス金貨だけ換金したかというと、この金貨はほとんど意匠がなくて本当にただのメダルに見えるのだ。

 大量に持ち込むと皇帝の顔などが彫られた金貨は歴史的史料価値があると思われるかもしれない。

 最悪盗掘品だと思われる。


 なら日本での換金はただの金メダルであるガディウス金貨だけにすればいい。

 それじゃあ一万円ぐらいにしかならないって?

 僕は白金貨を空中に投げてキャッチして笑う。


「ふふふ。この白金貨は、ダンジョンを抜けて地上に出れば、街でガディウス金貨百枚に両替できるんだったよね」

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