宝物庫での出会い
4階から上は紙警備。もちろん敵の影など全く見えないのでスムーズに探索が進んだ。
最初に入った部屋では宝箱をあけたものの、布の袋がはいっているだけ。勇者が開けた時にがっかりさせるためのアイテムだったのだろうが、袋を持っていない俺にとっては利益のあるアイテムだった。
しかしその後、8階まで戻ってきたが宝箱は見当たらない。さっき宝箱を見つけられたのは奇跡だったのだろうか。いや、警備が厳しい3階までの階層にたくさん激レアアイテムが眠っている可能性もあるかもしれない。だがそんな危険を犯してまでアイテムが欲しいわけではなく、そもそもの理由はこの城から脱出するアイテムを探しているだけなので3階に戻るのはやはり控えることにした。
自分なりに考察をしていたが、その考えは数秒後に全く別のものになる。
「あれ? まさかこの部屋?」
8階で入った部屋には自分の肩ぐらいの高さの樽がぎっしり。これはまさか「樽の先に宝箱があるパターン」じゃないだろうか。
「うおらぁ!!」
俺は力いっぱい樽を殴り、破壊することに成功した。ゲームやってるとき、いつもAボタンを押すだけで樽を破壊する主人公の筋力どうなってんだよ…と思っていたが、筋トレなんて全くもってしてない俺が壊せちゃうなんてこの樽って強度低いんだな。
そして、いくつも樽を壊した先には予想通りたくさんの宝箱が並んでいた。しかし、所々すでに開けられたままになっている宝箱も見受けられる。
まあそんなことは気にせずに俺は宝箱を開けていく。
「おお、これめっちゃ強そう…」
俺が手にしたのは赤い刀身で刃渡り40cmくらい、俺でも軽々片手で持ててしまう軽い剣だった。これ絶対攻撃力80くらい上がるやつだよ!と俺のテンションも上がる。
「ちょっと、試してみちゃおうかな…」
魔王の城で手に入れた剣。間違いなくこの世界でトップクラスの剣だろう。
とりあえず俺は右手に持ったこの剣を近くの樽に振り下ろす。すると、
「すげぇ! 樽が燃えた!」
粉砕された樽の木の破片が少し燃えている。どうやらこの剣には斬ったものを燃やすという特殊能力があるようだ。もっとやりたいところだけど、この部屋で斬りすぎると火事になりかねないので自重することにした。
次に開けた宝箱の中には槍が入っていた。しかしこの槍、あんまり強そうじゃない。棒の先に刃物がついているだけという、いたって平凡な槍だった。でも、さっきみたいに特殊能力がついている可能性もあるのでもう一度樽で試してみることにする。俺は槍を樽の方に突き出した。すると、樽は槍の先端が当たる前に破壊された。槍を突き出した方向に風が巻き起こり、その風の力で樽が破壊されたのだ。
「やばい、これめっちゃ楽しい!」
槍を突き出しただけで樽が破壊されるという、今までに体験したことがないこの感覚。とても病みつきになる。この槍は……ウインドスピアとでも名付けようか。本当の名前が他にあるかもしれないけど。
「ウインドスピア! ウインドスピア!」
俺は魔法を使うような感じで樽を次々と破壊していく。魔王城にきて何やってんだ俺。
だが、5、6個くらい破壊していったところで、どこかの樽の中からいきなり女性の叫び声が聞こえた。
「やめて! なんでもするから殺さないで!」
「ウインドス…… え?」
俺はウインドスピアをやめて、声が聞こえた樽の方へ近寄った。そして、その樽を恐る恐る開ける。
すると、その中にはどうしてか、下着姿の美少女が―――
「こんな展開、RPGにあったっけ?」
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