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シズク・オブ・ザ・デッドな件

 リアはホテルのベッドで、すやすやと寝ている。

 僕とシズクはホテルの無料サービスの映画を小さな音で見ていた。


「あはははははは」

「楽しいですね」


 見ている映画はナロウ・オブ・ザ・デッド。

 ちなみにゾンビ映画は怖がる映画ではなく笑って楽しむ映画というのが僕の持論である。

 ナロウ・オブ・ザ・デッドは特にその傾向が強いようだ。

 売れない小説家が引きこもって小説を書いていたら知らぬ間に日本中がゾンビだらけになっていたというところからはじまる。

 小説家は少し頭がいかれていて地震のようにいつかはゾンビ災害が起こると思い込み、あらゆるゾンビ対策をしていた。

 今は食料を求めながらゾンビから逃げる途中で出会った高校生達と何処に隠れようと相談していた。


「トンスキホーテに逃げるみたいだ」

「ご主人様とシズクがよく行くお店ですね」

「この主人公はよくわかってるな。トンスキホーテなら武器も食料も生活必需品もあるし、ゾンビ防衛力も高い」

「ゾンビ防衛力ってなんですか?」

「よく聞いてくれたねシズク。ゾンビ防衛力っていうのはその建物がゾンビに対してどれぐらい耐えられるか10段階で評価した指標だよ。安倍政権もこの指標を元にゾンビ対策を考えているんだ」

「トンスキホーテはいくつなんですか?」

「8はあるよ。建物が堅固で入り口は少ないからね」


 僕はこの映画の主人公に負けないぐらいのゾンビ妄想家だ。


「ゾンビ災害になったらトンスキホーテにご主人様と逃げればいいんですね」

「うん。シズクがいなくなったら大変だ。僕が居なくなった時にゾンビ災害になったらトンスキホーテで落ち合おう」

「はい!」


 これでひとまず僕がバイトしている時にゾンビ災害が起きてもシズクと離ればなれになる心配はない。

 震災対策は今度時間がある時に話し合えばいいや。

 映画は主人公と女子高生とキスシーンになっていた。

 ギャグよりのゾンビだからかお色気シーンも多いんだろうか。

 気まずい。しかし、シズクは真剣に見ていた。

 結局ゾンビ災害についてはなんの解決もなく、ぶん投げで映画は終わった。

 これもゾンビ映画のお約束といえよう。


「ふ~終わった~お風呂入ろうかな~」

「シズクも入ります」


 映画を見る前にお湯を張ってあったお風呂にシズクと入る。


「いや~お風呂はいいね~」


 別に温泉ってわけでもないのだがどうしてホテルや旅館のお風呂は気持ちいいんだろうか。


「ゾンビも面白かったですね~」

「うーん。お約束だったけど僕としてはゾンビ災害がどうなったかもやってほしかったな」

「主人公と女子高生が幸せになれたんだからよかったじゃないですか」


 トンスキホーテのなかで幸せになれてもどれだけ保つのか。

 シズクにとってはそういうことはあまり関係ないのかもしれない。

 女の子のような感性だ。

 しかし僕は納得できない。


「やっぱりこうゾンビの世界が最終的にどうなるかが気になるよね。人類が滅びるのかゾンビがそのうち活動停止してしまうのか。僕が脚本家なら最後まで書くのになあ」

「シズクだったら二人はゾンビがいないところで平和に暮らしましたって終わりにするかなあ。子供もできるんです」


 こ、子供。

 そういえば、白スライムはどうやって増えるのだろうか。


「シ、シズク」

「なんですか? ご主人様」

「い、いやなんでもない」

「ん?」


 怖くて聞けなかった。

 いつものようにシズクと体を洗ってお風呂から出る。


「寝巻は~おお~ガウンタイプか!」


 ゴージャスな感じだ。

 つい冷蔵庫のビールを開けてしまった。

 ビールを飲みながらシズクを膝に抱いて立川の高層階の夜景を見る。


「アレの一つ一つが人の生活している灯なんですね。ご主人様」

「言われてみれば、そういうことになるね」


 確かにシズクのいう通り、この光の一つ一つが人間の営みなのだ。

 シズクは人を信じられなくなった白スライムの中で唯一人を信じようとした個体なので人間の生活に思うところが強いのかもしれない。


「綺麗ですね~」

「まあ僕はもうちょっと低いとこからなら結構見慣れているけどね」

「もう! どうしてそんなことを言うんですか?」

「あはは。ごめんごめん」


 シズクが僕の腕の中でプルプルと震える。


「でもシズクは……ご主人様が、シズクのご主人様で本当に良かったです」


 シズクが僕を主人にしてよかったと言ってくれる。

 でもそれは僕も同じだ。ここのところ掃除洗濯した記憶がない。

 料理は趣味なのでたまにしているけど、それもシズクが作ってくれることが多い。


「僕もずいぶん助かってるよ」

「シズクは世界一幸せな白スライムです!」

「お、大げさだよ。シズクは」

「大げさじゃないです」


 シズクが僕を見てプルプル震える。

 僕は照れ隠しにまた冷蔵庫からビールを取って来てしまった。

 一口飲んだけどもうそれほど体が水分を欲していなかった。


「そうだ。シズクもちょっと飲んでみる」

「いいんですか!?」

「多分、いいんじゃないかなあ」


 シズクにビールを吸収……もとい飲ませてみた。


「けほけほ」

「あららダメだったかな」

「う~変な気分です」

「気持ち悪いの?」

「大丈夫、大丈夫れす~もっとください~」

「えええ」


 シズクは普段見ないような感じでぐでーんと広がっている。

 やめたほうが良いんじゃないだろうか。


「ご主人様~もっと~もっとください~」

「う、うーん。じゃあちょっとだけだよ」

「わーい。ご主人様だーいすき」


 残りのほとんどを僕が飲んで少しだけシズクに飲ませた。


「うふふふ。ご主人様~」


 膝にのせて飲ませたのが動きが何か変だ。

 ガウンのなかなかに入ってこようとする。


「ちょっちょっと?」

「いいじゃないですか~ちょっとぐらい~」


 僕がまたを手で押さえてるとシズクがくるっと寝ているリアのほうを見てる(ように見える)。


「ご主人様がダメならリア様のほうにいっちゃう!」


 シズクが僕の膝を降りてリアの胸の膨らみの中に入っていった。


「んっんっっ」

「あ~リア様の胸は最高です~」


 シズクに酒を飲ませると性格がオープンになるのかもしれない。

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