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 ここは神田明神参道半ばにあるそば処“きやり”。『小説家になろう』の新年会に参加するためにここを訪れた弥欷助は、開始30分前に律子に拉致され、無理やり酒を飲まされた。途中から合流した閉伊にも弄られ開始時にはグロッキー状態だった。間もなく、酔いつぶれて寝てしまったのだが、うっすらと意識が戻ってきたときに香穂里とまゆの会話が耳に入ってきた。

「そう言えば、すっかり忘れてた。で、この人誰だっけ?」

「カオリン、失礼よ。聞こえてないから良かったものの。ウルトラ福助さんですよ」

「そうだっけ?」

 そこへトイレに立った律子がやって来た。律子はおもむろに弥欷助の前にしゃがみこむと、弥欷助の鼻ちょうちんが最大に膨れ上がったのを見計らって楊枝を突き刺した。割れた鼻ちょうちんは弥欷助の顔面に張り付いた。

「ハハハ、マンガ見たい」

「りったん!」

 さすがの弥欷助もこれには参った。思わず飛び起き顔を拭った。

「律子さん…。じゃなくて、神村さん勘弁して下さいよ」

「あっ!福助、寝たふりしてた」

「すいませんけど、ボクはウルトラマンでも福助でもなくて、呂彪弥欷助です。ナガトラミキスケ」

「そう、私、おトイレ」

 そう言って、律子はトイレへ向かった。


 奥の席では齋藤と美子が話し込んでいる。年齢的にも気が合うのだろうか。

「へえ、保護司をやっておられんですね。偉いわ」

「いえ、いえ、大したことはないですよ。先日、法務大臣表彰をいただきまして、あと7年もすれば叙勲です」

「すごいじゃないですか!」

「そんな大したもんじゃないです。私にしてみれば年金の方がありがたいですよ」

「そうなんですか?じゃあ、いい株、お教えしましょうか?」

「ほう!それは…」

 齋藤は美子の魔法にかかってしまったようだ。その脇では口を塞がれた閉伊がフガフガもがいている。


 大橋は水無月の隣に移り、午雲とともに小説談議に花を咲かせている。

「ところで、水無月さんの歴史もののエッセイは面白いですね」

「そうですか?私なんかまだまだ精進が足りませんから」

「そう言うことなら、みんな同じですよ。ねえ、大橋さん」

「いやあ、午雲さんにそう言われたら俺なんか鼻クソですよ」


 他の女性陣はかおりのエッセイ『私の美容日記』についての話題で盛り上がっている。

「今、スマホで見てるんだけど、かおりさんの『私の美容日記』って面白いのよ」

 糸香がそう話を切り出したところから膨らんでいった。

「ゴッドハンドAちゃん、気になる」

「そうそう!Aちゃん気になるよね。ゴッドハンドって本当?」

 香穂里とまゆもすぐにスマホをチェックして読みあさる。

「そう言えば、桂さんは京都やったよね。今度、神戸まで来いへん?」

「そっか!かおりさんは神戸ですもんね。行けなくはないよね」

「ええ、来てくれたら紹介したるよ」

「そしたら、感想聞かせてくれる?私は福島だからちょっと行けないもの」

「ところで、かおりさんの旦那さんって、けっこうウケルんだけど」

「えっ?夜兎さん、どういうこと?」

「ほら、この活動報告。旦那が愛人に買ってあげた車に乗ってるとか」

「うわあ!スゴイね。かおりさんの旦那さんって日下部さんじゃないの?」

「まさか!そんなことあらへんって」

「いやいや、りったんがさっき言ったことだってあり得るよ。浮気者の旦那への腹いせで日下部さんと不倫してるとかね」

「カオリン、想像力発展しすぎ」

「まあ、まゆゆは日下部さん好きだもんね」

「そういうのじゃないわよ。どちらかと言うと、お父さんみたいな感じだし」

「そりゃあ、年齢的な話だろう?こういうネットで顔も知らない相手とやり取りしているうちに恋人同士みたいな錯覚を起こす事ってよくあるだろう」

「まあ、まあ、まあ」

 話を聞いていた弥欷助が割って入る。

「福助さんには関係ない!」

「ふ、福助って…」


 トイレから戻って来た律子は黙って良介の隣に座った。

「なんか疲れちゃった」

 そう呟いて、良介によりかかった。

「そろそろ、お開きの時間…」

 良介が話しかけたけれど、律子は既に寝息を立てていた。

「またこのパターンか」

「まあ、日下部さん、神村さんには甘いのね」

「なるほど、そういうことですか。私もあやかりたいものですな」

「ところで、お二人は今夜、泊まりですか?」

「ええ。明日の飛行機で帰るつもりよ」

「同じく、一泊して、明日の新幹線で」

「そろそろ、お開きの時間ですから齋藤さん、中締めをお願いしてもいいですか?ボクがこんな状態ですから」

「恐れ多いですが、そう言うこととなら。ところで、日下部さん。せっかくなので、この後、お時間あればもう少しだけお付き合い願えますか?」

「あら、私も」

「わかりました」


 齋藤の中締めで新年会は無事終了した。店の外で日帰りのメンバーを見送ると、良介は眠ってしまった律子をおぶったまま、齋藤、美子、それに、同じく一泊する予定だというまゆと糸香、かおり、大橋とともに二次会へ向かった。 

 座敷には縛られたままの閉伊だけが取り残されていた。


りっきさん、毎回こんな扱いでごめんなさい!律子さん、スチャラカでごめんなさい!番外編でフォローします。みきすけさん、初参加で懲りずにまた来てくださいね。

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