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打ち上げパーティーに力士と侍が来た件

 人間とオークの負傷者は薬草で治療している。倒したゴブリン達は縛り上げられているだけだ。

 けれども冒険者の一部はゴブリンを殺そうと息巻いていた。


「捕虜のゴブリンは許してあげようよ」


 僕が説得しても冒険者はあからさまに納得してない顔をした。

 しかも、ぐずぐずしていると六層のゴブリン村から捕縛したゴブリンを助けに援軍が来るかもしれないのだ。

 ここ六層はゴブリンにとって、あくまでただの麻湯の畑と製造工場があるだけで、本拠の村は五層にある。

 僕は主要メンバーを集めた。


「もう捕まえたゴブリンは皆逃しちゃうか」

「「えええ?」」


 リアやディートが驚く。


「だって考えてもみなよ。畑も工場ももう使えない。アイポンで証拠の画像はとった。最低限の仕事はしたんじゃないかな」


 ディートが言う。


「でも、ゴブリンは人間を襲うし、オークとも戦争してるわよ」

「ゴブリンはゴブリンが生きるためにしてることだろ。もちろん分かり合えるのが一番良いけれど」

「う、うーん。江波はそれで良いの?」


 ディートがいつもは無視している江波さんに聞いた。


「ごっつぁんですよ。これで商人ギルドからゴブリン達に武器が供与されることは無くなるわけだし、八百長無しのガチ相撲ならオーク戦士が負けるわけはありません」


 もう江波さんは人間なのかオークなのか力士なのか戦士なのかわからなくなっていた。

 ただゴブリンの捕虜を解放することには賛成してくれたようだ。


「そういう訳なんでゴブリンザムライ。君の縄だけ解いていくから僕達が去ったら他のゴブリンも解放してやってくれ」


 ゴブリンザムライは僕を助けようとしてくれたし、縄を解いたらすぐに暴れるということもないだろう。


「……ソレデイイノカ?」

「このままだと皆熱くなって間違いを犯しかねない」


 僕はゴブリンサムライの縄を緩めてから冒険者達に言った。


「わかった! ゴブリンの捕虜は僕とディートで焼く!」


 冒険者達がどよめく。

 急にそこまでしないでもという意見も出てきた。


「皆は先に安全なオークの村まで逃げてくれ。早くしないとゴブリン村から捕虜達を助けに応援が来るかもしれないぞ」


 冒険者達はすぐに帰る準備をはじめた。

 リアと江波さんに彼らのことを頼む。

 冒険者達は慌てて去っていく。


「さて、僕らも帰ろうか」

「うん」


 ディートと帰ろうとするとゴブリンザムライに呼び止められた。


「キデンノナヲオシエテクレ」

「キデン? ああ、貴殿の名を教えてくれか。僕はトオルだよ」

「トオルカ、オボエテオク。マタアオウ」

「ああ、また」


 ゴブリンサムライに手を降って帰る。

 僕とディートは一旦オーク村に行ってから、部屋のショートカットを使って今度は冒険者達より先に地下一層に行った。

 スラム街は騒動があった様子はあったが、もう落ち着いていた。

 盗賊ギルド本部でミリィを見つける。

 事の顛末を話した。


「にゃ。ゴブリン逃がしちゃったの?」

「ご、ごめん。でもちゃんと畑と工場は使えなくしてきたよ」

「参ったな~」

「ひょっとしてテシオ達も逃げられた?」

「いや、そっちと同じで捕まえたんだけどね。テシオはしらを切り通しているらしいんだ」


 そもそも状況証拠しかないから、ゴブリン達に商人ギルドとの繋がりを吐かせようとしたのだ。


「そうだったのか。ゴブリン逃がしちゃったの失敗だったかな……」

「まあトオルにはゴブリンを捕まえて吐かせるなんて向いてないよ。トオルにはトオルのやり方があるって」


 凹んでいるとミリィが慰めてくれた。


「俺達ができることは終わりだよ。後はビーンさんに任せるしか無いにゃ」

「そうだね」


 完璧とはいえないまでも、地下ギルドの一斉検挙と麻湯の供給源を断つ作戦はほとんど成功して幕を閉じた。


◆◆◆


 一斉作戦の日から数日が経っていた。

 ゴブリン達は人間やオークに復讐にも来ずに大人しくしているらしい。

 僕の部屋でシズクとゲームをしているとミリィがやってきた。

 早速、ビーンさんが一斉作戦の顛末を伝えに来てくれたらしい。

 僕はシズクを着て、盗賊ギルド本部に向かった。

 ギルドの会議室には既にノエラさんとリアとディートもいた。


「やあ。トオルさん、お久しぶりです」

「お久しぶりです」


 ビーンさんは既に皆には顛末を話していたようだが、僕にも話してくれた。


「え? テシオ達は近々、釈放されてしまう?」

「はい。申し訳ない。傭兵ギルドのソロッツォは他の余罪が沢山ありますから50年は臭い飯を食わせられますが、黒幕のテシオはやはり決定的な証拠がなく」


 いつも自信満々といった様子のビーンさんが小さくなる。

 ビーンさんの話によれば、テシオだけでなく、麻湯で稼いでいる陸運で有名なターレア商会や大臣まで累が及びそうになったことで罪を問うのが難しくなっているのだという。

 どうやらビーンさん達は彼らを倒すよりも、今目の前の麻湯を広げないようにしていることがわかった。 


「仕方ないですよ。ビーンさん」


 それに奴らの権益は大分減って活発な活動するためには随分かかりそうだ。


「後はビジネスで勝ちましょうよ。少なくとも資金源でもあるヨーミのダンジョンの麻湯のルートは潰せたわけだし」

「そうですね」


 ビーンさんが帰っていく。


「まあよかったよね」


 やや好戦的なリア・ディート・ミリィは納得してくれなかったが、ノエラさんは同意してくれた。


「作戦成功のパーティーでもしましょうか!」


 ノエラさんがパーティーというと納得してなかったはずの三人が真っ先に色々な注文を出す。


「私はピザが食べたいです」

「お寿司がいいわ。お寿司が!」

「トオルが作ってくれるすき焼きがいいにゃ」


 またお金が飛んで行くけどいいか。


「はいはい。それじゃあ僕の部屋でやるしかないじゃないか。ノエラさんも来ますよね」

「いいんですか?」

「もちろんですよ」


 僕の部屋に皆が集まっている。

 立石さんも来ていた。ありがたいことにすき焼き用の大量の牛肉を持って。

 お寺には檀家から結構食べ物が送られてくることがあるらしい。

 しかし、仏門に牛肉って良いんだろうか。

 そんなことを考えながら僕がすき焼き用の野菜を切っているとシズクがやってきた。


「トオル様!」

「うん? もうピザ屋さん来た? それともお寿司屋さん?」 


 手を拭いて財布を取りに向かう。


「いえ、ダンジョンのほうに江波さんとゴブリンサムライさんが来てるみたいで」

「えええ?」


 パソコンのモニターを見るとゴブリンサムライが確かに写っていた。

各所で売り切れになっていたコミック版1巻の重版分が書店等に入っているようです。ずっとなかったWEB書店の在庫も復活してました。

無料のWEB漫画から是非見てください。


新作も面白いと思いますのでブクマしておいて暇な時に見ていただけると嬉しいです。

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