脱出方法
「普通、魔王の城っていったらレア装備の宝庫よね? 本当になかったの?」
彼女は俺のことを信じていないのか、くびをかしげる。そんなに俺が信用できなさそうな人間だと思われてるのかと思うと少し傷つく。まあ、彼女の思っている通りなのだが。
「う、うん! ぼ、防具なんか一つも見つけてないわぁ~。」
「本当にそうなのね… 確かにここであなたが嘘をついたところで何もメリットはないし…」
「そ、そうだよ~。」
ホッとしたところで俺が肯定すると、なにやら彼女は思いついたようで怯えながら俺に問う。
「ま、まさかだけど私のことを犯すだとか考えてないでしょうね…?」
「いやいやいやいや! そんなこと考えてないから安心して!」
変な話になるが今の状況からして俺がこの子をいたずらすることも可能である。俺は魔王城で手に入れた武器があるし、目の前には武器も何も持ち合わせていないそこそこ可愛い下着姿の女の子。同人誌だったら既にあんなことやこんなこともしてるかもしれない。だが俺はエロ漫画の主人公ではなく、ただのゲーマーだ。こんな夢シチュエーションに遭遇したところで服を渡さないくらいしかできないゲーマーだ。
ひとまず安心してもらったところでこれからのことを二人で考えることにする。
「俺はとりあえずここから出ようと思ってるんだ。経験値0の状態で魔王は倒せるわけないしな。」
RPGでレベル1でラスボスを倒すなんて縛りプレイでは攻略サイトをガン見して対策をとってようやく倒しているものだ。今の状況のような魔王がどんなやつかもわからない状態で挑むのは自殺行為である。
俺をこんなとこに召喚したやつはここが「RPG世界」だとか言ってたが、いったいどこまでRPG要素がここに反映されているか分からない。RPGの設定がすべて反映されているなら、死んでも教会で復活というお決まりがある。しかし現在の情報量ではそれがどうかは判明していないのでどうすることもできない。とりあえず死んでみるなんてことは出来ないし…
「まあ、そうなるわね。じゃあ下の階にいってみましょ。」
「いや、下の階はダメだ! あっちは危険すぎる。」
恐らく彼女はこの世界にきてからずっとここにいたのだろう。 俺は下の階でのことを説明することにした。
「それは大変だったわね… そういうことなら下の階からはでれなそうね。」
「ああ、そうなんだ。それでここから出るためにロープとか探してるんだけど…」
ここで彼女の口から予想外の提案が発せられる。
「ロープもなにも、普通に飛び降りればいいじゃない。」
「いや死ぬでしょ!」
俺は必死に否定したが、彼女はすこし自慢げな顔をしている。なにか考えだあるようだ。
「だって、この世界はRPG世界なのよ? 私の知ってるRPGにおいてHPが減るのは戦闘時とダメージを受けるトラップだけ。移動魔法でいくら天井に頭をぶつけようが、高いところから飛び降りても地面が底なしの穴じゃない限りダメージは受けないわ。」
「確かにそうだけど!? もしそのルールがこの世界に適用されてなかったらどうするんだよ! 死ぬよ!?」
「きっと大丈夫よ。」
いったい彼女の自信はどこからでてくるのだろう。いくら彼女の自論を語られてもすぐに賛成するわけにはいかない。試しに俺も一つ提案をする。
「じゃあ俺が試しに、き、君のことをつねってみれば分かるんじゃないか? それで痛くなかったらRPGルールは適用されてるってことだろ?」
女の子の肌にちゃんと触れるなんて小学生の遠足以来なので少し緊張気味になってしまった。この提案に彼女も賛成してくれ、右腕を俺の方に差し出した。綺麗な白い肌で、つねるにはもったない。
「あんまり痛くしないでね……?」
今の恰好ではかなり意味深な言葉だが、そこにはつっこまないことにしておく。
「じゃあ、いくぞ。」
「痛ッ」
つねって痛がるようでは飛び降り脱出なんて無理そうだ。
またしても多忙のため投稿できませんでした。
一段落つきましたので、これからは投稿できる回数が増えるかと思います。