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地下ギルドの会合

 僕は次々に地下スラムの独立系の店を説得していった。


「よーし! ヨーミポーション、アリス魔石屋、食料品店テス、アルの矢じり屋……」

「鈴木さん。こんな才能があったんですね」


 立石さんがビックリした顔をしていた。


「いや~僕じゃなくてフルブレム商会の名前の力が大きいんだよ」


 政商でもあるフルブレム商会の名前の効果は絶大だった。

 そもそも地下スラムの商店は、いずれかの地下ギルドに守り代を払っていても、非常に不安定だ。

 お上に目をつけられたら、即営業停止になる場合もある。

 国からは非公認である地下ギルドは、そのような時になんの役にも立たなかった。


「でも鈴木さんだからそれに思いついたんですよ」

「そうかなあ」

「リアさんやディートさんやミリィさんは全然ダメだって話だし」

「そりゃ僕のほうがデパートとかショッピングモールを知っているもの」


 ノエラさんから貰った誘致に参加しそうなお店のリストは終わったので、報告しに一旦盗賊ギルド本部に向かう。

 本日のロビーではディートがソファーでだらけていた。

 ディートも誘致の説得に行ったはずだが、あの調子ではきっと。


「あらトオル? なにしてんの?」

「僕達も誘致のせっとくに来たのさ」

「あーそうなんだ。全然ダメだったでしょ」

「そんなことないよ。貰ったリストはほとんど」

「えー!? 嘘でしょ? リスト見せなさいよ。どの店が承知してくれたの」

「ヨーミポーション、アリスの魔石屋とか」


 リストと地図を見せながら承諾してくれた店を指差す。


「えええええ! アリス魔石店も? 私常連だから行ったのよ! 断わられたのに!」

「ちゃんとフルブライム商会が出資していること話した?」

「……話してない」

「地下スラムの店からしてみればフルブレム商会の後ろ盾とか喉から手が出るほど欲しいでしょ。それを説明しなきゃ」

「う~。そういうことは先に教えてよぉ~トオルゥ~。リアとミリィと賭けちゃったのよ」


 なんのことだろう?


「賭けた? なにをさ?」

「やばっ」


 ディートが口を抑える。怪しい。


「なにを賭けたんだ?」

「知らなーい」


 どうやらディートは誤魔化すつもりのようだ。

 僕はこんな時のためにシズクと普段から対策を練っていたことがあった。


「シズクっ!」

「は、はい! ご主人様!」

「え? シズク? いるの?」


 号令と共に僕の革鎧は瞬時にアメーバ状に形を変わり、その勢いでディートに覆いかぶさった。


「な、なにっ!? あんっ!」


 シズクはディートの革の服の間にするんと滑り込んだ。ふふふ。


「えっちょっとやだぁっ! あ、あぁんっ」

「シズクやれ。くすぐりモード弱だ!」


 ディートのピッチリした黒革の服の脇腹部分がうねるように波打つ。


「あ、あひゃ。シズクちょっとやめなさ、あははは」

「ごめんなさーい……ご主人様の命令は絶対なんですぅ~」

「さあ、吐け! 早く吐いてしまうのだ!」

「あはははは!」


 ディートはそれでも言わなかった。


「くすぐりモード強」


 ディートの脇腹が見えないほど振動していた。

 涙を流している。


「あははははははは! 言うっあははは。言うって! 勝ったらトオルの部屋を使えるの! あはははははは!」

「え? 賭けなくたって僕の部屋なんて皆で使えばいいんじゃないの?」

「あはははは! それじゃトオルと二人でいれなははははは! えっちなこともできないじゃなはははは! 私だけしてないのにあはははははは!」


 ううう。僕は感動していた。


「あははははは! やめてあははははは!」


 ディートがこんなにも僕のことを思ってくれていたなんて。

 くすぐりモードじゃないほうがよかったかな?


「ストップシズク!」


 シズクはディートから離れて僕の上半身を再び革鎧になって覆った。

 床で横になるディートを抱え上げてソファーに寝かせた。

 僕は颯爽と盗賊ギルドの奥に入っていった。

 クールビューティーの立石さんの目が僕を睨むジト目になっていた。


「すいませーん! トオルでーす」

「あ、はーい。どうぞー」


 ドアの向こうにはノエラさんがいる。膨大な書類に埋もれていた。


「説得してきましたよ」

「あ、ありがとうございます。何店鋪ぐらい応じてくれましたか?」

「数店鋪除いてリストのほとんど全部」

「えええええ? 本当ですか? 実質的に首領の私が出向いたときよりも成功率が高いですよ」

「えへへ。いやまあ」


 盗賊ギルドの代表者に、盗賊ギルドの名前を出すよりもフルブレム商会を前面に出して説得したとは言い難かった。


「これだけの店鋪が入ってくれれば、最低限のものはそろうショッピングモールができますね。それぞれのお店の常連さんも来ていただけるでしょうし。本当にありがとうございます。トオル様」

「いえいえ」


 また、クールビューティーの立石さんの目が僕を睨むジト目になっていた。

 ところが急に立石さんは踵を返してノエラさんに詰め寄った。


「な、なんでしょう?」

「お店のリストをください!」

「へ? どうして?」

「リアさん達がお店を説得した数で鈴木さんの部屋を使う順番を決めてるそうなんです!」

「えええ?」

「いいから早く!」

「ではこれを……」

「ありがとうございます!」


 立石さんは大喜びで地下スラムに向かっていった。


「ちょ、ちょっと! 一人でいったら危ない!」


 僕が立石さんの後を追おうとすると腕を掴まれる。


「ノエラさん」

「まあまあ。安全な地帯のリストを渡しましたから。おいっ!」


 ノエラさんが「おいっ!」と声をかけるとすぐに部屋に男が入ってきた。

 盗賊ギルドのギルド員だろう。


「今、飛び出た少女は?」

「護衛をつけてます」

「よろしい。絶対に危険にさらさないように」


 すごい迫力だ。

 ノエラさんはインテリ美女かと思っていたが、やはり非合法な地下ギルドの代表の代理だった。

 部屋からギルド員が出て行く。


「ところでトオル様」

「は、はい?」


 ノエラさんに話しかけられる。僕は少しビビっていた。


「私はミリィ達よりずっと説得した店の数が多いですけど、一番にトオル様のお部屋に行ってもいいんですよね?」

「え? いや、まあ……」


 マジか? 嬉しいような、怖いような。

 戸惑っているとノエラさんは笑いだした。


「やだ。冗談ですよ」

「あ、そうですよね」


 ほっとしたような、残念のような。 


「代わりにちょっと付き合って欲しいところがあるんですけど」

「ど、どこですか?」

「実は地下ギルドの代表が集まる会合が今夜ありまして」

「え? どうして僕に」


 ノエラさんの話によればこういうことだった。

 どうやら地下ギルドはなにか議題があると集まってそれについて話し合いをしているらしい。

 いつもはノエラさんが秘書のポーリーさんと一緒に行っているらしいのだが、今日は体調を崩している。

 今回の議題はモールについての話を傭兵ギルドがしたいという申し出なので僕と一緒にいくとなにかと説明がしやすのではないかということだった。


「トオル様は交渉力もありますし」


 会合の場所はヨーミのダンジョンを管理している冒険者ギルドだった。

 どのギルドも代表者とお連れは一人のみということで危険はないとのこと。

 とりあえず明日はバイトもない。


「なるほど。そういうことならお供しますよ」

「ありがとうございます! 二人旅ですね! 頼りにしてますよ!」

「え? 冒険者ギルドまでは大人数って行ってもいいんじゃ?」

「ヨーミのダンジョンから出たら二人でいかないといけないという約定を結んでいるんです。ほら冒険者ギルド前でギルド員同士がイザコザになっても困るでしょ」


 な、なるほど。


「さっ。ミリィ達が戻ってくるとうるさいから早く行きましょう」

「ロビーにはディートが寝てるかも」

「じゃあ裏口から」


 僕はノエラさんとヨーミのダンジョンの地上の街ヘラクレイオンの冒険者ギルドに向かった。

更新遅れ気味ですいません。

11月に書籍版の三巻、コミックの一巻が同時に発売される予定です。

TVCMも放映されています。詳細は活動報告にて。

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