二度目のピンチ
「さっき、エロ本を見て思いついたんだ。」
「やっぱり変態ね…」
「変態じゃないから… とにかく、さっきのやつにリザードウーマンのスライム逆噴射!っていうページがあったんだよ。」
リザードマンの性癖がわけわからな過ぎて、自分でも言っていて意味不明だ。
「あなた、変態の中でも特に特殊なタイプなのね…」
さらに誤解を招いてしまって俺の地位はさらに低くなる。
「まあとにかく聞いてくれ。 俺は今、突き出せば風が巻き起こる槍を持ってるんだ。」
「それで、この部屋の窓から飛び降りて、地面に落ちる直前に風を地面に逆噴射すれば助かるんじゃないかっていうのが俺の考えだ。」
無傷で着陸するのは無理そうだが、タルをぶっ壊せるほどの風の力で逆噴射すれば死にはしないだろう。ロープも何もない状況でこれは中々の名案だと思う。
「確かにそれくらいしか脱出する方法はなさそうね。」
彼女も賛成してくれたところで、実行に移すことにする。
「じゃあ、俺の背中にちゃんと捕まっておいてくれよ…」
俺はしっかりと両手で槍を持つために袋を彼女に持たせ、背中に彼女を乗せた。
「よし、いくぞ!」
窓をウインドスピアでぶっ壊し、外へ飛び降りた。
ここは八階。高所恐怖症の人だったら足が震える程度の高さだ。そんな中パラシュートも命綱なしに飛び降りるのはめちゃくちゃ怖い。
「きゃあああああああ!!」
後ろで悲鳴が聞こえる。俺を掴む強さが更に強くなった。今、俺たちの命はこの槍の力にすべてがかかっている。
「よし、、、、」
あと少しで地面につきそうな高さ。そろそろ風の力を放つ時だ。
「うおおおおおおおぉぉぉ!!」
勢いよく地面の方向に槍を突き出した。その途端、強い風が地面に向かって巻き起こり、一気に俺たちが落ちるスピードが減速する。
そして、ドスンと地面に落ちた。
落ちると同時に槍を地面に突き刺し、俺たちは後ろ向きに倒れこんだ。
「痛え………」
ウインドスピアのおかげで、痛かったが骨折はしてないようだ。とりあえず脱出できたのか…
そう、余韻に浸っていると後頭部の方から声がする。
「私の方が痛かったわよ!」
俺の背中にひっついていた彼女が俺の下敷きになっていたようだ。ラブコメだったら俺が女の子の下敷きになる展開だっただろうが、やはりRPG世界ではそんな風にはいかない。
「あ、ごめんごめん!」
すぐに彼女の上から立ち上がり謝罪した。
「まあ二人ともそんなダメージもなく助かったしいいわよ…」
「それより、ここからどうするの? 前には海しかないんだけど…」
彼女の言う通り、前には上空の黒い雲が反射して黒く濁っているような海が広がるばかり。
ここの魔王は用心深いのか、孤島に城を建てたようだ。それにしても、どうして魔王の城の上空っていつも黒い雲があるのだろうか。魔王の固有スキルなのだろうか。
魔王城から脱出できたとはいえ、またしても大ピンチが訪れるとはベリーハードすぎだろこのゲーム。
本日三回目の脱出シンキングタイムに入った俺たちにまたしても大ピンチに重なる危機が訪れる。
「お前ら、どこから入ってきた?」
左の方から低い声で問われる。恐る恐る左の方を見ると、そこには。
屈強なリザードマンがこちらにゆっくりと近づいてきていた。