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おしっこ

 いくら時間が経っても島は見えてこない。ルティが数日待たないと島にはつかないと言っていたし、当然といえば当然の話なのだが。

 食料品が全くないこの状況で数日も生き延びることが出来るのだろうか。どこかで飲まず食わずで生きていられるのは3日程度と聞いたことがある。あれ、もしかしてこの船の上でゲームオーバーなんじゃ…

 いや、待てよ。飲まず食わずだと3日。勿論なにかを飲んでいれば生存時間は伸びる。周りの海水はとてもじゃないが飲めないが、もっと近くに飲みやすいものがあるではないか。


「なあ、ミオ」


 長く保たれていた沈黙を破った俺の一言によってミオは少々驚いたようで、俊敏な動きで顔をこちらの方へ向けた。次の俺の言葉を待っている。


「もしも、もしも3日以内に島に着かなかったらの話なんだが…」


「まさか童貞のまま死ぬのは嫌だから最期に私にリザードウーマンコスプレをさせて卒業したい、なんていうお願いじゃないわよね?」


「違うから! 一旦俺の特殊性癖のことは忘れてくれ! というかまず、俺を童貞って決めつけるなよ! 童貞だけど…」


「忘れてくれってことはやっぱり認めるのね…」


 もうめんどくさいから弁解はやめることにする。


「真面目な問題なんだ。もし3日間飲まず食わずだとゲームオーバーだ。けど、この船には食料がない。飲み物もない。周りの海水を飲もうと思っても、塩辛くて飲めたもんじゃないだろう。」


「確かにそうね。」


「でもここにはもう一種類、水が存在する。」


 ミオは何言ってんだこいつとでも言いたげな顔をしているが、俺は人差し指で自分の股間の方を指し


「おしっこだ。」


 と自慢げな顔をして、ためにためていたひと言を発表した。

 自分でも尿を飲んだことはないし、飲める味なのかどうかは知らないが海水よりはだいぶマシだろう。島に着くまでくらいの短い期間なら、尿を飲むことくらい我慢できるんじゃないか。


「尿を飲めば確かに生き延びられるかもしれないわ。でも、どうして私に報告したの?」


「いやだって、なるべくなら自分のおしっこよりはミオのおしっこ飲んだほうがいいじゃないすか。」


 真顔で言ってやった。

 当然の反応だがミオには嫌な顔されて、


「だとしたら私はアキラの尿を飲むってこと? そんなの絶対嫌だわ。」


「自分のおしっこ飲まれることはいいのかよ!」


「別にそこまで嫌じゃないわ。気持ち悪いかどうかって聞かれたら気持ち悪いって答えるけど。それより、その槍の力で船を早く進ませることとかできないの?」


「あ」


 そういえば、この槍は突き出した方向に風が巻き起こる魔法の槍。風を思い通りに操れれば島にもすぐについてしまいそうだ。

 さっきまでのおしっこ談義はなんだったのだろうか。その後アキラは何度も何度も槍を突き出して風を起こし、1日もかからないうちにどこかの島に漂着することに成功した。

久しぶりにログインしたら、全く更新しなかった月にブックマーク数が増えていたことに驚きました。

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