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女騎士と女魔法使いも働きたい件


「大丈夫かなあ」

「きっと大丈夫ですよ」


 僕はもう自分の部屋に帰っていた。

 シズクを抱きながらミリィを心配する。

 僕は閉店までいるつもりだったけど、あれからどんどん混んで入れないお客が増えていった。

 そこで多くのお客さんに楽しんでもらうために承知してくれるお客には二時間制にしたようだ。

 もっともミリィが頼むとポニーさんもバンダナさんも指空き手袋さんも納得して帰っていった。


「ただいまあ~」

「あ、おかえり~」


 ミリィが帰ってくる。


「あ~楽しかった」

「ど、どうだった? 大丈夫だったか?」

「大丈夫ってなにが?」

「お店に迷惑かけたりとかしなかったか?」

「なんで迷惑かけるのよ~。働いてきたんだよ。店長もめちゃくちゃ助かったって言ってたよ」

「う、うーん」


 本当だろうか。

 ミリィは日本人とも一般人とも感覚がズレてるしなあ。


「俺のコスプレっていうのも大人気だったんだから」

「それはコスプレでも何でもないじゃないか」

「猫耳がよく似合ってるって」

「う、うーん」


 ますます怪しい。

 しかし、同席したポニーさんやバンダナさんや指空き手袋さんは大いに満足していたことも確かだ。


「さて私はお風呂入ってもう寝るよ」

「え? 僕の部屋に泊まるの? まあいいけど」

「明日もメグメルに行くからね」

「な、なんだって?」


 僕が問い詰める前にミリィは服を点々とお風呂場まで脱ぎ散らかしていた。

 今日は立石さんも久野さんもレストランのメグメルで働いていたが、明日から来ないはずだ。

 だから開店と告知していた今日だけ営業してしばらく休むはずでは無かったのだろうか。

 やはり店長に電話するか……。でも怒ってないだろうな。

 少しだけビビりながら店長に電話する。


『あ~鈴木くん。今日は店に来てくれてありがとう』

『あ、いえ。開店おめでとうございます』


 店長の声は明るい。

 何も問題無かったのだろうか。


『それよりミリィちゃんのことだけどさ』


 や、やっぱりダメかぁ。


『す、すいま』

『本当にいい子を紹介してくれてありがとうね』

『え?』

『えってどうしたんだい?』

『いやその……ご迷惑をおかけしませんでしたか?』

『迷惑だなんてとんでもない。仕事は早いし』


 ほ、本当か?

 客を相手してサボってるようにしか見えなかったが。


『仕事を覚えるのは早いし』


 オーダーをほとんど間違っていた気がするが、他のことは覚えているんだろうか。


『なによりお客さんに好かれるしね』


 お客さんに好かれることは同意できるか……。

 それよりも。


『ところで明日もお店開くんですか?』

『うん! ミリィちゃんが明日からも開けるようにしてくれたんだよ!』

『ど、どういうことですか?』


 さすがに立石ささんや久野さんが居なかったら店が回せないんじゃないだろうか。


『店にお客で来たコスプレ好きの女の子たちをミリィちゃんが店員にスカウトしたんだよ』


 マ、マジか。

 なんというコミュ力。


『でも、さすがに研修も何もしてない人じゃ戦力にはならないんじゃ?』

『うん。だから店が終わった今もそこの子たちに教えてるんだ』


 なるほど。それなら店を開けるかもしれない。

 そして今も教えているなら電話は早めに切ったほうがいいだろう。


『じゃ、じゃあ電話切ったほうがいいですよね』

『ごめんね。ミリィちゃんを紹介してくれて本当にありがとうね。じゃあまた』


 店長との電話を切った。

 ちょうどミリィがバスタオル一丁姿でお風呂から出てくる。


「ふ~いいお湯だった。さてと少しだけテレビを見たら早めに盗賊ギルドに帰って寝よっと」


 きっと明日も開店前からメグメルに行って準備するんだろうな。


「ミリィ。今日はうちに泊まっていけば?」

「にゃ!? トオルが泊まっていけなんていうの珍しい」

「そ、そうか?」

「うん。いつも帰れ帰れっていうのに」


 あんまり自覚は無いけど言っていたかもしれない。


「どうせ明日も早く店に行くんだろ? 準備したり、女の子たちを教えたりさ」

「にゃ。うんまあ……」

「さあさあ」


 ミリィをベッドに押す。


「俺は肩を揉むから、シズクは腰を揉んであげて」

「はーい!」

「ト、トオル何か変!」


 これなら店長の店も上手くいくかもしれない。


◆◆◆


 メグメルは開店してから一週間経っていた。

 僕は相変わらず、領主としての運営に大忙しだった。

 領主としての仕事が忙しくて店には一度も行っていないが、ウェイトレスはミリィの天職だったらしい。

 友達になったポニーさんやバンダナさんや指空き手袋さんが、毎日ライメでミリィや店の様子を教えてくれた。

 彼らともまたメグメルで会いたいなと思いながら、ダンジョンから僕の部屋に帰る。

 いつもの鉄のドアを開けた。


「ただいまあ」

「「「おかえりなさーい!」」」


 いつものシズクのおかえりなさいだけではない。


「リア? ディート?」


 僕が盗賊ギルドでダンジョンの領地経営から帰ってくるとリアとディートがいた。

 最近リアは孤児院の子どもたちの面倒を見たり、ディートは魔術の研究をしたり、よく分からないけど、僕の部屋には来ていなかった。

 急にどうしたんだろう。

 二人はニコニコと笑っている。

 何となく嫌な予感がする。


「トール様、私もミリィさんのように日本のレストランで働きたいんですけど」


 リアがとんでもないことを言い出す。


「えええ? ミリィは借金があるから働いてるだけで別にリアが働く必要は……」

「私たちも日本のお金が欲しいのよ」


 な、なるほど。

 ディートの発言でリアが働きたい理由は分かった。

 ん?


「ちょっちょっと、待て」

「ディートも働きたいの?」

「そうよ。いいでしょ」

来週もよろしくお願いします。

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