承前
とりあえず、リハビリ的な感じで。
今までの様な毎日投稿は無いと思われます。
骨子は多分テンプレ的ダンジョンモノです、多分。
クヒヒヒヒ、なんだね、君ィ達は?
この高邁な我が輩になぁんの用だねぇ?
ふむふむ、何々ィ?
なんと、我が輩の畏友について聞きたいというのかねぇ?
これは何と何と。
正に正に驚きというものだよ、君ィ。
君ィ達の様な低俗でこの世の真理から遠く離れた処に在る人間種が我が畏友について知りたがるなどとは夢にも思わないことだよ。
ああ、勘違いしないで欲しいのだがね、我が輩は高邁たる森妖精だがそれに固執して何もせぬ同族などよりも、自分が一体全体何を遣っているのかも分からずに必死に足掻き続けている人間の方が余程大したものだと信じているのだよ、君ィ?
そうでもなければ、この我が輩があの女帝陛下に真に忠誠を誓う訳も無し、我が畏友を認めることもなかったのだからねぇ。
んん?
いや、違うかも知れぬなあ。
我が畏友がいたからこそ、我が輩は人間を高く評価し始めたのかも知れんなあ。
何せ我が畏友ときたら、我ら森妖精よりも尚深い処に居たのだからなあ。
何の深い処、だと?
決まっている、この世の真理、即ち森羅万象の真実に対してだよ。
我が輩が知る限り、あの男程それに対して強く望みを持っていたものを知らぬからな。
それを知るためにあの“迷宮”に挑んだ数少ない探求者の一人よ。
当然、我が輩もその内の一人ではあったが、我が畏友とは違って最後の最後まで探索出来なかったのだがねぇ。
ん?
なんだ、今のものはそれも知らぬのかえ?
我が畏友はあの“迷宮”を踏破した最初の一人ぞ?
故に我が輩は残念なのだ。
我が畏友と共にあの“迷宮”に挑みながら、あと僅かに一歩先に行けなかった己の体質になあ。
知っての通り、あの“迷宮”は層を降れば降る程“瘴気”が強くなる。
身体が“瘴気”に適応出来ぬ限り、待ち受けるは死在るのみ。
我が輩も、許容量以上の“瘴気”を身に受け、生死の境を彷徨った故にその恐ろしさは篤と身に染みておるがの。
だが、瘴気は人の身を冒すだけではなく、己の力をその身に宿した“瘴気”の分だけ強くもする。
その強さがあって、初めてあの“迷宮”を潜って征けるのだよ。
まあ、第一階層にも適応出来ぬものが潜れば、良くて廃人、悪くて魂を食い破られるが、強さを求める者ならば悩む事無く潜るがな。
我が輩とて、真理を求め続ける者。その為に強さはあって得はすれど損はない。それもあってあの“迷宮”に挑む気になったのだよ。
そこで我が畏友に会えたのは正に僥倖であった。
何せ、我が輩、これでも長く生きておるのだがな、我が輩以外にこの世の真理を本気で求めている者など誰一人たりともあの時まで見た事が無かったのだ。同胞ですら我が輩を狂人扱いにする始末。高邁たる森妖精がそうなのだ、真理などに興味すら持たない他の種族が求める訳もない。あの日あの時まで我が輩はそう信じ切っていたのだよ。
そう、あの日あの時、我が輩は真に友を得たのだ!
だからこそ、残念なのだ。
我が畏友の行き着いた先がなあ。
ああ、それを聞きに来たのか、君ィ達は?
成程、成程。そうなるか、そうなるか。
あの女帝陛下も既に亡く、往事を知る者は我が輩一人となっていたのか。
ククク、我が輩も未練なものよ。
未だにこの地から離れられないのだからなあ。
まあ、良い。まあ、良い。
我が畏友の名を知っていた褒美よ、君ィ達に真実に至る道を示してやるのも一興。
さて、何から知りたい?
いや、あの話をしてからが良いか?
ヒヒヒ、いや、これはこれは。
なんと、この我が輩が昔話をするのにこれほど胸が躍るとは思わなんだよ。
年を取ったのか、それともあの時代が特別なのか、これはちと判断に悩むの。
……判断に悩む、か。
ふむ、それで思い出した。君ィ達に話して聞かすのにいい話がある。
どうだね、興味あるかね?
ん?
何、聞かなければ分からない、だと?
クヒヒヒヒヒ、それはそれは。正にその通り。
ならば聞かせて進ぜよう、君ィ達の様に“迷宮”に挑もうとするヒヨッコが先ずは聞いて損しない第一層で起きた珍しき話よ。