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店長がリストラされそうな件

 ファミレスのアルバイトから帰宅して玄関のドアを開ける。


「ただいま~」

「おかえりなさ~い。ご主人様」


 僕は倒れ込むように和室の畳の上でうつ伏せになる。

 シズクが寄ってきて優しく肩を揉んでくれた。

 スライムマッサージは最高だ。


「肩がすご~く凝ってますよ」

「ううう。シズクありがとう。超気持ちいいよ」

「ライラ様のお勉強をずっとしてから、お仕事ですからね」


 あの晩餐会の後。金髪縦ロールの貴族令嬢ライラはすぐに地下の盗賊ギルド本部にやってきた。

 寝る間も貰えずに領地経営のイロハを教えて……いや、叩き込んでくる。

 それだけ詳しいなら君がやってくれと言ったが、「人任せにできるのは領主が自分で領地経営ができるようになってからだ」とライラはさらにスパルタ教育になってしまった。

 正論なので反論はできない。

 反論する代わりに地球側の僕の部屋に逃げたというわけだ。

 そもそもファミレスのバイトがあったしね。

 きっと今頃、「どこに逃げたんですか!」と怒っていることだろう。

 僕が部屋に逃げるといつもそう言って探しているらしい。

 この部屋の秘密を知っている誰かが話してしまいそうだ。

 リアは正直者だし、ミリィは罪悪感なく言ってしまいそうで怖い。


「携帯で写真撮ってあげたときとか女子高生みたいだと思ったんだどなあ」

「でもライラ様には助かっているんじゃないですか?」


 シズクの言うとおりだった。

 僕はヨーミのダンジョンを領地に持つ伯爵になったのだが、領地経営など右も左もわからない。

 ブラン領を立て直したというライラが教えてくれるのは助かった。


「助かってるよ~ヨーミのダンジョンは領地として特殊だし」

「そうみたいですね。ご苦労さまです。ご主人様っ!」


 シズクが僕の肩を揉みながら相槌をうってくれる。

 ヨーミのダンジョンは他の領地とは状況が違った。

 ともかく税金の取り立てが大変なのだ。

 ライラによれば異世界のフランシス王国では農地からの地税が普通だった。

 つまり土地の大きさによって農民が税金を納めているスタイルだったのだ。

 しかし、ダンジョン内の土地は農作業に使われているわけではない。

 地下一階の土地に勝手に住んでいるアウトローたちが店を開いているだけなのだ。

 店はそれぞれ盗賊ギルド、商人ギルド、傭兵ギルドという地下ギルドにみかじめ料を払うというスタイルで成り立っている。

 急に地下ギルドにみかじめ料を払わずに領主に払えと言っても、地下ギルドも商店も大反発するだろう。

 地下ギルドは争い合ってもいたが、治安維持を担っていた面もあった。

 いずれは盗賊ギルドをはじめとする地下ギルドの治安維持機能とみかじめ料の徴収をヨーミ領の行政組織に変えられるかもしれないが、すぐには難しそうだった。

かといってダンジョンで農作をしていたモンスターに税金を払えとも言えない。


 ライラと相談したところ、すぐに税収を確保できそうな道は冒険者からの収入だった。

 冒険者からの収入といっても冒険者から直接取るわけではない。

 そんなことしたら、やはり反発されるに決まっている。

 実は冒険者は既に税金を取られているのだ。

 冒険者ギルドのクエストの報酬は依頼代が丸々払われるわけではない。

 例えば、薬草の採取を銅貨10枚で依頼したら冒険者の報酬は7枚、ギルドの手数料は1枚、残りの2枚はヘラクレイオンの街の領主のものとなっている。

つまり2割は税金なのだ。

 ヘラクレイオンの冒険者ギルドのクエスト依頼のほとんどがヨーミのダンジョンが関わっているものだから税収はかなりあるはずだった。

 半額でもダンジョン側、つまりヨーミ伯の僕に払ってくれればと考えているのだけど。

 そんなことを考えていると立石さんからライメが来た。


『トオルさん、今お時間ありますか?(T_T)』


 泣きマークだ。なんだろうと思って返信する。


『どうしたの?』

『今、久野さんと瀬川さんと私でフムフム中部の喫茶店べローティエにいるんです。トオルさんも来てくれませんか?』


 ファミレスのバイトで仲の良いメンバーが集ってどうしたんだろう?

 べローティエか。立川駅北口にある商業ビルのフムフム中部で営業している喫茶店だ。


『すぐ行くね』


 そう返事をしてから、シズクに言う。


「肩揉んでくれてありがとう。もういいよ。出かけてくるね」

「帰ってきたばかりなのにまたお出かけですか?」

「うん。バイトの友達に急に呼ばれてさ」

「はーい。行ってらっしゃい」


 部屋を飛び出して商業ビルのフムフム中部に向かう。

 家からの距離は近い。十分も歩けば、到着した。


「お、鈴木くん。こっちこっち~」


 喫茶店に入るとよく通る大きな声で声で久野さんが呼びかけてくれた。

 この喫茶店は先に注文したものを自分で運ぶスタイルだ。

 恥ずかしいなあと思いながらアイスコーヒーのLサイズ二百三十円なりを持ってみんなが座る席についた。


「急にみんなで集まってどうしたんですか?」


 いつも元気な久野さんが少し眉を八の字にして笑う。

 女好きの瀬川さんもいつもと違って真面目な顔をしている。

 立石さんはいつものクールビューティーだ。見た目だけ。

 久野さんがさらりと答えた。


「いや~実は店長がファミレスをリストラされちゃうみたいなのよ」

「え~~~店長がリストラ???」

いつもありがとうございます。

少しだけ地球編をします。

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